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D・W・グリフィス(D.W. Griffith)1910年~1911年 視覚的細部表  2025年9月藤村隆史

      左から1ショットの秒数 1時間のショット数 総ショット数 上映時間

視覚的細部
内側からの切り返し→外側からの切り返し→クローズアップ→平行モンタージュ
1910 THE ROCKEY ROAD
いばらの道 1.8

撮影場所 ニュージャージー州エッジウォーター
ちらちら
ブランチ・スウィート(Blanche Sweet) シカゴの芸能一家に生まれ舞台で生計を立てる。1909年、バイオグラフ社と契約。脇役で出演を重ね1910年「THE ROCKEY ROAD(いばらの道)」(1910.1.8)の娘役で大きな役につき以降グリフィス映画の代表女優となる。1986年9月6日死去。90歳。
19  186  31  10 1シーン1ショット。酒乱の夫(フランク・パウエル)は妻(ステファニー・ロングフェロー)と幼い娘(エディス・ホールドマン)を捨てて家出し錯乱状態に陥った妻は娘を抱いて通りを歩き続け、通りがかりの男からショールをもらい、農場の藁の上に倒れ込んで娘と生き別れになり、娘は農家の夫婦(ジョージ・ニコルズ等)に引き取られ、妻もまた記憶喪失の状態で民家の夫婦に助けられる。数年が経ち、裕福になった夫は自分の娘だと知らずに若い女性(ブランチ・スウィート)と婚約するがその結婚式の当日、記憶を喪失している妻は偶然行きついた農家に飾ってある幼い娘の写真を見て娘だと気づきさらにメイド(ケート・ブルース)からあの時のショールを見せられて記憶を取り戻し、結婚式場へと駆け付けるがショックで息を引き取る。
■字幕あり
●切り返し 
①農家へ車でやって来た父親(ジョージ・ニコルズ)たちと家の中の娘(ブランチ・スウィート)とのあいだは、4ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。原初的音声空間の切り返し。室内と室外。
■一本道 娘を抱いて母親が一本道を歩いて来る。
■分離 一本道で母親が農民からもらったショールと写真を見て娘だとわかる。
■退出の映画史 ラストシーンで妻が亡くなる時、式の参列者たちがみな後ろを向く。これは退出の映画史なのか、それとも見るに堪えず目を逸らしたのか微妙。
■照明 家の横の小路を並んで歩くブランチ・スウィートとフランク・パウエルの体に樹の幹の影が投射されている。
■生き別れ 生き別れの者たちがラストシーンで再会する。
■パン あり
■人間運動
■キャメラの横を通り過ぎる 3ショット。
3(原3)-0-0-なし
一本道
小道具
生き別れ
1910 HER YERRIBLE ORDEAL
彼女の恐ろしい体験
1.15

撮影場所 ニュージャージー州フォートリー
ちらちら
フローレンス・バーカー(Florence Barker)。ロサンゼルス出身。グリフィス「ひどい瞬間」(1908.12.19)で映画デビュー。「新婚夫婦」(1910.3.5)、「誠実」(1910.3.26)、「誓いと男」(1910.9.24)、「彼の娘」(1911.2.25)などで大きな役を得る。その後ヨーロッパへ渡りパテ・フレール社で映画を撮り、12年アメリカに戻りパトリック・パワーズ社へ移籍。1913年2月15日肺炎で死去。21歳。
16  230  46  12  浮浪者にオフィスの金庫室に閉じ込められた秘書(フローレンス・バーカー)を助けるために彼女の同僚の恋人(オーウェン・ムーア)は旅行に出かけた金庫の暗証番号を知っている上司(父親ジョージ・ニコルズ)を追いかけて駅へと向かう。秘書にちょっかいを出す顧客チャールズ・クレイグ
■字幕あり
●切り返し 
①金庫室に押し込まれた秘書から鍵を閉める強盗へとカットが変わる。両者の空間は未だ通じていることから原初的二間続きの切り返しとなる。
②金庫室の中と外でその物音に気付いたオーウェン・ムーアとのあいだで5ショット内側から切り返されている。原初的音声空間の切り返し
③さらにその後、金庫室とその外とのあいだで2ショット内側から切り返されている。原初的音声空間の切り返し
▲平行モンタージュ 金庫に秘書が閉じ込められたあと平行モンタージュが何度も撮られ救出のクロス・カッティングへと移行してゆく。
■気づかないことにする 男がすぐそばでバケツを振りかざして殴ろうとしてるのに顧客は秘書を口説いていて気づかない。
■投げ渡す ジョージ・ニコルズが帽子を息子に
■THE ENDと入る→「GIBSON GODDES(ギブソンの女神)」(1909.11.6)
■煙 汽車
■コメディ 口論しているオーウェン・ムーアとフローレンス・バーカーが次第に口を接近させそのままキスをする。
■巻き込まれ運動 閉じ込められた秘書の巻き込まれ運動として撮られている。
■キャメラの横を通り過ぎる 6ショット。
8(原8)-0-0-あり。
平行モンタージュがクロス・カッティングとなる。
切り返し(原初的)
帽子を投げ渡す
巻き込まれ運動
THE END
1910 THE NEWLYWEDS
新婚夫婦 3.5

撮影場所 ロサンゼルス
ちらちら 38  95  27  17 フィアンセ(メアリー・ピックフォード)に突然指輪を突き返されてふられ結婚反対クラブに入会した男(アーサー・ジョンソン)は道すがら米屋から出てきた少女(グラディス・イーガン)とぶつかり怒った少女に米をぶっかけられる。そのまま汽車に乗った男は同じようにフィアンセ(チャールズ・ウェスト)に一方的にふられた女(フローレンス・バーカー)と偶然に隣同士の席に座るが、ひっかけられたまま残っていた米粒を運悪く偶然居合わせた結婚反対クラブのメンバーの男たちに結婚式のお祝いにかけられた米粒だと勘違いされで冷やかされそのまま2人は電報の知らせで駅に待ち構えた者たちによって娘の家まで連行されるが勘違いだと分かって彼らは退散する。翌日、娘の家に出かけそこに山積みにされた豪華な結婚祝いの品々を見た男は娘と共謀してこれを『返さないこと』に決める。
■字幕あり
▲平行モンタージュ フィアンセにふられる男と女のあいだが4回、汽車の中と駅のホームでプラカードを持って待ち受けている者たちとのあいだが4回、平行モンタージュされている。
■汽車 あまりグリフィスが撮ることのない汽車の客車の中でのシーンが撮られている。
■椅子 庭に出した椅子に座っている。
■マクガフィン
①ぶつかること 男が少女とぶつかり米粒をひっかけられるという露骨なマクガフィンによってそれによって惹き起こされた運動が物語から引き離されて露呈する。
■豪華な結婚の贈り物を『返さないこと』という運動が『結婚すること』になる。
■気づかないことにする 後ろで騒いでいるフローレンス・バーカーにフィアンセ(チャールズ・ウェスト)は気づかない。
■巻き込まれ運動 2人ともみずからの意志に依らずにフィアンセに振られ、少女とぶつかって米を投げられ、偶然汽車で相席になり新婚夫婦と勘違いされる、という不可抗力による巻き込まれ運動。
■キャメラの横を通り過ぎる 9ショット。
0-0-1(電報)-あり
平行モンタージュ
汽車
ぶつかることとマクガフィン
返さないこと=結婚すること
巻き込まれ運動
1910 FAITHFUL
誠実 3.26

撮影場所 ロサンゼルス
ちらちら 18  202  37  11 裕福な青年(アーサー・ジョンソン)は自分の車で労働者の男(マック・セネット)を轢いてしまい、お詫びに彼に服を新調し誠意を尽くすと感激した男は青年との友情を感じて一瞬も彼から離れようとはしない。それを迷惑な付きまといに感じた青年だが、その後男は火事に巻き込まれた青年の恋人(フローレンス・バーカー)を危険を顧みず救出する。
■字幕あり
●切り返し 
①庭のベンチに腰掛けた2人(青年とその恋人)とやって来たマック・セネットとのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。意識としては時系列かも知れないがこれは切り返しである。ロケーション。
▲報われないクロス・カッティング 火事のあと、消防署→火事の現場→消防署から出発する馬車→現場→消防車→現場、と交互にスムーズにモンタージュされているがフローレンス・バーカーを救出したのはセネットで消防車は役に立っていない。このような救出のクロス・カッティングで救出班が功を奏さない、という出来事を『報われないクロス・カッティング」として検討する。グリフィスは「THE CALL TO ARMS(軍隊への招集)」(1910.7.30)「わがままペギー(WILFUL PEGGY)」(1910.10.23)、「死のマラソン(DEATH’S MARATHON)」(1913.6.7)などでも報われないクロス・カッティングを撮っている。
■スタント セネットが車に轢かれる時、彼は本当に吹き飛ばされている。1ショットで撮られているので吹き替えも特撮もスタントもない。轢かれる瞬間、横から扇風機で強風を当てたようにも見える。
■煙 セネットが轢かれる時の車の砂埃。火事。消防車の蒸気。
■パン あり。
■気づかないことにする 多用。男が後部座席に飛び乗ったのに気づかない。真後ろに立っているのに気づかない。
■カーテンが風に揺れている。アーサー・ジョンソンの家で。
■ロケーション 縦の構図で街を大きく見下ろした丘の上からのロングショット。おそらくカリフォルニアだろうか。これ以前にはこういうロケーションは撮られていなかった。
■フェイドアウト ラストシーンが。
■人間運動 セネットの誠実さは人間の運動。アーサー・ジョンソンは巻き込まれている。
■キャメラの横を通り過ぎる 14ショット。火事の時、助けを呼びに行く男たちが近景まで接近している。
1-0-0-あり
報われないクロス・カッティングの「起源」
切り返し
スタント
ロケーション カリフォルニアの街を。
カーテンが風に揺れている
気づかないことにするのオンパレード。
フェイドアウト ラストシーン
1910 AS IT IS LIFE
人生であるように 4.9

撮影場所 ロサンゼルス・リンカーンハイツ
ちらちら 17  215  43  12 1シーン1ショット。妻を亡くした夫(ジョージ・ニコルズ)は幼い娘(グラディス・イーガン)を抱えて貧困の中、働き始めた養鳩場で女性(マリオン・レナード)と知り合うが、妻と娘の2人を養えない彼は自分の幸せを犠牲にして幼い娘を育てる。数年後、成長して学校から帰って来た娘(メアリー・ピックフォード)は父親の白髪と荒れた手を見てずっと父親と一緒にいると誓う。だが娘は若い男(チャールズ・ウェスト)と恋仲になり父親の反対も聞かず結婚して家を出る。しかし生まれた赤ん坊が誰にも相手にされない娘は赤ん坊を連れて父親の元へ帰って行く。
■字幕あり
▲平行モンタージュ 崖下のベンチであいびきする2人と家の前のベンチに座っている父親とが無時間的に3回カットバックされる。
■エプロン 娘(グラディス・イーガン)が泣いてエプロンで涙をぬぐう。成長した娘(ビックフォード)も赤ん坊を相手にされずエプロンで涙をぬぐう。
■同じ場所は同じ構図で撮られている~思い出の場所
家の前、養鳩場、崖の下の小路のベンチは時を超えてすべて同じ構図で撮られている。中抜きによる機械的な同じ構図を超えて父親と娘、フィアンセとの思い出の場所がまさにそれとして現われている。→「FOOLS OF FATE(運命の犠牲者たち)」(1909.10.9)
■ロケーション 瑞々しいロケーション。鳩の養鶏所の舞い上がる白い鳥たち。
■半生記 父と娘の半生記が撮られている。
■母親の不在 『母が死んだ』という字幕から始まるので言及はあり。ここでもまた『母親代わり』の父親と娘との絆が撮られている。これまで撮られている母親の不在の作品にも増して父親が再婚を断念して娘を育てるという母親代わりの父親の人生の時間の流れが12分の短編を埋め尽くす多くの細部によって撮られている。
■帰郷の物語 ラストシーンでピックフォードが父親の元へ帰って来る。人が帰って来ることのエモーションは→「THE SLAVE(奴隷)」(1909.7.21)。
■人間運動 
■キャメラの横を通り過ぎる 8ショット。
0-0-0-あり
同じ場所は同じ構図で撮られている~思い出の場所
母親の不在
半生記
エプロン
帰郷
1910 不変の海
The Unchanging sea 5.7

