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改訂・D・W・グリフィス長編内側からの切り返し表
題名。封切日 | 正面(人物が映画内でキャメラを正面から見据えたショットの数 | 左から→1ショットの秒数 1時間のショット数 総ショット数 上映時間 あらすじ 内側からの切り返しによる分断 視覚的聴覚的細部 |
内側からの切り返し・外側からの切り返し・クローズアップの数。 ●内側からの切り返しについてのコメント ■外側からの切り返しについてのコメント。「視点転換」とは古典的デクパージュとは無関係な切り返し。 ★クローズアップについてのコメント。 ▲平行モンタージュの有無 |
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1916 | イントレランスINTOLERANCE | 15ショット。 はっきりは9箇所 ●中世篇で鳶色の娘の紹介の大きなクローズアップではキャメラを見ていない ●古代篇で山の娘、コンスタン・タルマッジの紹介のアイリスに囲まれた大きなクローズアップでキャメラを正面から見据えている。アイリスに囲まれているが照明が修正されているかどうかは不明。 ●現代篇で町の浄化運動が成功した後、くしゃおじさんのようなあごのない男のクローズアップがキャメラを正面から見据えている。 ●現代篇で赤ん坊を奪われそうになったメェ・マーシュが赤ん坊を抱きながらバスト・ショットで1ショット。 ●古代篇でバビロンの宮殿のスクリーンのように切り取られた大窓の横から出て来た裏切り者の神官が「明日はキュロス王が報復するだろう」とキャメラを正面から見据えながら話しているフルショット ●古代篇で「明日はお前の都を作ろう」と王に言われた寵姫がキャメラを正面から見据えているフルショット。 ●古代篇の終盤、敵が城内に入ってきた後、バビロンの戦士(エルモ・リンカーン)がキャメラを正面から見据えながらショット内モンタージュでクローズアップになるまで突進してくる。 ●自害した王と寵姫の亡骸を前にキュロス王がウエスト・ショットでキャメラを正面から見据えている。 ●現代篇の処刑台の上でロバート・ハーロンが絞首刑される直前、背景を暗くした2ショットでキャメラを正面から見据えている |
40箇所。 ①現代篇 実業家の妹と握手している客とソファーに座っている女とのあいだは、5ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。 ②ダンスをしている者たちとそれを見ている実業界の妹とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。さほどずれてはいない。 ③つがいの鳥とそれを見ている可愛い娘(メェ・マーシュ)とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。 ④古代篇 市場で祈るパリサイ人とそれを見ている者たちとのあいだは、9ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。 ⑤中世篇 鳶色の瞳の娘(マージェリー・ウィルソン)とそれを見ている傭兵たちとのあいだは、同一画面に挟まれた3ショット内側から切り返されている。■娘の大きなクローズアップだけがずれている。その前のバスト・ショットで照明が修正されている。 ⑥古代篇 山の娘(コンスタンス・タルマッジ)と彼女の後方から自分の横に座れと合図する吟遊詩人(エルマー・クリフトン)とのあいだは、6ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。 ⑦現代篇 ストライキが始まった時のデモ隊と銃撃隊、そして小高い丘の上でデモ隊を見守る女たち、住宅の前でデモを見守る人々、失業者たちとのあいだは、10ショット内側から切り返されそのまま終わっている。■場所的にどの位置にあるのか不明確な空間同士が内側から切り返されている(空間的不明確性)。距離的に明らかに同一画面に収まることのできない事業主とメェ・マーシュのショットは含めていない。 ⑧古代篇 山の娘が結婚の競りにかけられている時にその前を通ってゆく王子とのあいだは、『正常な同一画面』に挟まれた2ショット内側から切り返されている。■娘のアイリスに囲まれたクローズアップは別々に撮られているが斜めからの切り返しでさほどのずれは生じていない。 アイリスに囲まれているクローズアップは照明が修正されているか不明。 ⑨現代篇 路地を歩いている街の女とそれを二階の窓から見ている可愛い娘とのあいだは、6ショット内側から切り返されそのまま終わっている。『窓空間』。主観ショットだが正面から撮られている。 ⑩現代篇 女神像とそれに手を合わせている可愛い娘とその父親とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。 ⑪現代篇 父親の亡骸の前で立ち尽くしている可愛い娘とそれを見て泣いている青年(ロバート・ハーロン)とのあいだは、同一画面に挟まれた1ショット内側から切り返されている。■ハーロンのクローズアップは照明が修正(強く当てられて)されかつずれている。。 ⑫ユダヤ篇 鳩たちとそれを見ているイエスとのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。 ⑬ユダヤ篇 結婚式の酒宴を開いているイエスたちとそれを窓の外から見ている2人組とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。 ⑭中世篇 隣同士で椅子に座っている2人(鳶色の瞳と恋人ユージン・パレット)と恋人にかじりかけのリンゴを投げつける少女とのあいだは、5ショット内側から切り返されそのまま終わっている。 ⑮現代篇 連行される商売女たちとそれを見ている浄化運動の女たち・街の者たちのとのあいだは、5ショット内側から切り返されそのまま終わっている。■見ている者たちのクローズアップは強い照明にアイリスがかけられている。 ⑯現代篇 路地でやくざ者たちに絡まれているチンピラとそれほを二階の窓からほうきを持って見ている可愛い娘とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。正面からの主観ショット・『窓空間』。 ⑰現代篇 赤ん坊とそれを見ている可愛い娘とのあいだは、3ショット内側から切り返されそのまま終わっている。■修正ではないがメェ・マーシュの左の髪に強い光が当てられている。 ⑱現代篇 その後、赤ん坊とそれを見ている浄化運動の女たちとのあいだは、合わせて4ショット内側から切り返されそのまま終わっている。 ⑲現代篇 その直後、赤ん坊とそれを見ている可愛い娘とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。 ⑳現代篇 そのしばらく後、浄化運動の女たちと赤ん坊を抱いて叫んでいる可愛い娘とのあいだは、『正常な同一画面』に挟まれた4ショット内側から切り返されている。メェ・マーシュだけ正面から撮られている(1ショットキャメラを正面から見据えている)。正面からの切り返しが初めて撮られる。メェ・マーシュの照明が修正されている→アイリスで囲みながら周囲の照明を薄暗くしてメェ・マーシュにほのかなバックライトを浴びせている。 21現代篇 その後、見知らぬ家の赤ん坊とそれを窓の外から見ている可愛い娘とのあいだは、4ショット内側から切り返されそのまま終わっている。『窓空間』。主観ショット。 22中世篇 暴動を起こした新教徒たちとそれを窓から見ている王族とのあいだは、他のショットを挟んで3ショット内側から切り返されそのまま終わっている。『窓空間』。■主観ショットだが正面から撮られている。 23古代篇 出陣前、女神像とそれを見ている山の娘とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。 24古代篇 戦争開始後、弓を撃っている山の娘と戦車の上の王子とは4ショット内側から切り返されそのまま終わっている。■ここでもずれているのはコンスタンス・タルマッジだけで、特に正面から撮られた最後の4ショット目は大きくずれている。 25現代篇 可愛い娘を口説いているならず者とそれを路地から見ている孤独な娘(ミリアム・クーパー)とのあいだは、4ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。■メェ・マーシュに寄ったショットもずれている。 26古代篇 山羊と戯れている山の娘とそれを見ている詩人とのあいだは、同一画面に挟まれた4ショット内側から切り返されている。 27古代篇 その後、山の娘と彼女に秘密を話している詩人とのあいだは、同一画面に挟まれた3ショット内側から切り返されている。■特に山の娘の詩人を見上げる視線がずれている。アイリスで囲まれているが照明の修正はされていない。 28古代篇 門から出て行く馬車とそれを見ている山の娘とのあいだは、12ショットほど内側から切り返されている。主に主観ショット。 29現代篇 貧しい娘ミリアム・クーパーが情夫のウォルター・ロングを窓の外から銃撃するシーンは、クーパーが二階から飛び降りるまでの10ショット内側から切り返されそのまま終わっている。■早くて見えないくらい。 30現代篇 裁判の証人席に座った夫ロバート・ハーロンと傍聴人席の妻メェ・マーシュとのあいだは、最初のショットで夫と法廷の全景が同一画面に収められているもののロングショットで誰一人「その人」と特定できず、その後、回想を除き9ショット内側から切り返されそのまま終わっている。■妻と夫の関係に絞って計測している。