撮影場所 ロサンゼルス・サンペドロ
ちらちら。ピックフォードは出のショットでキャメラを見ながらその横を通り過ぎている。
リンダ・アーヴィドソンが「LINES OF WHITE ON A SULLEN SEA(暗い海の白い線)」(1909.10.30)に続いて待ち続ける女を演じている。
18  198  43  13 小舟で猟に出た夫(アーサー・ジョンソン)を浜辺で待ち続ける妻(リンダ・アーヴィドソン)。遭難した夫は遠く離れた島へ漂着して記憶を失いそこに住みつく。妻には娘が生まれ、少女になり(グラディス・イーガン)、成長する(メアリー・ピックフォード)。しばらくして娘は青年(チャールズ・ウェスト)と出会い、結婚し、家を出る。残された妻はひとり海を見続けている。同じころ、夫は島に戻って来る。
■字幕あり
▲平行モンタージュ 遭難して島に流れついた夫と彼を待ち続ける妻とが8回ほど交互にモンタージュされている。男は少しずつ年を取り、妻には赤ん坊が産まれ、少女になり、成長し、結婚する。長い時間を平行して撮られたモンタージュは娘の成長に合わせて時系列に撮られているようでありながら、平行する夫のモンタージュとの具体的な時間の前後関係の不在によって妻の時間は分節化されることなく常に夫の時間と共有されている。ここにおいて平行モンタージュはひとつの完成に接近している
■同じ場所は同じ構図で撮られている。家の前、浜辺、漁師たちの集まる場所、時が経ってもすべて同じ構図で撮られている。時間が分節化を免れながら留まり続けている。
■エプロン
①エプロンをした女たちが浜辺で地平線の彼方の男たちをじっと見つめている。
 ★じっと見つめること →ジョン・フォード「アパッチ砦(FORT APACHE)」(1948)で男たちの出征をひたすら見送る女たち。
②エプロンを顔に当てて泣く 娘が結婚して家を出た時、母が。
■ショール 肩にショールを掛けている
■パンあり
■煙 たばこ
■風 ラストシーンでエプロンとショールが風に揺れている。
■ぶつかること 肩と肩とがぶつかり合うことが娘と青年との出会いになる。
■落とすこと ラストシーンで妻は帰って来た夫を見て握っていたエプロンが不意に放たれ風に揺れ始める。
■父親の不在 娘は父親の不在の中で母親によって育てられている。「AS IT IS LIFE(人生であるように)(1910 4.9)では泣かなかったピックフォードがここでは結婚して家を出る時に泣いている。
■帰郷の物語 
帰ってこない夫を『待ち続けること』という「LINES OF WHITE ON A SULLEN SEA(暗い海の白い線)」(1909.10.30)で撮られた過剰な細部が反復されている。人が帰って来る帰郷の物語は直前に「AS IT IS LIFE(人生であるように)」(1910 4.9)で撮られているが帰って来ることそれ自体がエモーショナルに撮られたのはこの作品が初めて。平行モンタージュ、風、同じ場所は同じ構図で撮られていること、、父親の不在、等多くの過剰な視覚的細部がひとつになってエモーションを惹き起こしている。
■人間運動
■キャメラの横を通り過ぎる 17ショット。
0-0-0-あり。
平行モンタージュの完成
同じ構図
エプロン
ぶつかること
父親の不在
待ち続けること
帰郷
1910 LOVE AMONG THE ROSES
バラに囲まれた愛.5.14

撮影場所 ロサンゼルス
ちらちら 14  264  44  10 ネバーランド王国をそれぞれ収めている領主の男(ヘンリー・B・ウォルソール)と領主の女(マリオン・レナード)は結婚の約束を交わしているが、男は女の城に雇われた貧しいレース職人(メアリー・ピックフォード)に、女は庭師(アーサー・ジョンソン)と恋仲になり、結婚する。
■字幕あり
●切り返し 
レース職人(ピックフォード)と領主の男(ウォルソール)との2度目の出会いの時、女領主の屋敷の階段の前まで歩いて行ったウォルソールが帽子を振るとピックフォードへと切り返され(①視線は見つめ合ってはいない)、さらにその後、もう一度ウォルソールへ切り返され(②)、次のカットでウォルソールはピックフォードと合流している(③。この③は切り返しではない。AとBが別々の空間にいるとしてまずBを撮り次にAの地点へ合流したABを撮ってもBがAの地点へ移動しただけで切り返しではない)。そこからさらに階段を降りてきた女領主へと切り返されている(④)。切り返しは①②④。その後、女領主が庭師の前にショールを故意に落としたあと、城の階段の前に帰ってきた女領主へカットされているがこれは女領主の移動であり切り返しではなく切り返しの原ショットとなる(この③のように同一空間にいるABのうちBが画面から出て行き次のショットで視線の通じている空間に移動したBが撮られたとしてもそれは初期映画にありがちな時系列の連なりであり「移動行為」であって切り返しではない)。そこからさらに庭師へと切り返されているのでここで初めて切り返しとなる(⑤)。さらにその後、Aピックフォード・ウォルソールの2人からB女領主の屋敷の前の2人(女領主と庭師)へとカットされているが、そのままAのウォルソールがBへと入って来るのでウォルソールを基準とすると切り返しではなく「移動」のようにも見えるがピックフォードは依然としてAに残っているのでひとまず切り返しとして検討する(⑥)。よって切り返しは①②④⑤⑥の5ショットとなる。すべて原初的。感覚としては時系列。
★注 領主たちの城と職人たちの仕事場の場所的関係がわかりにくいので切り返しではないかも知れず仮に切り返しだとしても原初的。以降、場所的不明確性によって切り返しかどうす判明しづらいものを『原初的切り返し』として検討する。
▲平行モンタージュ 領主たち、庭師とレース職人を加えた4人のあいだが幾度か交互にモンタージュされている。場所的関係が不明確。
■照明 アーチ形の門をくぐる時にウォルソールとマリオン・レナードの体に草の影が通過してゆく。木の影が体に投射される。
■風 木の葉が風に揺れている。
■落とすこと ウォルソールがピックフォードと抱き合う時、帽子を落とし、持っていた杖を放している(杖は倒れる)。
■人間運動
■キャメラの横を通り過ぎる 17ショット。
5(原5)-0-0-あり(原)。
切り返しと移動行為の差異
原初的切り返しとは
場所的不明確性
平行モンタージュ 
落とすこと
1910 THE TWO BROTHERS
2
人の兄弟 5.14

撮影場所 カリフォルニア州サンフアン・カピストラノ
ちらちら
デル・ヘンダーソン(Dell Henderson)。グリフィス「Monday Morning in a Coney Island Police Court(月曜日の朝、コニーアイランド警察裁判所で」)(1908.9.4)で映画デビュー。脚本家としても「THE MODERN PRODIGAL(現代の放蕩息子)」(1910.9.3)、「LOVE IN THE HILLS(丘の愛)」(1911.10.28)などを手がける。マック・セネットのキーストン社へ移籍し監督としても1911年から28年まで200本近くの映画を撮る。1950年まで俳優として活躍。1956年12月2日死去。79歳。
22  164  31  11.20秒 スペイン貴族の乱暴者の弟(アーサー・ジョンソン)は礼拝を侮辱し敬虔な信者である兄(デル・ヘンダーソン)を殴り母親(ケート・ブルース)に勘当されて無法者(ヘンリー・B・ウォルソール)の仲間となる。修道院に舞い戻った弟は兄に背中から撃たれて倒れ、通りがかった兄の恋人(マリオン・レナード)とその連れの女(メアリー・ピックフォード)にそうとは知らずに介抱される。兄は女と結婚し馬車で新婚旅行に向かう途中に弟の一味に襲われて馬車から引きずり降ろされ殺されそうなったところでウェディングドレスを身にまとったあの女がウェディングドレスをまとい弟の前に現れる。弟は荒くれ者たちを制して2人を自由にする。
■字幕あり
■評 一見粗野な10分余りの西部劇に極めて多くの細部が施されている。見落としそうになるところを補って見てみたい。
①弟~ヒーロー伝説
どうやら彼には「出来の良い兄」に対するコンプレックスがあるらしく彼の粗野な行動もその裏返しから来ることであり、だからこそ勘当されたあとも修道院に舞い戻りその郷愁を露わにしている。兄を殴り勘当されることで弟は「すねに傷を持つ者」となりジョン・フォード「駅馬車(STAGECOACH)」(1939)におけるジョン・ウェインのようなヒーローたちの原型となる。→「FIGHTING BLOOD(戦う血)」(1911.7.1)
②兄 
一見善人に描かれているものの、彼は修道院の裏庭で弟を背中から撃っている。これは後の西部劇における悪の象徴であり、この時点で映画における善悪がひっくり返る。また兄は弟との対決シーンでも不意打ちでナイフで刺そうとしている。
③聖女伝説と改心
兄に撃たれた弟が兄の恋人とその妹(?)に介抱される。彼女たちは茂みに横たわっている男を見て最初は驚くものの彼が怪我をしていると分かるとすぐに駆け寄って介抱し妹に救急用具を取りに行くよう指示すると即座に反応した妹が走り出していく。これらの彼女たちの行動にはまったく心理的なよどみも停滞もなく内からこみあげて来る衝動としてなされている。聖女とは善意ではなく「常習犯」的衝動によって醸し出される気品である。ナイフを振り上げて兄を殺そうとしている弟をマリオン・レナードが止めに入った時、弟はナイフを振り上げたまま彼女の顔をおよそ12秒まじまじと見つめている。この「まじまじと見つめる」という出来事はこの後、「A Child Of The Ghetto(ゲットーの子供)」(1910.6.6)、「iN THE BORDWE STATES(境界州で」(1910.6.18)における改心においても踏襲される過剰な視覚的細部であり、過剰である以上そこには成瀬己喜男の「裸の窃視」と同質の、或いはジョン・フォード「アパッチ砦(FORT APACHE)」(1948)のジョン・ウェインから「ノークエスチョンズ」という言葉を引き出した「見ること」のように、物語の因果を逸脱したナマの衝動に引きずり込まれることであり、ウェディングドレスを来た女をまじまじつ見つめたあの弟は「あの女だ」と識別したのではなく「あのおんな」の振動に打ちのめされている。
▲平行モンタージュ 女たちに介抱されている弟→弟を見失いひきあげてゆく兄たち→弟と女たち→修道院へ帰った女たち(これは移動行為であって平行モンタージュではない)→ウォルソールと弟→修道院で女に求婚する兄とその結婚式→弟→結婚式、、というようにめまぐるしく平行モンタージュされている。2空間ではなく多くの空間を物語の進行の過程に合わせて平行にモンタージさせている。それぞれは時系列でありながら平行する時間はゆったりと流れている。
●切り返し 
①山道を逃げてゆく馬車から、馬車を追いかけて来て発砲するヘンリー・B・ウォルソールへと切り返されている。ここではウォルソールが画面の外の馬車を視線で確認して発砲しているので「THE MOUNTAINEER’S HONOR(山岳民の誇り)」(1909.11.27)で言及した追っかけ平行モンタージュではなく切り返しである。ただ平行モンタージュに比べて切り返しへの意識は未だ乏しい。
■追っかけ 上の切り返し以外は2ショットの追っかけとして撮られている。
■縦の構図 弟が兄に撃たれる時。
■帽子を振る 結婚式の参列者が帽子を振って祝福する。
■風 花嫁が弟の前に現れた時、ベールが風に揺れている。
■西部劇 画面が真っ白になるほどの銃の埃、馬の砂埃、落馬のスタント、
■ロケーション カリフォルニアの山道を追っかけの舞台として思いきり活用している。
■ナイフを逆手に握っている  ラストシーンで弟が兄を刺し殺そうとする時、最初は順手に握っていたナイフを即座に逆手に握り替えている。
■煙 銃、たき火、馬の砂埃
■人間運動
■キャメラの横を通り過ぎる 11ショット。
1-0-0-あり
多くの細部
平行モンタージュ 多くの空間が物語の過程で平行モンタージュされている。
切り返し
ヒーローの原型
すねに傷を持つ男
西部劇
追っかけ2ショット
まじまじと見つめること
1910 RAMONA
ラモナ 5.28

撮影場所 カリフォルニア州カムロス
ちらちら
フランシス・J・グランドン(Francis J. Grandon)。シカゴ生まれ。1909年からグリフィス作品に出演し始め、役者として約100作、監督としても100作超撮りアメリカでエジソンスタジオ「メアリーに何が起こったのか(WHAT HAPPENED TO MARY )」(1912年.7.26~)に次ぐ連続活劇「キャスリンの冒険(THE ADVENTURES OF KATHLYN )」(1913/12/29)全13話をセリグ社で撮る。1929年7月11日死去。50歳。
脚本スタナー・E・V・テイラー
14  244  65  16 スペインの貴族に育てられた孤児ラモナ(メアリー・ピックフォード)は義兄(フランシス・J・グランドン)の求婚を断りインディアンの男(ヘンリー・B・ウォルソール)と恋に落ちるが義母(ケート・ブルース)に反対され、恋人は町を追放され、白人たちに故郷の村を焼き払われる。義母から自分にはインディアンの血が混じっていることを聞かされた娘は置き手紙をして家を出て男と駆け落ちし結婚して子供を授かる。だが新しく住み着いた土地も白人によって追い出された夫婦は山を彷徨ううちに子供を亡くし、夫も白人に撃ち殺され、埋葬をしているところへ義兄が駆け付ける。
■字幕あり
▲平行モンタージュ 
山の上のインディアン→家で娘が母親にインディアンの血が混じっていることを知らされる→山のインディアン→家の娘→木陰のインディアン→娘、、とスムーズにモンタージュされている。その外にもあり。
●切り返し 4分頃、木陰でギターを弾いているインディアンから教会の娘へと画面が繋がれている。娘の視線からすると隣接する視界内の空間同士であるようにも見えるが空間が飛んでいて定かではない。空間が視線でつながっているのか音で繋がっているのか定かではない(場所的不明確性)。平行モンタージュに比べて切り返しは未だ「起源」の状態を脱していない。
■視点転換

娘がみずからの血統について母から聞かされたあと鉄格子にしがみつくとキャメラは家の外から鉄格子にしがみついている娘を捉えている。これは切り返しではなく、また異空間なので1シーン1ショットではあるものの窓格子にしがみついているピックフォードは、同じように窓の外と中をカットを割って撮った「BETRAYED BY A HANDPOINT(手形に裏切られた)」(19089.5)、「THE CORD OF LIFE(命綱)」(1909.1.23)を超えた、カットを転換させることによる感情の現れとして撮られている。
■俯瞰の「起源」とパンフォーカス 山の上で襲われるインディアンと遥か下の谷で襲撃され煙を挙げているインディアンの故郷の村とがロングショットの俯瞰による縦の構図(パンフォーカス)で撮られている。小高い丘から撮られた俯瞰の「起源」。縦の構図はこれまで撮られていたが手前と奥とで別々の演技が撮られたのは「小麦の買占め(A Corner of Wheat)」(1909.12.18)以来。→「わがままペギー(WILFUL PEGGY)」(1910.10.23)
■善悪 インディアン善、白人悪
■孤児 ラモナは養子であり孤児でもある。

■ロケーション 赤ん坊が死んで埋葬する時、背景に望遠レンズで撮られたような大山脈がそびえ立っている。
■ナイフを逆手に握っている 赤ん坊の埋葬の時、ウォルソールが。
■エプロン ピックフォードはずっとエプロンをしている。
■煙 インディアンの村が燃やされた煙。馬の土煙。
■木 一本の木が何度も現れている。
■帽子を脱ぐ 夫の埋葬をしているピックフォードのもとへ駆け付けた義兄が不意に帽子を脱ぐ。
■人間運動
■キャメラの横を通り過ぎる 20ショット。
1(原)-0-0-あり
平行モンタージュ スムーズに
切り返し 場所的不明確性
視点転換
俯瞰の「起源」
縦の構図、手前と奥との別々の演技
1910 Over Silent Paths
静かな道を越えて 5.21

撮影場所 ロサンゼルス・ミッションヒルズ・サンフェルナンド・レイ・ミッション
ちらちら頻発 25  143  38  16 砂漠でかなりの量の金を探し当てた鉱夫(W・クリスティー・ミラー)はもうそろそろ町へ行きましょうよとせがむ娘(マリオン・レナード)にほだされ砂漠を出ることに決めるが、娘が水を汲みに行っている時、やって来た放浪者(デル・ヘンダーソン)に金を奪われ命を落とす。帰ってきた娘は変わり果てた父の姿を見て復讐を誓い父親を埋葬してから馬車で街で向かう途中、道に迷い行き倒れになっている放浪者を父の仇とは知らずに助けて町へ着くと、娘は保安官(アーサー・ジョンソン)に事件を報告するがそれについては黙っているように警告される。その後、娘は浮浪者と恋に落ちプロポーズされるがそこで俺はこれだけ金を持っていると見せられた金の入った麻袋を見て娘はそれが父親の物だと気づく。
■字幕あり
▲平行モンタージュ 水を汲みに行っている娘と放浪者に襲われる父親、砂漠を放浪する放浪者と馬車の娘などがスムーズに平行モンタージュされている。
■エプロン 娘は砂漠でずっとエプロンをしている。
■同じ場所は同じ構図で撮られている 娘が父親を埋葬するショットとラストシーンで父親の墓に犯人への復讐を報告するショットは同じ構図で撮られている。
■ロケーション 砂漠のロケーションの「起源」。初めてのデートの時、大きなミッションの回廊の柱が立ち並んでいる。
■埃 馬車が通った後の町の地面に砂埃が舞っている。たばこ。
■落とすこと 男が父親殺しの犯人と分かった時、娘は金の入った袋を不意に落とす
■母親の不在 娘には母親がいない。
■人間運動と改心 婚約をした男が父親を殺した犯人と分かって娘は男を保安官に突き出して改心している。金の入った父親の袋、という1クッションが置かれているが、これは父親の分離であり分離はマクガフィンであることからそれを見た者が改心することは因果の流れからは逸脱している。娘は袋を手にした後10秒ほどその袋をまじまじと見つめたあと目を閉じふらつきながらその袋を額に押し付けている。『まじまじと見つめること』という過剰な衝動が撮られている。2-A、B
■キャメラの横を通り過ぎる 14ショット。
0-0-0-あり
平行モンタージュ
エプロン
砂漠
分離はマクガフィン
まじまじと見つめること
1910 A Child Of The Ghetto
ゲットーの子供 6/6

撮影場所 コネチカット州ウェスターフィールド
ちらちら
クララ・T・ブレイシー(Clara T. Bracy)。イギリス生まれ。夫と共にオーストラリア、フランス、アメリカでオペレッタに出演し1908年グリフィスTHE LEG GIRL(1908.9.15) で映画デビュー。1932年までに90本の映画に出演。1941年ロサンゼルスで死去。93歳。
脚本スタナー・E・V・テイラー(Stanner E.V. Taylor)
14  254  55 13 母(ケート・ブルース)を亡くした貧しい娘(ドロシー・ウエスト)は大家にアパートから追い出されニューヨークの貧民街で裁縫の仕事にありつくが社長(デル・ヘンダーソン)の息子(チャールズ・ウェスト)が盗んだ金の罪をなすりつけられ警官(ジョージ・ニコルズ)に追われて逃げてきた田舎で青年(ヘンリー・B・ウォルソール)と彼の母親(クララ・T・ブレイシー)に温かく迎えられた彼女は笑顔を取り戻し青年と恋に落ちるが、そこへ非番で釣りにやって来たあの警官が現れ偶然彼女を見つけて逮捕しようとする。
■字幕あり
■ロケーション ニューヨークの貧民街の生々しいロケーション。この時期にグリフィス組はカリフォルニアからニューヨークへ帰って来ている
●切り返し 
①部屋の中の娘とドアをこじ開けようとする警官とのあいだは、7ショット内側から切り返されている。
原初的音声空間の切り返し
②田舎へ逃げてきた娘が疲れ果てて倒れてしまった時、柵の向こうに立っている青年へと切り返される。野外の開かれた空間における切り返し。
▲平行モンタージュ 警官と娘とのあいだの平行モンタージュあり。
物語の過程に埋没するように平行モンタージュが日常的に撮られている。
■飛び入り ニューヨークの貧民街の中をドロシー・ウエストが逃げてゆくシーンが飛び入りで撮られている。→「起源」は「Deceived Slumming Party(騙されたスラム街のパーティ) (1908.7.31)

■父親の不在の娘が母親を失くして孤児になる。
■笑顔を学ぶ わずか10分強の短編の中で孤児の娘が笑顔を学ぶまでのシーンが3ショット撮られている。冤罪の証明は撮られておらずそれよりも大切なこととして『笑顔を学ぶこと』が撮られている。「ドリーの冒険(The Adventures of Dollie)(1908.7.18)の流れる樽を延々と撮って以来、このような過剰な視覚的細部はグリフィス映画の基本的な出来事としてあり続けている。
■風 井戸の後ろで木の葉が風に揺れている。
■揺れる 逃亡先の農家で警官と2人きりになった時に娘の放した井戸の桶が勢い余って振り子のように左右に揺れている→「AN ALCADIAN MAID(アルカディアのメイド)」(1910.8.6)
■井戸 風に揺れる草木を背景にした井戸が恋人たちの思い出の場所として現れている。
■人間運動と改心 最初は娘を逮捕しようとしていた警官が改心して娘を解放している。明白な1クッションは何処にも撮られておらずまた心理的な表情や時間も撮られていない。撮られているのは警官がほんの数秒娘の顔をじっと見つめたことと背景で木の葉が風に揺れていること、井戸の桶が左右に大きく揺れていること、その後青年がやって来ると空気が変わって警官は去ってゆく、それだけである。ちなみにこの警官は釣りを楽しむような好漢として撮られており娘を解放した後と前とで人格の齟齬は生じていない。ここには1クッションすら置かれておらず3-Aとなる。
■巻き込まれ運動か 孤独で誰の助けもなくスキルもない娘が無実の罪を着せられ逃亡する巻き込まれ運動が撮られているが「笑顔を学ぶ」という極めて人間的なテーマと警官によるエモーショナルな改心の撮られているこの作品は人間運動としてのテーマが際立っている。
■キャメラの横を通り過ぎる 13ショット。
8(原7)-0-0-あり。
切り返し
ロケーション ニューヨークの貧民街。
飛び入り
孤児
笑顔を学ぶ
井戸
まじまじと見つめること
1910 iN THE BORDWE STATES
境界州で 6.18