メェ・マーシュのクローズアップはアイリスがかかり強い照明が当てられているが照明が修正されているかは不明。 31現代篇 その後の判決のシーンでも2人のあいだは同じように最初に法廷全景の同一画面が撮られた後、6ショット内側から切り返されそのまま終わっている。 32現代篇 絞首台のテストで処刑台の者たちとカミソリをもってロープを斬る刑務官たちとのあいだは、合わせて4ショット内側から切り返されそのまま終わっている。 33現代篇 アパートの入り口で神に祈る可愛い娘とそれを二階の廊下から見ている貧しい娘とのあいだは、6ショット内側から切り返されそのまま終わっている。■アイリスに囲まれたメェ・マーシュのクローズアップは前から強い光が当てられて照明が修正されている。 34中世篇 打ち鳴らされる鐘とそれほカーテンの隙間から見ている王の母親(ジョセフィン・クロムウェル)とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。 35現代篇 知事の邸宅で訴える2人(可愛い娘と親切な刑事)とそれを見ている貧しい娘とのあいだは、6ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。■最初の主観ショット以外はさほどずれてはいない(横から撮られるとずれが生じづらくなる)。 36現代篇 その後、猛スピードでやってくる車とそれを見ている3人(娘二人と刑事)とのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。 37中世篇 傭兵と彼に襲われ悲鳴を上げる鳶色の瞳とのあいだは、同一画面に挟まれた1ショット内側から切り返されている。■鳶色の娘の周囲全体がアイリスで暗くされ顔に当てられる光も薄暗くされて(照明が)修正されている。この周囲をアイリスで黒く囲まれた大きなクローズアップの「1ショット」がグリフィス的『分断』である。 38現代篇 汽車の中で座っている知事と真犯人を訴えた可愛い娘とのあいだは、同一画面に挟まれた1ショット内側から切り返されている。■可愛い娘の大きなクローズアップは薄暗い周囲にメェ・マーシュの顏だけに強い光が当てられて照明が修正されている。 39古代篇 女神像と彼女に祈る寵姫とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。 40現代篇 駆けつけた知事と処刑台の上から彼を見おろしている刑務所長(ウィリアム・ブラウン)、刑務官たちとのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。 41現代篇 40と平行して処刑台の者たちとカミソリをもってロープを斬ろうとしている刑務官たちとのあいだは、合わせて4ショット内側から切り返されそのまま終わっている。 ■評 正面からの内側からの切り返しは『分断』20くらいしかなく、ここでは周囲を薄暗くしてバックライトが当てられている。照明の修正による「ずれ」は主に周囲を暗くするアイリスの力によって代えられそこに強い光が当てられることを基本としている。 ■カッティング・イン・アクション 重複は少ない。寄る・引くが基本で多用されている。立つ→寄るは68分頃、『バビロンが落ちるぞ』と字幕が入った後、目の前に負傷した兵士たちが転がり込んできて驚いた寵姫が立ち上がる時。これにしても重複は少ない。87分過ぎ机の上で踊っている寵姫からキャメラが引かれる時、大きく重複されている。 ■照明の修正 現代篇で終盤、囚人服姿で独房から出て来るロバート・ハーロンと平行モンタージュで撮られたミリアム・クーパーのバスト・ショットに強烈なバックライトが浴びせられている。 ■アイリス 終始かかっている。アイリス・イン、アイリス・アウトあり。 ■フェイドアウト フェイドインあり ■ディゾルヴ あり ■軸 動く ①古代篇の市場のラクダをトラッキングで。 ②トラック・アップ→終盤、現代篇で親切な警官と廊下で別れた後、メェ・マーシュの顔に大きなクローズアップになるまでぼやけたピントのままキャメラが寄っていく。 ③現代篇で車で汽車を追いかける時、汽車を横移動、斜めからの後退移動などで。その逆に汽車から車を横移動で捉えている。 ■キャメラの横を通り過ぎる。 ■逆手 古代篇の王と寵姫が自害する時、ナイフを逆手に握っている。 ■目を開けて死ぬ 古代篇の王、寵姫、山の娘。 ■起源 なし ■回想 あり現代篇で。窓の外から銃撃する直前、ミリアム・クーパーがハーロンとの出会いを短く回想する。裁判で証人席のハーロンがボスに銃を返したシーンを回想する。 ■罪の意識 現代篇のミリアム・クーパーにあり。 ■「常習性」 強い。 |