撮影場所 ニュージャージー州デラウェア・ウォーター・ギャップ
脚本スタナー・E・V・テイラー 13 269  67  15。国境地帯に住む家族の若い父親(チャールズ・ウェスト)が北軍兵として出征した後、留守宅に北軍から逃げてきた南軍兵(ヘンリー・B・ウォルソール)がたどり着き、居合わせた4人姉妹の末娘(グラディス・イーガン)は彼に水をやって井戸の中に匿う。しばらくして銃撃戦で負傷した父親が北軍の指令書を持って帰宅すると、そこへあの南軍兵が押し入って来て父親を殺そうとする。だがそこにいるのがあの少女だと気づいた南軍兵は味方から父親を匿うと娘と握手をし敬礼をして去ってゆく。祖父W・クリスティー・ミラー
■字幕あり
■ロケーション ニューヨーク時代の「FOOLS OF FATE(運命の犠牲者たち)」(1909)10.9、「THE MOUNTAINEER’S HONOR(山岳民の誇り)」(1909.11.27)と同じ場所のロケーション。
▲平行モンタージュ 隣室同士、遠方同士、追跡、救出など自然に挿入されている。もはやこの時期になると平行モンタージュによる『複雑な場面転換は観客にはわからないかも知れない』という恐れを見出すことはできない。
▲報われないクロス・カッティング 姉が呼びに行った救出隊は結局役に立っていない。

●切り返し 
①山林で南軍兵から逃げている父親が振り向いて発砲した後、ライフルを撃つ南軍兵へ切り返され、そこから撃たれて倒れる父親へ、さらに追いかける南軍兵たちへと:合わせて3ショット切り返されている。野外の開かれた空間における切り返しであり、方向がどちらも右向きではあるものの父親と南軍兵との視線が通じているように見えることから最初の2ショットは見つめ合う視線の切り返しロケーション。「見ること」は未だ弱い。
②家の前で倒れた父親から中の姉妹へと1ショット切り返されている。原初的音声空間の切り返し
③部屋の中の2人(負傷している父親と娘)とドアを破ろうとしている南軍兵(ウォルソールたち)とのあいだは、10ショット内側から切り返されている。原初的音声空間の切り返し
④家の中に踏み込んで来た南軍兵があの少女に気づいた後、隣室の窓から顔を出した南軍兵たちと2ショット内側から切り返されている。ドアが開いていて兵士たちの視線が通じているのでこれは切り返しである。窓という1クッション挟まれているものの原初的二間続きの切り返し
■末娘 逃げてきた南軍兵に水をやり、匿いながら感謝のキスを拒絶し、握手と敬礼をして別れたこの娘は4人姉妹の年端も行かない末娘であり、敢えて彼女を幼い末娘とすることで身に染みついた尊厳=「常習性」=とは年齢に関係のない出来事であることを際立たせている。ヒッチコック論文(第二章『「ラスト・オブ・モヒカン」(1992)~ジョディ・メイの幼い顔)で書いたように「国民の創生(The Birth of a Nathion)」(1915)で谷から身を投げて自害した娘(メェ・マーシュ)が末娘であることはグリフィスにおける「常習性」の在り方を端的に示している。そのためにこの作品は4人姉妹に設定されている。
■聖女伝説と改心 南軍兵(ウォルソール)は知的に改心したのではなく少女の身に染みついた運動に対して衝動的に父親を殺すのをやめている。仲間の兵士たちを追い払った後、ウォルソールは改めて少女の顔をまじまじと見つめ不意に帽子を脱いでいる。ここでも「A Child Of The Ghetto(ゲットーの子供)」(1910.6.6)の刑事が娘に対してしたように『まじまじと見つめること』が撮られその後ウォルソールは不意に帽子を脱ぎ握手をし敬礼をして去っている。この「まじまじと見つめること」とは人物を知的に特定する行為ではなく人の内からの衝動(気品)を感じ取ることであり「THE TWO BROTHERS(2人の兄弟)」(1910.5.14)における弟もまたマリオン・レナードをまじまじと見つめて改心したように、知的な改心とは質的に異なる過剰な視覚的細部が衝動による改心を撮らせている。
■帽子を脱ぐ  兵士たちを追い払い少女と2人きりになった時、南軍兵は帽子を脱いでいる。ラストシーンで祖父も少女に対して帽子を脱いでいる。
■アメリカの夜 松明を持った南軍の兵士たちが薄暗い密林の中を歩いている。これは夜のシーンをフィルター、絞りなどによって昼間に撮影したもので『アメリカの夜』とも言われている。
■大作志向 父親が出征する時、家の前をブラスバンドに先導された騎手と兵隊たちが行進しているが、その遥か遠くの民家の前でも兵士たちが行進している。グリフィス「国民の創生(The Birth of a Nathion)」(1915)で助監督を務めたエリッヒ・フォン・シュトロハイムの大作趣味とリアリズムへと通ずる兆候でもある。
■またこれは縦の構図による手前と奥の空間による別々の演技でもある。
■原型 このあたりにきて「国民の創生」の原型らしき細部が揃い始めてきている。
■斜面 林の中の斜面が撮られている。
■分離と揺り椅子  負傷した父親が帰宅した後、揺り椅子に深々と体を沈めている。そのあと、やってきた南軍兵が揺り椅子に付いている血を触って負傷兵の存在を確認している(分離)。
■煙 銃。
■人間運動
■キャメラの横を通り過ぎる 14ショット
16(原13)-0-0-あり。
平行モンタージュ  自然
報われないクロス・カッティング
見つめ合う視線の切り返し
ロケーション ニューヨーク(ニュージャージー)
切り返し
揺り椅子
末娘  常習犯
聖女伝説
まじまじと見つめること
アメリカの夜
大作志向
縦の構図
分離
1910 MUGGSY’S FIRST SWEETHERT
マグシーの最初の恋人7.2

撮影場所 ニュージャージー州ウェストフィールド
ちらちら
グレース・ヘンダーソン(Grace Henderson)。ミシガン州生まれ。舞台出身。グリフィス「LUCKY JIM(ラッキージム)」(1909.4.24)で映画デビュー。120本以上の映画に出演。1944年10月30日死去。84歳。
脚本スタナー・E・V・テイラー
10  355  74  12.30 マグジー(ビリー・クィルク)は街で出会った娘メイベル(メアリー・ピックフォード)の家に招待されるがちょうど娘の父親(ジョージ・ニコルズ)がニスを塗った椅子とは知らずに恋人が座ってしまいくっついた上着を脱ぎ捨てて大男の父親の大きすぎる上着を借りたところみんなに笑われて退散するが後日、娘からの手紙で再び娘の家に行き、矯風会を装った泥棒達を追い出して英雄になる。メイベルの母→グレース・ヘンダーソン、マグジーの母→クララ・T・ブレイシー。
■字幕あり
■1ショット10秒 ここにきて少しずつ1ショットの時間が早くなり、この作品で1ショット10秒と、初めて10秒に突入している。
▲平行モンタージュ 娘の家と男の家とが何度も平行モンタージュされている。隣室同士の平行モンタージュも何度かある。リズム良く平行モンタージュが撮られている。
■切り返し 
①マグシーがピックフォードの家の玄関のベルを鳴らすると家の中へと切り返される。原初的音声空間の切り返し
②その直後、応接間に通されたマグシーと奥の部屋のピックフォード親子たちとのあいだが、3ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。隣室の気配を感じているので原初的音声空間の切り返し。その後も何度か隣室同士で切り返さているようだが場所的関係が逆にしか見えないので保留する。どちらにしても切り返しは未だ原初的になされている(場所的不明確性)。
■椅子 椅子が初めて主役になる。父親の塗ったニスの塗られた椅子に恋人が座って上着が脱げなくなり父親の上着を借りたが大きすぎて笑われる。
■マクガフィン ニスの塗られた椅子→父親の服を借りる→服が大きすぎてみんなに笑われ退散する、というマクガフィンの流れだが、そのために父親は大男である、というのところが大いに笑える。
■矯風会 ここでは矯風会を装った泥棒だが、矯風会のテーマは「イントレランス(INTOLERANCE)」(1916)「東への道(WAY DOWN EAST)」(1920)へと受け継がれている。
■風 木の葉が風に揺れている。
■たばこの煙
■帽子を脱ぐ 何度も。不意にではない。
■室内劇 基本的に室内。
■人間運動 マグシーは自分の意志で矯風会を撃退している。
■キャメラの横を通り過ぎる 5ショット。
3(原3)-0-3(手紙)-多用
平行モンタージュ 
椅子が主役
マクガフィン
ショット数
場所的不明確性
椅子
矯風会
1910 THE CALL TO ARMS
軍隊への招集 7.30

撮影場所 ニュージャージー州パターソン・ランバート城
ちらちら
ジョセフ・グレイビル(Joseph Graybill)
1909年バイオグラフに入社「THE LIGHT THAT CAME(やって来た光)」(1909.11.13)でグリフィス作品に出演、この作品以降、大きな役で出演を続ける。その後、キーストン社、バテ・フレールなどで映画出演している。1913年8月3日死去。26歳。
12  301  83  16.20 領主(ヘンリー・B・ウォルソール)は花嫁(マリオン・レナード)に家宝のルビーをプレゼントしたが戦争となり、ルビーを城の裏山の大木の下に埋めて出征した所、従弟(ジョセフ・グレイビル)が夫不在の新妻に近寄りルビーを我が物にしようとする。城に閉じ込められた新妻は窓から伝令(メアリー・ピックフォード)へ手紙を投げ落として救援を要請するが伝令が途中で酒を飲み昼寝をしている間に危機は迫る。
■字幕あり
▲平行モンタージュ 出征した夫と城に残された妻、手紙を持って走る伝令と城の新妻、危機が迫った城の新妻と彼女を助けに向かう夫(クロス・カッティング)など、平行モンタージュを自在に使っている。
▲報われないクロス・カッティング 夫が駆けつけた時、新妻は息絶えていた。
●切り返し
①城の領内から出て行った騎馬隊とそれを見ていた従弟とのあいだが、1ショット内側から切り返されそのまま終わっている。
②城の外で寝転んでいる伝令(ピックフォード)と彼女を窓から呼んだ新妻とのあいだで2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。窓空間。「THE VOICE OF THE VIOLIN(バイオリンの声)」(1909.3.13)、「SWEET AND TWENTY(美しい二十歳)」(1909.7.17)、「PIPPA PASSES(ピッパが通る)」(1909.10.9)以来の窓空間における切り返しとなる。また視線が通じているような設定なので窓空間における見つめ合う視線の切り返し「起源」となる。さらに新妻は「見ること」と「見たこと」をしているように見えるが見つめ合う視線の切り返しは主観ショットなはならない。これについては後に検討する。
③その直後、外の伝令と中で手紙を書いている新妻とのあいだは、2ショット内側から切り返されている。窓空間。窓は開いているという設定なので視線が通じている。見つめ合う視線の切り返し。「見ること」と「見たこと」をしているが見つめ合う視線の切り返しなので主観ショットにはならない(後述)。
③さらにその後、窓から手紙を投げ落とす新妻と伝令とのあいだで2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。窓空間。
④部屋に立て籠もる新妻とドアを開けようとする従弟とのあいだは、合わせて6ショットほど内側から切り返されている。原初的音声空間の切り返し
④新妻がバルコニーから飛び降りた後、城の中の従弟へと切り返されている。窓空間。
★切り返しと窓空間  隣室同士の切り返しは原初的となるが、一方を窓を挟んだ外の空間(窓空間)へ設定すると見つめ合う視線の切り返しが可能となっている
★メアリー・ピックフォード 滑稽な伝令として物語から逸脱して撮られている。この時期、既にメアリー・ピックフォードの人気が高まり、所謂サーピスショットとして滑稽な伝令が撮られているようにも見える。
■視点転換 新妻がバルコニーから落下する時に、部屋の中からと外からの2ショットで撮られている。
■順手から逆手へ 新妻は従弟に襲われそうになった時ナイフを順手に握っているが隣の部屋に入った時には既にナイフを逆手に持ち替えている。逆手に持ち替えるように指示があったかも知れない。
■ロケーション 花畑がオープニング。
■大作志向 最初のショットで遠くの兵士などが縦の構図で撮られている。大きな宮殿と数十人の軍隊の行進という大作志向が見られている。
■書き割り 妻が身を投げる城のバルコニーは書き割り
■落下して死ぬ 落下の「起源」
■人間運動
■キャメラの横を通り過ぎる 14ショット。
14(6)-0-1(手紙)-多用
窓空間における見つめ合う視線の「起源」
平行モンタージュ 柔軟
報われないクロス・カッティング
切り返し 窓空間
大作志向
落下
メアリー・ピックフォード
1910 WHAT THE DAISY SAID
雛菊(ヒナギク)はなんといった 7.16

撮影場所 ニュージャージー州デラウェア・ウォーター・ギャップ
ちらちら
アルフレッド・パジェット(Alfred Paget)。ロンドン生まれ。1908年からグリフィス作品に小さな役で出演、この作品あたりから大きな役が付き始める、「イントレランス(INTOLERANCE)」(1916.9.5)では古代バビロン篇のベルシャザル王子を演じている。1919年、カナダにてマラリア熱で死去。40歳。
脚本スタナー・E・V・テイラー
11.6  311  63  12.10秒 2人姉妹のミリー(ガートルード・ロビンソン)はヒナギクの花占いで恋を占いマーサは彼女に思いを寄せる農家の青年(アルフレッド・パジェット)を振ってジプシーの女(クララ・T・ブレイシー)に手相で恋占いをしてもらいそこで出会ったジプシーの男(ジョセフ・グレイビル)と恋仲になる。マーサはミリーにも手相占いをさせようとジプシーの女の元へ連れてゆくが、そこでミリーはあのジプシーの男に口説かれて恋仲になり、それを見て怒った姉妹の父親(ヴァーナー・クロージス)はジプシーの男に殴り倒され逃げるジプシーは一度はマーサに匿われたものの農民たちに追われて村から追放される。マーサは農家の青年の胸に飛び込み、ミリーは青年(チャールズ・ウェスト?)と2人で野山を歩いてゆく。
■字幕あり 多い。
●切り返し 樽の置いてある空間と瀧のある空間とがつながっているのなら切り返しになるのだが、切り返しにおける場所と場所との接着性の撮り方が未だ熟練していないためにこれが切り返しかどうは判断できない(場所的不明確性)
▲平行モンタージュ 柔軟に多用している。
▲追っかけ平行モンタージュ ジプシーと彼を追いかける農民たちとのあいだが「追っかけ」ではなく追っかけ平行モンタージュによってスムーズに撮られている。
■ロケーション こじんまりした空間における階段、小橋、滝、斜面の花畑、風に揺れる草木、などが撮られている。
■同じ場所は同じ構図で撮られている。滝、野原など。
■気づかないことにする ベンチで逢引きをしているジプシーとミリーをマーサが盗み見するとき。
■隠れること 逃げているジプシーの男がピックフォードに匿われ樽の中に隠れている。
■煙 たばこ、鍋
■ラストシーンが歩いてゆく後ろ姿
■風 ヒナギク、木の葉が風に揺れている。
■人間運動と善悪 姉妹を二股掛けたジプシーの男は悪ぶれる様子もなく悠々と村を出て行き悪人として撮られているようには見えない。彼もまた常習犯として撮られていることがわかる。
■キャメラの横を通り過ぎる 29ショット。最多記録。
?-0-0-多用
場所的不明確性
追っかけ平行モンタージュ
隠れること
キャメラの横を通り過ぎる29ショット。
1910

A FLASH OF LIGHT
閃光 7.23

ちらちら
ヴィヴィアン・プレスコット(Vivian Prescott)。イタリア生まれ。舞台から1909年グリフィス映画に小さな役で出るようになる。
1912年IMPへ移籍している。1917年まで202本の作品に出演。
脚本スタナー・E・V・テイラー
19.6  184  46  15 若い恋人たち(ヘンリー・B・ウォルソールとメアリー・ピックフォード)は指輪で愛を誓いあい、10年後、成長した2人(チャールズ・ウェストとステファニー・ロングフェロー)は結婚するが、彼(ジョン)の化学の実験にうんざりした彼女は社交界に入り浸るようになる。そんな折、夫は実験の爆発によって視力と聴覚を失い、夫の世話に飽き飽きしていた妻は劇場からのオファーを受け容れ離婚を決意し指輪を置いて出て行くが、かねてからジョンに思いを寄せていた妹のベル(ヴィヴィアン・プレスコット)は姉の置いて行った指輪をはめジョンの苦しみが過ぎ去るまで姉になり替わることにする。しばらくして医者(ジョージ・ニコルズ)の手術が成功しジョンは暗い部屋で目の包帯を取り除くが妹に呼ばれて駆け付けた妻が、近づいて来る夫から逃げようとして暗幕を引きずり落し外からの強烈な光を浴びた夫は永遠に光を失う。YouTubeで見られる版は、最初の若い時の2人のシーンを「THE SORROWS OF UNFAITHFUL(不誠実の悲しみ)」(1910.8.27)から借用しているので若い二人と10年後の2人が違いすぎるように見えてしまう
■字幕あり
●切り返し
①夫を診察している医者たちと隣室で待っている妹とのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。原初的二間続きの切り返し
②その後、夫や医者たちと妹とのあいだが、字幕を挟んで3ショット内側から切り返されている原初的二間続きの切り返し
▲平行モンタージュ あり 家と外とが8回ほど。
■照明 妻が暗幕を引きずり降ろして外からの強烈な光が差し込む。
■室内劇 すべて室内。
■煙 爆発。
■盲人
■人間運動
■キャメラの横を通り過ぎる 1ショット。最後のショットで妻が。
4(原4)-0-2(手紙)-あり
盲人
照明 外からの強烈な光
1910 AN ALCADIAN MAID
アルカディアのメイド8.6

撮影場所 ニュージャージー州ウェストフィールド
ちらちら
脚本スタナー・E・V・テイラー
16  226  47  12.30 アルカディアとは牧歌的な理想郷の代名詞。一本道をどこからともなく歩いて来て田舎の家のメイドに雇われた娘(メアリー・ピックフォード)はやって来た行商人(マック・セネット)に指輪をもらい結婚をネタに騙されてギャンブルに負けた彼の借金のために主人(ジョージ・ニコルズ)の金を盗むようそそのかされたあげくに逃げられるが行商人は汽車の中で客と喧嘩して汽車から放り出され追って来た娘は彼から金を取り戻し何も知らない主人の寝床に元通りに返しておく。娘ははずしていたロザリオ付きのネックレスを首にかけ神に祈る。農家の妻ケート・ブルース。
■字幕あり
▲平行モンタージュ 娘と行商人とのあいだで何度も自然に挿入されている。
●切り返し ①農家の妻と話しているセネットと井戸で洗濯をしているピックフォードとのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。
■煙 たばこ、鍋
■落とすこと 想い出の待ち合わせ場所で通行人から男は汽車で出発したと聞いた娘が持っている包みを不意に落とす。 不意に落とすという演出だが包みがなかなか落ちないのでピックフォードは少しずつ意図的に落としている。「不意に落とすように」という指示がグリフィスからなされていることが見て取れる。
■同じ場所は同じ構図で撮られている。
■フェイドイン・フェイドアウト ラストシーンの1ショットがフェイドインで始まりフェイドアウトで終わっているようにも見える。フェイドインが次に見られるのは「THE FAILURE(失敗)」(1911.12.2)であり随分と隔てられている。
■前と奥とで別々の演技 ピックフォードがセネットに指輪をもらう時、その前のショットでピックフォードの奥で男が井戸で水を汲んでいる。↓
■揺れる ↑で、奥で井戸で水を汲んでいる男の桶が、次のショットで洗濯をしているピックフォードの背後で揺れている→「A Child Of The Ghetto(ゲットーの子供)」(1910.6.6)
■中抜きとネックレス 娘が首から下げているロザリオのネックレスは隣の部屋に入ると首にかかっていたりかかっていなかったりしている。おそらく中抜きで撮られていて小道具の配置を間違えている。
■ロケーション 線路沿いでピックフォードが汽車を追いかける。
■人形 マック・セネットの人形が汽車から放り出される。
■風に揺れる草木
■人間運動
■キャメラの横を通り過ぎる 9ショット。
1-0-0-多用
フェイドインの「起源」
フェイドアウト
桶が揺れる
1910  THE HOUSE WITH CLOSED SHUTTERS
シャッターの閉ざされた家8.13