294-3-51-大活用 ■外側からの切り返し ①古代篇で、城壁に立ちはだかる門番たちから、馬車で祭祀の一行を追いかけようとしている山の娘へと外側から切り返されている。視点転換。 ②現代篇の銃撃のあと、夫ロバート・ハーロンが廊下で警官に逮捕された直後、部屋で警官と向き合っている可愛い娘メェ・マーシュのショット、これが『古典的デクパージュ的人物配置』に近い配置。しかしそこからさらに切り返されることはない。 ③現代篇で知事の元へ行く前、可愛い娘が親切な刑事の背広を掴んで訴えている時の2人の配置が『古典的デクパージュ的人物配置』に近い配置。しかし切り返されることはない。 ④中世篇で鳶色の瞳を抱きかかえたまま撃たれた恋人(ユージン・パレット)の外側から切り返されている。 ⑤古代篇でたった一人で城門を守っている戦士の外側から切り返されている。 ▲平行モンタージュ 同時代内で多用されている。 |
1920 | 東への道 WAY DOWN EAST |
18ショット。ちょろちょろ含めて。 ①『分断』③のあと、自室に帰ったリリアン・ギッシュのフルショットで一瞬。 ②民家の結婚所で落ちた指輪にうなされた遠くのバーセルメスが起き上がった時一瞬のウエスト・ショット。 ③実家で椅子に座って金持ちの息子を待っているギッシュのバックライトに照らされたウエスト・ショットで2ショット(その2ショットに挟まれたクローズアッはキャメラを見ていないが薄暗い中で強いバックライトに照らされている・アイリスなし)。 ④『分断』⑪ ローウェル・シャーマンに妊娠を告げるときのバックライトのクローズアップでちらちらと、しかしはっきりと見ている。 ⑤ローウェル・シャーマンと農家の家で再会した後、みなが中で食事のお祈りをしている時の外のリリアン・ギッシュのバスト・ショット・バックライトで背景はアメリカの夜で真っ暗。 ⑥裁縫教室でギッシュの素性を知ったおしゃべマーサが雪の中速足で歩いてくる姿を後退移動で捉えたフルショットで。80分26秒 ⑦編み物をしているリリアン・ギッシュが泣きくずれてゆくバスト・ショットがバックライトの真っ暗の背景で。 ⑧ギッシュが金持ちの息子を告発し農家の主人に「私の過去だけでなく、シャーマンの過去も暴きなさい!」と詰め寄る時、背景真っ暗で2ショット。 字幕に挟まれている場合は1ショットとして計測している。 |
53箇所。 数年前のニューイングランドの片田舎、アンナ・ムーア(リリアン・ギッシュ)は母親(デイヴィッド・ランドー)から親戚のトレモント家からお金を借りてくるよう言われてブリッジパーティ真っ盛りのトレモンド家へ行ったところ舞踏会で人気者になり地主で金持ちのドラ息子レ(ローウェル・シャーマン)と結婚しハネムーンの後、里帰りしたアンナはやって来た夫に結婚していないことを告げられ夫は出て行ってしまう。しばらくのち、母親に死なれたアンナは自らを恥じベルデン村の宿屋で密かに産んだ赤ん坊は病気になり、洗礼を受けずに死ぬ子は神に召されないと言われたアンナはみずから洗礼したあと赤ん坊は死にアンナは村から追い出される。あてもなく歩き続けたアンナは金持ちの息子の地所の続きにあるバートレット村の富農で厳格な清教徒スクワイア氏(バー・マキントッシュ)の家で働かせてもらうことになり、その息子で詩人の影響を受けた夢多き青年デヴィッド(リチャード・バーセルメス)はアンナに思いを寄せ始める。主人の姪で青年と幼少時に結婚の約束をしていた幼馴染のケイト(メアリー・ヘイ)が久方ぶりに農家へやって来ると、農家に下宿している教授(クレイトン・ヘイル)は彼女に思いを寄せ始め、農家に出入りする女で通称おしゃべりマーサは彼女に思いを寄せる顎髭(あごひげ)のセス・ホルコーム(ポーター・ストロング)を軽くあしらっている。そこへ偶然地主の金持ちの息子がやって来てアンナは平穏を乱され、デヴィッドからの愛も受け容れることができずに日々を過ごし、夏が終わり冬になったある日、町の裁縫教室にやって来たベルデン村の宿屋の女将がおしゃべりマーサにアンナの過去を暴露しそれを聞いた農家の主人はベルソン村まで確かめに行って真相を確かめ帰って来ると皆が揃っているパーティの席でアンナを出て行けと追放する。その席でアンナは金持ちの息子と農家の主人を糾弾し、絶望して吹雪の吹き荒れる夜の雪原を彷徨い歩き、流氷に流されたところを探しに来たデヴィッドに助けられる。飯場で意識を取り戻したアンナは農家の主人の謝罪を受け容れるが改心した金持ちの息子との結婚を拒絶する。ある日、教授とケイト、顎髭のセス・ホルコームとおしゃべりマーサの二組のカップルと合同結婚式を挙げたアンナはデヴィッドに肩を抱かれながらずっと自分を守ってくれていたデヴィッドの母(ケート・ブルース)とキスをする。 以下、バックライト等照明について書かれている『分断』はすべて照明が修正されているので改めて書いていない。 ①親戚の屋敷のシャンデリアとそれを見上げるリリアン・ギッシュとのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。 ②舞踏会でドレスに着飾って階段を降りて来るリリアン・ギッシュと金持ちのドラ息子(ローウェル・シャーマン)と従妹の姉妹とのあいだは、6ショット目で『正常な同一画面』に収められるまで内側から切り返されている。横から切り返されているローウェル・シャーマンはあまりずれていない。 ③■その後、エレインのイメージ映像が撮られた後、金持ちの息子とリリアン・ギッシュとのあいだは、『正常な同一画面』に挟まれた1ショット内側から切り返されている。■バックライトを強烈に浴びたリリアン・ギッシュのクローズアップ(アイリスなし)だけが途方もなくずれている。その直後のクローズアップにはアイリスがかけられている。■窮屈さについてはギッシュはやや左を向いているので微妙だがキャメラの接近からしてローウェル・シャーマンをどけて撮られている(『分断』⑥についても)。 ④金持ちの息子の屋敷のステレオとそれを見ているギッシュとのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。主観ショット。 ⑤その直後、ステレオに見とれているギッシュとそれを見ている金持ちの息子とのあいだは、『正常な同一画面』に挟まれた2ショット内側から切り返されている。■切り返しによる『分断』というよりもリリアン・ギッシュのクローズアップだけがずれている。クローズアップはアイリスかは不明だが周囲が暗くされている。 ⑥■その直後、結婚を申し込む金持ちの息子とギッシュとのあいだは、2ショット内側から切り返されている。■金持ちの息子はただの横からの切り返しに過ぎず、右から強烈な光を浴びたリリアン・ギッシュのクローズアップだけがずれている(アイリスなし)。その直後の正面から撮られたギッシュの4つのクローズアップも完全にずれている。このように内側からの切り返しに計測されない1ショットだけのクローズアップのずれが多く撮られている。 ⑦やって来る馬車とそれを窓から見ているいかがわしい結婚式屋の男とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。『窓空間』。 ⑧■結婚式で指輪を落として心配するギッシュと金持ちの息子とのあいだは、『正常な同一画面』に挟まれた2ショット内側から切り返されている。■どちらも正面からのクローズアップで切り返されている。リリアン・ギッシュにはうっすらとアイリスのようなものがかかっているようにも見える。 ⑨新婚のスイートルームの窓辺のテーブルでギッシュの脚とそれを見ている金持ちの息子とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。■正面からの主観ショットで原初的。『原初的主観ショット』とは見た目の角度ではなく正面から撮られた主観ショット。サイレント映画初期の時代は主観ショットはこうして撮られている。詳しくは後の論文の検討に譲る。 ⑩踊っているダンサーと彼女の脚を見ている金持ちの息子とのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。主観ショット。 ⑪馬車でやって来た金持ちの息子とそれを実家の窓から見ているギッシュとのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。■正面からの原初的主観ショット。 ⑫■金持ちの息子と彼に妊娠を告げるギッシュとのあいだは、3ショット目にギッシュの外側から切り返されて同一画面に収められるまで内側から切り返されている。■外側からの切り返しによって『古典的デクパージュ的人物配置』となる。ギッシュは切り返しの原ショットでキャメラを正面から見据えている。ギッシュはうっすらとアイリスがかけられバックライトで照らされている正面からのクローズアップで切り返されている。 ⑬■その直後、指輪を見せながら問い詰めるギッシュと金持ちの息子とのあいだは、『正常な同一画面』に挟まれた2ショット内側から切り返されている。■ギッシュはうっすらとアイリスがかけられバックライトで照らされている正面からのクローズアップで切り返されている。ギッシュは切り返しの原ショットで3ショットのクローズアップが撮られている半面金持ちの息子は何の変哲もないショットが撮られていることからしても、グリフィスにとってはギッシュのクローズアップこそが重要であり切り返しによる『分断』は二の次であることが見えて来る。 ⑭■さらにその直後、2人は『正常な同一画面』に挟まれた2ショット内側から切り返されている。ギッシュはうっすらとアイリスがかけられバックライトで照らされている正面からのクローズアップで切り返されている。 ⑮その後出産し、椅子に座って赤ん坊を抱いているギッシュと赤ん坊は重病だという医者とのあいだは、『正常な同一画面』に挟まれた2ショット内側から切り返されている。■ギッシュはクローズアップに近いバスト・ショットで周囲を暗くしてバックライトで照らされている。