撮影場所 ニュージャージー州コイツビル
ちらちら 14  251  69  16.30 一人息子(ヘンリー・B・ウォルソール)は母(グーレース・アンダーソン)と妹(ドロシー・ウエスト)を家に残し、親友で妹の求婚者たち(チャールズ・ウェストとジョセフ・グレイビル)と南軍兵士として戦地へと出征するが気の弱い彼は酒を飲みながら恐怖をやり過ごしていたものの本部からの前線への伝令を届ける途中で撃たれて死んだ兵士を見て怖気づき家へ逃げ帰ってしまい、それを見た妹は髪を切り落して男装し兄に成り代わって任務を遂行して兄の名誉を守った後、戦死する。「息子」の英雄的戦死の報を受け取った母親は家にシャッターをして光を遮断し家の恥である息子を隠し続け帰還した娘の求婚者たちには息子も娘も死んだと告げる。それから数十年の時が流れる。
■字幕 多い。「読ませる」字幕が入り始める。
●1シーン数ショット 砂袋をバリケードにして敵と撃ち合う戦闘シーンでは1シーンが横から、後ろから、と何度も分断されている。
●切り返し 
①シャッターを閉めている黒人の召使いから家の中の母息子へと1ショット切り返されている。原初的音声空間の切り返し
②その後、帰還してやって来た娘の求婚者(チャールズ・ウェスト)を出迎える母と家の中の息子とのあいだは、2ショット内側から切り返されている。原初的音声空間の切り返し
③年が過ぎ、やって来て玄関先に花を添える求婚者チャールズ・ウェストと家の中の息子とのあいだは、1ショット内側から切り返されている。原初的音声空間の切り返し
④終盤、やって来た2人の元求婚者たちと家の中の息子たちとのあいだは、8ショット目に同一画面に収められるまで7ショット内側から切り返されている。2ショット目までは原初的音声空間の切り返し。シャッターを開けて以降は通常の切り返し。すべて原初的ではある。
▲平行モンタージュ 戦地の娘と家のウォルソール、その他隣室同士を含めて多用されている。ただ、最初にテントでウォルソールが酒を飲んだ後、家のドアを開けて外を見ている妹のドロシー・ウエストのショットへ転換されている。「A DRUNKER’S REFORMATION(酔っぱらいの改心)」(1909.3.27)、「WHAT DRINK DID(飲酒は何をもたらしたか)」(1909.5.29))においても見られているが、ここでも平行モンタージュと主観ショットとの境界が曖昧に撮られている。
■追っかけ ドロシー・ウエストが男装し馬に乗って出発した後、敵兵に見つかり2ショット、追っかけが撮られている。ただこれは、追う者と追われる者との距離を示すための同一画面というべきショットであり延々と1ショットで撮られる「追っかけ」では最早ない。
■照明 シャッターを開けると外から強い光が差し込んでくる。
■爆弾の煙 爆弾の煙で画面が真っ白になる。
■馬上から投げ棄てること ウォルソールは馬上で酒を飲みそのまま酒瓶を遠くへ投げ棄てている。ジョン・フォードの西部劇でよく見る光景。西部劇では飲み終わった瓶や水筒は遠くに投げ棄てるのが鉄則。
■脱走兵 ウォルソール。
■旗 ドロシー・ウエストが南軍の軍旗を縫っているシーンから始まるこの作品は、戦地で戦死した騎手の落とした旗をドロシー・ウエストが拾って掲げた瞬間、撃たれて死ぬ。『旗を受け継ぐこと』というジョン・フォード的主題の「起源」が撮られている。
■髪を切って求婚者に渡す 男たちの出征にあたりドロシー・ウエストがチャールズ・ウェストに髪を切って渡している。ジョセフ・グレイビルには髪留めのリボンを渡している。
■男装すること ドロシー・ウエストは髪を切り落して男装して兄に成りすまし見事に馬を乗りこなして任務を遂行し戦死している。
■椅子の上で死ぬ ヘンリー・B・ウォルソールは揺り椅子の上で死んでいる。→ここまでの椅子の上で死ぬ作品「TWO MEMORIES(二つの思い出)」(1909.5.22)「FADEDLILLIES(色褪せたゆり)」(1909.6.12)「The Sealed room(封印された部屋)」(1909.9.4)「FOOLS OF FATE(運命の犠牲者たち)」(190910.9)
■退出の映画史 出征する時に兄と妹が抱き合おうとする時、居合わせたチャールズ・ウェストが背を向けてじっとしている。
■帽子を脱ぐ ラストシーンで2人の親友の男たちが一斉に帽子を脱いでそのまま終わる。ラストシーンで帽子を脱ぐのは「LINES OF WHITE ON A SULLEN SEA(暗い海の白い線)」(1909.10.30)以来。これもまたジョン・フォード的主題。
■ヒーロー伝説 妹は兄の影となり兄をヒーローにして死んでいる→「リバティ・バランスを射った男(THE MAN WHO SHOT LIBERTY VALANCE)」(1962.4.22)
■人間運動 兄は「初犯」、妹は「常習犯」。妹は逃げ帰って来た兄を揺さぶり、その指令書をじっと見つめ続け、何かを思い出したように黒人召使に兄の服を脱がせるよう命令すると母親に「来なさい!」と手招きして着替えを手伝わせ「いいのかい?」と母に尋ねる間も与えず長い髪を切らせて母にキスをし振り向きもせず馬に乗って出発している。この一連の彼女の運動は何らの心理的な淀みも停滞もなしに一気に撮られた「常習犯」の典型的視覚的細部であり、あの指令書をじっと見つめた瞬間、彼女は家の当主となっている
■キャメラの横を通り過ぎる 11ショット。
11(原6)-0-0-多用
1シーンが数ショットに分断
平行モンタージュ 多用
主観ショットと平行モンタージュの混同
追っかけ 2ショット
馬上から投げ棄てること
脱走兵
旗を受け継ぐ
爆弾の煙
退出の映画史
男装
照明 外から光が差し込む
椅子に座って死ぬ
帽子を脱ぐ ラストシーンで
ヒーロー伝説
1910  THE USURER
高利貸し8.20
ちらちら
★クレア・マクドウエル(Claire McDowell)。1908年THE DEVIL(悪魔)(1908.10.3) からグリフィス作品に出演しているようだが確認できるのはこの作品の債務者役から。以降、常連となり幅広い役をこなしている。1906年、チャールズ・ヒル・メイルズ(Charles Hill Mailes)と結婚。メイルズもグリフィス短編の常連となり2人は夫婦役でも何度も共演している。1966年10月23日死去。89歳。
16  219  65  17.50 強欲な高利貸し(ジョージ・ニコルズ)は妹(グレース・ヘンダーソン)に頼まれ彼女の宝石を金庫に入れている時、めまいでよろけた債務者(ケート・ブルース)の反動で金庫に閉じ込められ窒息死し、残酷な契約にショックを受けた高利貸しの妹が債務者たちの借金を帳消しにし取り立てたお金も返す。債務者①ケート・ブルースと娘、②ヘンリー・B・ウォルソールと妻?、③クレア・マクドウエルとオフィスマン(フランシス・J・グランドンか?)夫婦と娘(グラディス・イーガン)。取り立て屋→アルフレッド・パジェット(大きい男)とアンソニー・オサリバン、エドワード・ディロン。
■字幕あり 12回。
▲平行モンタージュ 20回強平行モンタージュされている。。平行モンタージュを撮るために3組の債務者がいるというマクガフィン的融合。
①高利貸しのパーティと取り立て屋に借金を請求される4組の債務者、拳銃自殺する男(ヘンリー・B・ウォルソール)などが平行モンタージュされている。
②金庫に閉じ込められている高利貸しと金庫の隣の事務所、借金を取り立てられる債務者、自殺して倒れている男、などが平行モンタージュされている。
■切り返し
①女がよろけて金庫の扉が閉まる時における金庫の中と外とのあいだは、扉が8分ほど閉まっている原初的二間続きの切り返しが5ショット続き扉が閉まった後は原初的音声空間の切り返しが7ショットほど続いている(あるいは平行モンタージュ)。どちらにしても原初的ではある。
②窒息死した高利貸しと外でその気配を感じている妹たちとのあいだは、3ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。原初的音声空間の切り返し
③窒息死した高利貸しが金庫の中で発見されたあと、金庫の隣の事務所で白い帽子をかぶった2人の社員から金庫の中へ切り返され、再び金庫の外へと切り返されている。ここでは①と違い金庫の扉が全開し外と中との視線が通じているので原初的二間続きの切り返しである。
■不可抗力 「HER YERRIBLE ORDEAL(彼女の恐ろしい体験)」(1910.1.15)では泥棒によって故意に金庫に閉じ込められているがここでは不可抗力によって閉じ込められている。
■落とすこと 拳銃自殺をしようとしているヘンリー・B・ウォルソールが持っている帽子を不意に落とす
■照明 金庫室はカットが変わると次第に暗くなり、夜のオフィスも暗い中で撮られている。
■椅子 ベッドを取り上げられた病気の少女が椅子をベッド代わりにする。
■煙 たばこ
■人間運動と改心 高利貸しの妹はそもそも高利貸しではないので改心していない。しているのは部下たちで彼らはそれまでの悪人から善人へと人格が齟齬しているので「初犯」的改心。脇役ゆえにこうならざるを得ないのかもしれない。
■室内劇
■キャメラの横を通り過ぎる なし。
16(原16)-0-0-多用
平行モンタージュ多用→マクガフィンとの融合。
原初的二間続きの切り返し
不可抗力
落とすこと
照明 カットごとに暗くなる。暗いオフィス。
椅子 ベッド代わりにする。
1910

THE SORROWS OF UNFAITHFUL
不誠実の悲しみ 8.27

撮影場所 ニュージャージー州アトランティックハイランド

ちらちら
脚本スタナー・E・V・テイラー
14  256  47 11 子供の頃、猟師のビル(ジョン・タンジー)はメアリー(グラディス・イーガン)と将来を誓い合い漁に出る。10年後、舟から戻ったビル(ヘンリー・B・ウォルソール)はメアリー(メアリー・ピックフォード)に指輪を授ける。その後、ビルは海を漂流している猟師のジョー(エドワード・ディロン)を助けるがメアリーはジョーを誘惑しビルへの恩を忘れられない彼は彼女を拒絶し置き手紙を残して海へ出ようとするが、そうとは知らないビルはジョーを殴り倒して海へ沈める。ピックフォードの父親→W・クリスティー・ミラー。
★→YouTubeで見られる版の「A FLASH OF LIGHT(閃光)」(1910.7.23)ではここで撮られているウォルソールがピックフォードに指輪を授けるシーンがオープニングに借用されている
■字幕あり 5箇所。
●切り返し
①漂流するいかだとそれを浜から見ているビルとのあいだは、3ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。「見ること」と「見たこと」が撮られていて角度はずれているので原初的主観ショット。だがその「主観ショット」の中に3ショット目の同一画面でウォルソールが入って来る。見た目のショットの中に見ている本人が入って来るのはあり得ない。そういう意味でも原初的→「SWORDS AND HEARTS(剣と心」(1911.9.2)切り返し③。主観ショットがロケーションで撮られた「起源」である
②ラストシーンで海の中に入ってゆくウォルソールとそれを窓から見ているピックフォードとのあいだは、1ショット内側から切り返されている。おそらく窓空間。「見ること」しか撮られておらずそのまま海の中へ入ってゆくウォルソールで映画が終わっているので定義上主観ショットではないが、こればどう見ても主観ショットにしか見えない。窓空間の切り返し。
▲平行モンタージュ それなりに使われている。場所的不明確性等により切り返しなのか平行モンタージュなのか不明なシーンもあり。
■パン 終盤、ウォルシュが浜へと向かう時に
■フェイドアウト ラストシーン。
■気づかないことにする 抱き合っている2人はウォルソールに気づかない。上級。
■煙 たばこ
■人間運動
■キャメラの横を通り過ぎる 12ショット。
3-0-1(手紙)-あり
原初的主観ショット
主観ショットがロケーションで撮られた「起源」
パン
フェイドアウト ラストシーン
場所的不明確性
1910

IN LIFE’S CICLE
人生の輪の中で 9.17

撮影場所 ニューヨーク州カドバックビル

ちらちら 16  228  52 13.40秒 妻の死後、夫(ジョージ・ニコルズ)は亡き母の墓に花輪を供え墓参りを欠かさない息子ヴィンセントと娘クララ(アデル・デカルト)に囲まれて暮らしている。数年後、成長したヴィンセント(ヘンリー・B・ウォルソール)は聖職者になるために家を出て行きクララ(ステファニー・ロングフェロー)は母親の墓を忘れないと約束するものの現れた青年(チャールズ・ウェスト)に誘惑され置き手紙を書いて父親の元から去ってゆく。さらに数年が経ち、クララの夫は飲んだくれとなって酒場で喧嘩して致命傷を負い息を引き取る間際にクララとの離婚を承認する。クララは娘(エディス・ホールドマン)を連れて最後の墓参りに帰郷するがそこへ兄がやって来て家へ帰ろうと彼女を促す。
■字幕あり。8箇所。
▲平行モンタージュ 17回ほど。。男に誘惑されている妹を、遠くにいる兄が(霊感で)感じるというシーンなどが平行モンタージュで撮られている。
●切り返し チャールズ・ウェストと彼に呼ばれる娘とのあいだは、平行モンタージュを挟んで6ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。声に反応しているので原初的音声空間の切り返し
■風 木の葉、スカートリボンが風に揺れている。故意に枝を揺らしている コントラストの強い黑の出た木の葉に囲まれたシーンでは木の枝を故意に揺らしているようにも見える。
■落とすこと 
①娘の落としたバッグをチャールズ・ウェストが拾うことが2人の出会い。
②兄は妹の置き手紙を落としている。
③終盤、娘は母の墓の前で手荷物を、兄は花輪を落としている。
■欲望の窃視 草むらに隠れた母娘が若いカップルのロマンスを盗み見する。成瀬己喜男なら「欲望の窃視」となる。
■帽子を脱ぐ ラストシーンでウォルソールが。
■椅子の上で生きる 父親は終始椅子に座り続けている。
■母親の不在 子供たちは亡き母親の墓に3回墓参りをしている。
■帰郷 ゴーホームの映画。
■人間運動 誰も改心はしていない。
■キャメラの横を通り過ぎる 8ショット。
5(原5)-0-2(手紙)-多用
平行モンタージュ→遠くで感じる
木の枝を揺らす。
落とすこと
欲望の窃視
帽子を脱ぐ
帰郷
椅子
母親の不在
1910

WILFUL PEGGY
わがままペギー 10.23

撮影場所 ニューヨーク州カドバックビル

ちらちら 16  219  65  17.50秒(上映スピードの違いがあるかも知れない)。 勝ち気でおてんばの娘ペギー(メアリー・ピックフォード)は領主(ヘンリー・B・ウォルソール)に見初められ結婚するが城の生活に馴染めずみんなにバカにされるとメイド(クレア・マクドウエル)を蹴散らし男装して領主の甥と共に城から逃げ出すが、寄った宿屋で甥に襲われそうになる。時を同じくして領主は馬を駆ってペギーの元へ向かうが救援虚しく駆け付けた時には既に甥はペギーによって蹴散らされていた。クララ・T・ブレイシー(ペギーの母親)。
■字幕あり 10箇所。
■縦の構図 
①手前で母親を慰めたり男を蹴散らしているペギーと奥でそれを見て笑っている領主とが縦の構図のパンフォーカス(深い被写界深度)で撮られている。縦の構図の手前と奥の二つの空間でそれぞれが違う演技をするのは「小麦の買占め(A Corner of Wheat)」(1909.12.18)、「RAMONA(ラモナ)」(1910.5.28)「iN THE BORDWE STATES(境界州で」(1910.6.18)などがある。
②庭園でのパーティで手前で来客と喧嘩をして出て行くペギーと奥でダンスをしている者たちとが縦の構図で撮られている。
■下品 母親と口論している時、ピックフォードが口の中の飴?を下に乗せて「イー」と出す。その後、その飴を母親の口の中に入れる。
■椅子 ペギーに襲いかかられたメイドが椅子を盾にして逃げ回っている。
●切り返し 
①領主が家にやって来て結婚を申し込む時、外へ逃げたペギーから家の中へ1ショット切り返されている。室内と室外。
②その後、ペギーが木の周りを母親から逃げて走り回っている時、家の中の領主へとカットされている。領主の視線が通じているようでもあり切り返しとして計測する。室内と室外。
■机の上に座っている
▲平行モンタージュ 多用。男装して領主の甥と城を出て行くペギーと領主とのあいだが平行モンタージュで撮り続けられその後ペギーが従弟に襲われクロス・カッティングへと変化してゆく。
▲報われないクロス・カッティング 領主の甥に襲われたペギーは領主の助けを待つまでもなく自力で従弟を叩きのめしてしまうのでクロス・カッティングは報われない。
■男装する ピックフォードが男装して城を飛び出す。
■気づかないことにする 椅子を振り上げて甥を追い回している時、入って来た領主に気づかない。
■分離 小道具に対する愛着は「THE ZULU’S HEART(ズールーの心)」(1908.10.10)の人形、におけるハンカチなどによって既に撮られているが、ここではペギーに撃退された領主の甥が、ペギーが自分を殴るために使った椅子に名残惜しそうに手を触れ、ペギーの座っていた机を指差して物思いにふけるというショットが撮られている。
■風に揺れる草木
■煙 馬の土煙
■父親の不在 ペギーには母親しかいない。父親探しの映画。
■人間運動と改心 ラストシーンでペギーは改心したのか。領主の甥に襲われたことが1クッションとしてあるがペギーの人格にさほどの齟齬は生じておらずまた元のペギーに戻る程度の気まぐれな改心に過ぎない。よって3-Aとしておく。
■キャメラの横を通り過ぎる 10ショット。
2-0-0-多用
縦の構図 別々の演技をする
下品
椅子 盾にする
平行モンタージュ 多用
報われないクロス・カッティング
男装する
椅子を盾にする
分離
父親の不在
下品
1910 THE MODERN PRODIGAL
現代の放蕩息子 9.3

撮影場所 ニューヨーク州カドバックビル
ちらちら
脚本デル・ヘンダーソン
ガイ・ヘドランド(Guy Hedlund)。コネチカット州ポートランド出身。舞台俳優で1906年頃から映画に出演、1908年からバイオグラフ社でグリフィスなどの作品に小さな役で出演し始める。1947年までに120本以上の映画に出演。監督としても2作品ほど撮っている。1964年12月29日死去。80歳。
15  246  54  13.10
年老いた母(クララ・T・ブレイシー)に別れを告げ都会を夢みて旅立った息子(ガイ・ヘドランド)は脱獄囚となって田舎に逃げ帰って来て川で溺れている保安官(ジョージ・ニコルズ)の息子を助けるが保安官は彼を逮捕する。保安官は妻(ケート・ブルース)に銃を渡して男を見張っているよう言づけて席を外しその隙に妻はポーチに着替えを置き寝たふりをして男を逃がす。
■字幕あり。9ショット。
▲平行モンタージュ 保安官、子供、囚人などのあいだでスムーズに平行モンタージュされている。
●切り返し
①警官たちに見つかり茂みの中をから川沿いへと逃げた囚人から彼に発砲する警官へと切り返されている。
②その直後、川べりを逃げる囚人から彼に発砲する警官(アルフレッド・パジェット)へと切り返されている。特にこの切り返しは囚人を見つけ彼に狙いを定めてキャメラへ向かって発砲する警官の瞳と視線を膝上くらいの近景からはっきり捉えた切り返しであり、これまでの切り返しとは明らかに異質の「見ること」のショットが撮られている(見つめ合ってはいない)
③さらにその直後、川に飛び込んで水の中に隠れた囚人から警官たちへと切り返されている。囚人は川の中に隠れているので警官たちを見ることはできず、警官たちも川の中に隠れている囚人に気づいていないが気配を感じているとすれば原初的音声空間の切り返しとなる。
④川で溺れている少年から川べりの囚人へと切り返されている。
⑤子供を救出して介抱している囚人から駆けつけた父親へと切り返されている。
★膝上くらいまでキャメラが近づいている。
■お尻を叩く 盗みを働いた息子のお尻を保安官が叩く
■パン あり。子供たちが泳ぐために川に入る時。
■同じ場所は同じ構図で撮られている。特にオープニングとラストシーンは一本の木の下で椅子に座った母親と息子のショットが同じ構図で撮られている。
■椅子にしがみついて泣く
■なめる「起源」 風に揺れる木を。画面の上で殊更木の枝を揺らしているように見える。
■煙 銃で画面が真っ白になる。人が走ると地面から砂埃が舞い上がる。銃。波紋。水しぶき。
■THE END ラストシーンで
■人間運動と改心 保安官は自分の息子を助けた脱獄囚を妻に逃がすよう仕向けて改心しているようにも見える。しかしこの保安官は子供に対する厳格なしつけで人格者であるという撮られ方をしており、その後脱獄囚と握手し次の瞬間銃を突きつけた彼の人格には齟齬が生じておらず結局のところ彼は改心をしているようには撮られていない。従って3-Aということになる。
■キャメラの横を通り過ぎる 17ショット。
5(原1)-0-0-多用。
平行モンタージュ
切り返し「見ること」の進化
同じ構図。
THE END
なめる「起源」
膝上
1910 Rose O'Salem Town
ローズ・オ・セーラム・タウン 10.1
撮影場所 ニュージャージー州デラウェア・ウォーター・ギャップ
ちらちら 17  211  51  14.30 魔女狩りの物語。Sslemはマサチューセッツのセーラムという街の名前。海を愛する娘(ドロシー・ウエスト)は海を初めて見た山の男の猟師(ヘンリー・B・ウォルソール)に魅入られネックレスをプレゼントされる。しばらくすると家に清教徒がやって来て娘とその母親(クララ・T・ブレイシー)に改宗を迫り、魚村の子供(グラディス・イーガン)の病気を治しまた薬草を摘んでいる母親の姿を盗み見した清教徒たちは2人を魔女と疑い連行するが、それを見ていた山の男は山のインディアンたち(アルフレッド・パジェット等)に助けを求める。母親は有罪となり、娘は母親が火刑にされている様子を窓から見せられ自白を迫られるが拒絶し火刑に処せられそうになる。
■字幕あり。10箇所。
▲平行モンタージュからクロス・カッティングへ
捕らえられた娘と彼女を救出に向かう者たちなどが平行モンタージュ(クロス・カッティング)されている。
●切り返し 
①家の中で猟師からもらったネックレスを手にしている娘と小窓からそれを見ていた清教徒たちとのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。小窓が開いているがドアは閉められているので原初的音声空間の切り返し
②火刑にされる娘から彼女を救出に来た猟師・インディアンたちへと一度切り返されている。それ以前のショットでも猟師のヘンリー・B・ウォルソールはいかにも娘を見つけたような「おっ!」というような顔をするのだが実際は未だ娘を視認できる位置には到達しておらず、前作「THE MODERN PRODIGAL(現代の放蕩者)」(1910.9.3)で進化したと見えた切り返しも未だ場所的関係において不十分に見える。
■ロケーション 海、狭く囲まれた岩肌に砕け散る波。
■風 海風
■煙 のろし、火刑、波しぶき、
■父親の不在 娘には母親しかいない。
■人間運動
■キャメラの横を通り過ぎる 11ショット。
2(原1)-0-0-多用
平行モンタージュ、クロス・カッティング
切り返し 場所的不明確性
ロケーション
魔女狩り
1910  THE OATH AND THE MAN
誓いと男 9.24

撮影場所 ニュージャージー州パターソン
ちらちら
脚本スタナー・E・V・テイラー
10  349  4  11 フランス革命の物語。街の調香師(ヘンリー・B・ウォルソール)は妻(フローレンス・バーカー)と質素に暮らしているが贅沢好きな妻は家主の貴族(フランシス・J・グランドン)に見初められて夫の不在中にパーティに招待され、それを知った夫は妻を奪い返しに貴族の屋敷に乗り込むが妻に拒絶され、2人を殺そうとするも司祭(W・クリスティー・ミラー)に説得されて思い止まる。しかし革命が起きると調香師はリーダーとなって農民たちを引き連れて再び貴族の屋敷に乗り込み、調香師の店に逃げ込んだ貴族と妻を殺そうとするがここでも司祭に説得された調香師は2人に平民の服を着せて逃がしてやる。
■字幕あり。8ショット。
▲平行モンタージュ 妻と夫とのあいだが終始平行モンタージュされる。
▲逃げる2人(貴族と調香師の妻)とそれを追いかける群衆とのあいだが追っかけ平行モンタージュで撮られている。→「THE MOUNTAINEER’S HONOR(山岳民の誇り)」(1909.11.27)参照
●切り返し
①貴族の屋敷からつまみ出される調香師と隣室の妻たちとのあいだは、1ショット内側から切り返されそのまま終わっている。原初的二間続きの切り返し
②ドアを閉めて立て籠もる貴族たちとドアを開けようとする群衆とのあいだは、5ショット内側から切り返されている。原初的音声空間の切り返し
③白い花の前の3人(貴族と調香師の妻と彼らを逃がす家来アルフレッド・パジェット)と追いかけてきた群衆とのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで1ショット内側から切り返されている。視線が通じるぎりぎりの空間の切り返し。ロケーション。
④調香師の店の中に逃げ込んだ2人(貴族と調香師の妻)とそれを店の外から見ている男とのあいだは、1ショット内側から切り返されそのまま終わっている。これも視線はぎりぎりの範囲。室内と室外。
■ナイフを逆手に握っている 調香師は常にナイフ、サーベルを逆手に握っている。終盤、妻を刺し殺そうという時には順手で握っているサーベルをわざわざ逆手に握り変えて刺そうとしている。
■落とすこと 司祭に殺人をやめるよう説得されたウォルソールが不意にナイフを落とす。
■分離 革命で貴族の屋敷に乗り込んだ後、妻の落としたショールを手に取り匂いを嗅ぎ叩き付ける。
■THE END バイオグラフのマークと共に
■人間運動と改心 調香師は2度改心している。2回とも牧師にロザリオという神の分離を見せられ改心しているが一度目はそれによって調香師はナイフを不意に落とし牧師にすがりついて改心し、2度目はロザリオをじっと見つめて改心している。心理的なものはなく人格的齟齬は生じていない。2-A
■キャメラの横を通り過ぎる 10ショット。人がキャメラの横を通り過ぎる時の距離がより接近している。
8(原6)-0-0-多用
追っかけ平行モンタージュ
切り返し 拙い
ナイフを逆手に握っている
THE END
キャメラの横を通り過ぎる・接近。
1910 THAT CHINK AT GOLDEN GULCH
黄金渓谷のあのチンク 10.15