ここでもまた内側からの切り返しによる『分断』が「ずれ」ているのではなくギッシュのショットだけが「ずれ」ている。 ⑯その直後、宿屋の女将とギッシュのあいだは、『正常な同一画面』に挟まれた3ショット内側から切り返されている。ここでもギッシュだけがずれている。それは最後のギッシュのショットと、そこから引かれたフルショットとの大きな差異に現れている。 ⑰さらに宿屋の女将とギッシュとのあいだは、『正常な同一画面』に挟まれた3ショット内側から切り返されている。 ⑱死んだ赤ん坊を抱いているギッシュと医者とのあいだは、『正常な同一画面』に挟まれた2ショット内側から切り返されている。■『分断』⑭からこの⑰までリリアン・ギッシュのショットは中抜きで撮られているかもしれない。 ⑲サンダーソンの下男と納屋の上から卵を落とす鶏とのあいだは、4ショット内側から切り返されそのまま終わっている。■上下の切り返し。落下する卵は『分断』されている。 ⑳その直後、下男と納屋の外の主人とのあいだは、3ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。 21■おしゃべりマーサの頭に留まっている蝶とそれを網で捕獲しようとする教授とのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。主観ショット。 22■リチャード・バーセルメスとギッシュが初めて出会って見つめ合った時ふたりのあいだは、『正常な同一画面』に挟まれた3つのショット内側から切り返されている。■バックライトもなく周囲を軽くアイリスで縁取っただけのクローズアップの切り返しだが、ギッシュを見て驚いたようなバーセルメスの表情と、何かをぼそぼそしゃべっているようだが字幕も入らないギッシュの声を聴いたバーセルメスが「え?」と怪訝そうな顔をしたあと思わず笑いだしてしまうだけの3つのショットは、その聞き取れない会話とそこから反射した表情が2人だけの時間を形作っている。 23農家に雇われた直後、ギッシュと彼女に麦藁のつばを触って挨拶するバーセルメスとのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。■バーセルメスにバックライトが当てられている(アイリスなし)。 24その直後、ギッシュたちとおしゃべりマーサとのあいだは、1ショット内側から切り返されそのまま終わっている。 25ケイトの靴ひもを結んでいる教授とそれをポーチから見ている顎鬚の男とのあいだは、6ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。■『原初的主観ショット』。ジョージ・アルバート・スミス「As Seen Through a Telescope(望遠鏡で見る) (1900)へのオマージュかも知れない。 26塀の上の鳩とそれを見ているギッシュとのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。主観ショット。ギッシュの肩に留まったクローズアップでアメリカの夜のバックライトが当てられバックでは木の葉が風に揺れている。 27農家で働き始めたギッシュが地主の金持ちの息子と再会するシーンでの2人のあいだは、『正常な同一画面』に挟まれた2ショット内側から切り返され、さらにそこから『正常な同一画面』に収められるまで2ショット内側から切り返されている。■グリフィスは『正常な同一画面』を挟むことにさしたる「マイナス」を感じていない。内側からの切り返し→『正常な同一画面』という流れでドライヤーなどの『分断』は終了するのだがグリフィスはそこからさらに内側からの切り返し→『正常な同一画面』を撮ることを厭わない。グリフィスの『分断』とは1ショットによるリリアン・ギッシュの「ずれ」でありそれを内側からの切り返しの連続によって撮るという傾向は基本的に持ち合わせていない。エスタブリッシング・ショットの不在によって場所的浮遊感を生じさせようとする傾向もない。■リリアン・ギッシュのクローズアップはアメリカの夜のバックライトを浴びている。 28井戸の前で話している2人(ギッシュとバーセルメス)と彼らを呼びに来た農家の妻(ケート・ブルース)とのあいだは、同一画面に挟まれた2ショット内側から切り返されている。■さりげない切り返しだが「脇役」のケート・ブルースが「そのひと」として撮られている。 29牧草地を歩いて来るギッシュと作業の手を休めてそれを見ているバーセルメスとのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。 30人影の写る水面とそれを見ている2人(ギッシュしバーセルメス)とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。 31愛を告白するバーセルメスとそれを聞いているギッシュとのあいだは、『正常な同一画面』に挟まれた1ショット内側から切り返されそのまま終わっている。■ギッシュのクローズアップは周囲を暗くした背景にほどいた髪にバックライトを浴びている。ギッシュのクローズアップだけがずれている。その直後の1ショットだけのギッシュのクローズアップもずれている。 32雪道を通ってゆくギッシュとそれを裁縫教室の窓から見ている2人おしゃべりマーサと宿屋の女将)とのあいだは、(7ショット内側から切り返されそのまま終わっている。■途中、窓とギッシュが同一画面に収められているがひとまず別々に計測する。 33手をつないでいる2人(バーセルメスとメアリー・ヘイ)とそれを廊下から見ているギッシュとのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。■『原初的主観ショット』。 34暖炉の前で縫物をしているギッシュとやって来た金持ちの息子とのあいだは、『正常な同一画面』に挟まれた2ショット内側から切り返されている。■ギッシュのクローズアップは周囲を暗くしてバックライトを浴びせられている。 35その直後、さらに『正常な同一画面』に収められるまで1ショット内側から切り返されている。■『分断』27同様、『正常な同一画面』のあと再び内側からの切り返しが始まっている。 36ギッシュとローウェル・シャーマンが2人で話している部屋にへバーセルメスが入って来たとき3人のあいだは、『正常な同一画面』に挟まれた3ショット内側から切り返されている。■周囲が暗くされ頭上からライトを浴びたギッシュの横からのクローズアップだけずれている。 37椅子に座って編み物をしているギッシュにバーセルメスがプロポーズする時2人のあいだは、『正常な同一画面』に挟まれた7ショット内側から切り返されている。■針に糸を通そうとして通せないギッシュの周囲をうっすらと暗くした(アイリスではないように見える)上から浴びたライトで浮き立つクローズアップの一瞬の悦びに溢れながらすぐ現実に引き戻されてひきつるその顔はその後キャメラが引かれて『正常な同一画面』に撮られたギッシュが何かに促されるように立ち上がろうとした瞬間にフェイドアウトすることで一瞬で霧散している。ギッシュはどうして立ち上がろうとしたのだろう、、、フェイドアウトとは何かが行われつつある瞬間になされたとき、詩的としか言いようのない時間を露呈させることがある。ちなみにバーセルメスは 38その後、バーセルメスと彼の求婚を拒絶するギッシュとのあいだは、『正常な同一画面』に挟まれた1ショット内側から切り返されている。■ギッシュが後ずさりするにつれバックライトを浴びているギッシュのクローズアップがさらに強烈な光の中へ入ってゆく。 39馬車で出て行く主人とそれを見ている2人(ギッシュと農家の妻)とのあいだは、1ショット内側から切り返されそのまま終わっている。 40ベルデン村の宿屋の看板とそれを馬車から見ている主人とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。■主観ショット。 41隣村から帰って来た主人と食卓のテーブルで彼に挨拶する金持ちの息子とのあいだは、『正常な同一画面』に挟まれた1ショット内側から切り返されている。■ローウェル・シャーマンがちょっとずれている。その直後のローウェル・シャーマンのショットもずれている。 42家から出ていけと怒鳴る主人とギッシュとのあいだは、『正常な同一画面』に挟まれた1ショット内側から切り返されている。■ギッシュのクローズアップは周囲を暗くしてバックライトを浴びている。 43さらにその直後、『正常な同一画面』に収められるまで゛1ショット内側から切り返されている。■ギッシュのクローズアップは周囲を暗くしてバックライトを浴びている。ここでも『分断』27、35同様に『正常な同一画面』に収められた後、また内側からの切り返しが始まっている。 44その直後、帰って来たバーセルメスとギッシュとのあいだは、他のショットを除いて『正常な同一画面』に挟まれた3ショット内側から切り返されている。■横から撮られたギッシュは周囲を暗くしたバックライトを浴びている。 45その直後、父親と彼に殴りかかろうとしているバーセルメスとそれを見ている者たちとのあいだは、『正常な同一画面』に挟まれた4ショット内側から切り返されている。■みんなずれている。 46そのまた直後、椅子に座っているバーセルメスとギッシュとのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。■正面から撮られたクローズアップのギッシュは周囲を暗くしたバックライトを浴びている。 47そのまた直後、ギッシュと金持ちの息子とのあいだは、『正常な同一画面』に挟まれた1ショット内側から切り返されている。■正面から撮られたクローズアップのギッシュは周囲を暗くしたバックライトを浴びている。さらにローウェル・シャーマンのバスト・ショットはさらに周囲が暗くされ下から光が当てられている。 48その直後、周囲を暗くしたバックライトを浴びてキャメラを正面から見据えているギッシュと金持ちの息子とのあいだは、『正常な同一画面』に収めらるまで1ショット内側から切り返されている。 49その直後、周囲を暗くしたバックライトを浴びキャメラを正面から見据えて金持ちの息子を指差して告発するギッシュとそれを見ている者たちとのあいだは、2ショット目に金持ちの息子とギッシュの「指だけ」が同一画面に収められるまで(『奇妙な同一画面』)内側から切り返されている。■ギッシュとそれを見ている者たちとの関係なのでここでの内側からの切り返しは1ショットとなる。みんなずれている。■『分断』42以降、『正常な同一画面』に収めらたあとも再び『分断』が開始されることを繰り返している。 50飯場でかち合ったバーセルメスと金持ちの息子とのあいだは、『正常な同一画面』に挟まれた2ショット内側から切り返されている。■どちらもキャメラま右側を見ていてイマジナリーラインがずれている。 51流氷の激流とそれを見ているギッシュとのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。 52流氷の上にギッシュの落としたコートとそれを見ているバーセルメスとのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。 53バーセルメスと流氷に流されているリリアン・ギッシュとのあいだは、バーセルメスがギッシュを確認したクローズアップからずっと内側からの切り返しと流氷のショットが続き20ショット目に2人は同一画面に収まるがロングショットで「この二人」とは確認できず(『奇妙な同一画面』)、23ショット目でバーセルメスがギッシュを抱き上げるまで内側から切り返されている。■この23ショット目も『奇妙な同一画面』であり、これが『スター映画』なら間違いなく『正常な同一画面』が撮られるはず。それをロングショットのまま画面を続けるその性向は、純粋な映画上の要請が物語上の要請に勝ることのできた時代の産物かも知れない。 ■カッティング・イン・アクション 重複もあるが基本は重複なし。典型的(立つ→引く・座る→寄る、など)で重複しているのは以下。これら以外は動作が重複していない。 ①リリアン・ギッシュが親戚の屋敷でベストを出そうとしゃがむ時、動作を重複させキャメラを大きく引いている。 ②いかがわしい結婚所の女が指輪を拾って立ち上がる時、立つ→引く。 ③泉のほとりでバーセルメスに愛を告白された後、ギッシュが立ち上がる時、立つ→引く ④おしゃべりマーサからギッシュの秘密を聞かされ激怒した牧場の主人が椅子から立ち上がる時、「立ち顔」が撮られている。 ⑤牧場の主人がギッシュの噂を確かめに隣村の宿屋に着いた後、馬車から降りる時に立つ→引く。 ⑥バーセルメスがギッシュから子供を産んだと告白された後、がっくりとうなだれて椅子に座る時、座る→寄る。 ⑦バーセルメスが流氷からギッシュを抱き上げて岸へ上がる瞬間、重複は少ないが立つ→寄る。 ■ディゾルヴ あり。 ■フェイドアウト、フェイドイン 多用。 ■アイリス 常時ではないがかかっている。くっきりとしたアイリスよりも周囲をうっすらと暗くしたアイリスのようなものが多い。 ■コントラスト ハイ・コントラスト。 ■アメリカの夜 農場でギッシュが井戸に水を汲みに行くシーンなど。 ■軸 ①裁縫教室でギッシュの素性を知ったおしゃべマーサが雪の中速足で歩いてくる姿を後退移動で。②ダンスパーティに向かう村人の馬車を後退移動で。 ■起源 なし ■回想 なし ■罪の意識 なし。リリアン・ギッシュ以外はバーセルメスほかあり。 ■「常習性」 ギッシュのみ強い。あとは「改心」している。 |
218-5-165-大活用。 ■外側からの切り返し ①結婚式の後の新婚スイートルームで窓辺のテーブルに就いたギッシュと金持ちの息子とが『古典的デクパージュ的人物配置』となり、そこからギッシュへ外側でなく内側から切り返され、次に金持ちの息子へ外側から切り返されている。外側からの切り返しが続いて撮られていない。 ②新婚旅行の後、里帰りしたギッシュと母親とが最初に『古典的デクパージュ的人物配置』に近い配置となり、そこから母親に内側から切り返されたあと、字幕を挟んで1ショット母親の外側から切り返されている。 ③『分断』⑪参照。外側から切り返されて『古典的デクパージュ的人物配置』になったところで終わる。その後もう一度ギッシュの後方からの『古典的デクパージュ的人物配置』となるがさらに切り返されることはない。 ④金持ちの息子がギッシュに謝罪したあと彼の外側から切り返されている。視点転換。 ⑤合同結婚式で最後に牧師の外側から切り返される。視点転換。 |