撮影場所 ニュージャージー州フォートリー・コイツビル
ちらちら
アンソニー・オサリバン(Anthony O'Sullivan)。俳優、監督。1906年バイオグラフでウォレス・マカッチョン・シニアTHE BLACK HAND(黒い手)(1906.3.29。YouTubeで視聴可能))に出演、以降、グリフィス作品を始め1918年のあいだに160本以上の映画に出演。1913年から15年まで35本の映画を監督する。1920年7月5日死去。65歳。
15  246  56  13.40
黄金渓谷で洗濯屋を営むモンゴル人のチンク(
アンソニー・オサリバン)は誇りとする編まれた長い髪を谷の白人たちにからかわれているところを恋人たち(青年チャールズ・ウェストと娘(ガートルード・ロビンソン)に助けられ娘に花束を贈るが、そこに居合わせた谷の紳士(デル・ヘンダーソン)はその花を自分の胸に飾り、嫉妬した青年は娘と喧嘩別れする。ある日、谷にお尋ね者のお触れが出た時、チンクはあの紳士が怪しいとあとをつけ、山で強盗を働いた紳士を切り落とした自分の髪で木に縛り付けて逮捕し谷へと連れ帰る。チンクは喧嘩別れしていた恋人たちを引き合わせ懸賞金と置き手紙を2人に残しひとり谷を去ってゆく。
■字幕あり。6箇所。
▲平行モンタージュ スムーズに何度も。
●切り返し
①チンクから花をもらった娘に焼きもちを焼いて花を叩きつけ去って行って振り向いた青年から家の前の娘と紳士へと切り返されている。ただ、場所的関係が不明確。
②小さな木の下で着替えて酒を飲み気に寄りかかって眠る紳士(強盗)と叢の中から彼を見ているチンクとのあいだは、同一画面に挟まれた6ショット内側から切り返されている。これもやや場所的関係が不明確だがチンクの「見ること」と「見たこと」が撮られているので原初的主観ショット。ロケーションの主観ショットは「THE SORROWS OF UNFAITHFUL(不誠実の悲しみ)」(1910.8.27)切り返し①でも撮られているが
ここではより「見ること」と「見たこと」がはっきりと撮られている。同一画面に挟まれた切り返しが撮られている。
③終盤、自分の店の裏口から出て行くチンクと外の青年とのあいだは、1ショット内側から切り返されている。室内と室外。
④その直後、店の中に入った青年と外の娘とのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで1ショット内側から切り返されている。室内と室外。
■渓谷 渓谷(GULCH)は峡谷に比べて浅い谷。谷の民=悪という「COMATA.THE SIOUX(コマタ、スー族)」(1909.9.11)「THE MOUNTAINEER’S HONOR(山岳民の誇り)」(1909.11.27)などで繰り返されるテーマが撮られている。
■川 おそらくニュージャージー州のいつもの川だと思われる。その川を見渡す小高い丘で恋人たちは逢引きをし、ラストシーンでは中国人が去ってゆく。
■同じ場所は同じ構図で撮られている 川べりの小路。
■煙 お香。銃。
■ラストシーンが歩いてゆく後ろ姿
■人間運動
■キャメラの横を通り過ぎる 14ショット。
9-0-1(手紙)-あり
切り返し 場所的不明確性
主観ショット「見ること」と「見たこと」の進化
原初的主観ショット

平行モンタージュ
谷の民=悪
1910 THE BANKER’S DAUGHTERS
銀行家の娘たち 10.22
  2分40秒だけ現存している。8  450  20  2.40
銀行家の娘(ステファニー・ロングフェロー)の持っている宝石を狙った強盗が娘の家に届けられた荷物の中に隠れて娘の家に入り込み、鏡を見て気配に気づいた娘が気づいていないフリを装い、居合わせた姪に隣の部屋にいる姉(ドロシー・ウエスト)へ手紙を届けさせる。
●切り返し 
①恐怖におののく娘とそれを隣の部屋から見ている姉とのあいだが2ショット内側から切り返されている。原初的二間続きの切り返し
②さらにその後、強盗に銃を突きつけられている娘の部屋から隣の部屋でそれを見ている姉へと3ショット切り返されている。①②とも「切り返し」ではあるものの横から横への原初的二間続きの切り返しでありかつ場所的関係が今一つ不明確に撮られている。
▲平行モンタージュ 警官たちと娘の部屋とが平行モンタージュされている。
■鏡 鏡が画面の中に映っていないので不明だが鏡を見て背後の泥棒に気づいた、という設定らしい。
■評 わずか2分40秒のフィルムだが、その中に平行モンタージュと切り返しが撮られ、またそのあいだを1ショット8秒の高速で撮られている。
■キャメラの横を通り過ぎる なし
5(原5)-0-0-あり。

原初的二間続きの切り返し
場所的不明確性
平行モンタージュ
1910 THE FUGITIVE
逃亡者 11.5

撮影場所 ニューヨーク州フィッシュキル
ちらちら
エドウィン・オーガスト(Edwin August)。ミズーリ―州セントルイス生まれ。舞台出身。1909年バイオグラフでグリフィス作品に出演。この作品あたりから大きな役で出演を続ける。1912年夏の終わりごろ、ルービン社へ移籍、1914年イーコ・フィルムズ設立、19年まで52本の映画を監督、1916年大統領選に立候補すると発表し映画検閲への反対を挙げるが断念。1947年まで映画に出演。1964年3月4日ハリウッドで死去。80歳。
17  214  60  16.50 南軍の兵士ジョン(エドウィン・オーガスト)は母(ケート・ブルース)と恋人(ドロシー・ウエスト)を残して出征し、同じくジョンという名の北軍の兵士(エドワード・ディロン)もまた母(クララ・T・ブレイシー)と恋人(ルーシー・コットン)を残して出征する。戦場で味方の部隊からはぐれた北軍の兵士ジョンは小路で出くわした南軍の兵士ジョンを咄嗟に撃ち殺し近くにあったその南軍の兵士ジョンの家に逃げ込むが、そうとは知らない母親は彼を南軍兵たちから匿う。そこへ息子の死体が運び込まれ、事情を知った母は北軍の兵士を突き出そうとするが彼の母親のことを想い思い止まる。戦争が終わり、北軍の兵士は家族と恋人の元へ帰り、亡き南軍兵士の恋人には新しい恋人ができる。母親は彼女の置いて行った白い花を手に取り、壁に掛けてある息子の軍服の襟にさす。
■字幕あり。10箇所。
▲平行モンタージュ 南軍と北軍の男、それぞれの家族が何度も平行モンタージュされる。
▲追っかけ平行モンタージュあり 北軍兵を南軍兵たちが追跡する時
●切り返し 
①戦場での撃ち合いの時に切り返しがあるようにも見えるが定かではない。視線と場所的不明確性が未だ克服されていない。
②家の中で北軍兵を匿う母と外の南軍兵たちとのあいだは、4ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。原初的音声空間の切り返し。その後も1ショット切り返されているが時系列に近い。
③その後、北軍兵を突き出そうとする母と外の南軍兵たちとのあいだは、4ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。原初的音声空間の切り返し
④その直後、去ってゆく南軍兵たちと家の中の母とのあいだは、1ショット内側から切り返されそのまま終わっている。原初的音声空間の切り返し
■バックライトの「起源」 ルーシー・コットンのふわふわの髪に自然光のバックライトが当たっている。


■ロケーション 山岳地帯の岩肌。林に囲まれた細い道
■照明 林の木の葉の影が歩いてゆく兵士の体に流れるように投射されている。
■帽子を脱ぐ 北軍のジョンが南軍兵の家から出て行くとき、不意に帽子を脱いでいる。
■煙 銃
■分離 ラストシーンの息子の軍服
■エモーション グリフィス作品の中でも極めてエモーショナルに撮られている。
■父親の不在 省略されているが、どちらの家族にも父親がいない。南軍兵の家には父親の肖像画らしきものが壁に掛けられている。
■人間運動と改心 母親は北軍兵(ジョン)を突き出そうとして改心して思い止まっているがここで字幕には母親は『彼(北軍兵)の母親のことを想い思い止まる』と書かれている。母親がジョンを匿ったのは『父親(夫)の不在』という相通ずる境遇の中で父親代わりに息子を育てた相手の母親のことを想ってのことであり、ジョンを許すという善悪の出来事ではない。だからこそ字幕には『ジョンを想い』とも『ジョンの父親を想い』とも書かれていない。母はジョンを匿った後も彼に笑顔で接することもなく『出て行って』と右手で外を差し示し毅然とした態度を撮り続けその人格に齟齬を生じさせていない。そもそも彼女は改心をしていない。3-A。『ジョンの母親を想い』が1クッションなら2-A
■キャメラの横を通り過ぎる 19ショット。
7(原7)-0-0-多用
平行モンタージュ
追っかけ平行モンタージュ
場所的不明確性
バックライトの「起源」
父親の不在
エモーション
1910 SUNSHAINE SU
サンシャイン・スー
11.26
  1分だけ。残っているフィルムは3ショット。ある事情から家に帰ることのできない娘(マリオン・サンシャイン)が仕事を探しに出ては断られるが、ピアノの才能を認められ採用されるシーン。
■ドナルド・クリスプ 2つめのシーンの男か、、
 
1910 THE GOLDEN SUPPER
黄金の晩餐 12.17

撮影場所 コネチカット州グリニッジ(ニューヨークの近く)
ちらちら 14  252  58  13.50秒 王子のジュリアン(エドウィン・オーガスト)は海に面したテラスで恋人のカミラ(ドロシー・ウエスト)に白い花を舞い落して愛を語るがそこへやって来た従弟のライオネル(チャールズ・ウェスト)にカミラを奪われ、彼らの結婚式を見て打ちひしがれる。半年後、急死し安置されているカミラの亡骸にジュリアンがキスをするとカミラは生き返り、ジュリアンは絶望し隠遁生活をしているライオネルを探し出してカミラに引き合わせ、ひとり想い出のテラスへ行き白い花を摘む。女王→グレース・ヘンダーソン。
■字幕あり。10箇所。
●切り返し 
①序盤、城の城壁の下の石の上に座っている2人(ジュリアンとカミラ)から、それを見ているライオネルたちへと切り返される。友人たちはジュリアンたちを指差して見ていることから切り返しとしての場所的関係ははっきりしている。
②結婚式の式場へと向かう2人(友人と娘)とそれを脇道へ逸れて見ているジュリアンとのあいだが2ショット切り返されている。ジュリアンは最初のショットで「見ること」の演技をし最後のショットでは「見たこと」の演技をしていることから主観ショットとして撮られている。角度がずれているので原初的主観ショットではあるが「見ること」「見たこと」において「進化」が見られる。
■白い花は純潔のバラを意味している?
▲ジュリアンと友人たちとのあいだが何度も平行モンタージュされる。
■目を開けて死ぬ その目を閉じさせる。
■照明 遺体の安置されている部屋は暗い照明で撮られている。
■風 強い海風が吹いている。
■同じ場所は同じ構図で撮られている。 オープニングでジュリアンが娘と過ごした海辺のテラスがラストシーンでも同じ構図で撮られている。
■キャメラの横を通り過ぎる 11ショット。通り過ぎる時にキャメラに接近している。
3(原2)-0-0-多用。
切り返し
原初的主観ショット
主観ショットの進化
平行モンタージュ
照明 暗い部屋
同じ場所は同じ構図で撮られている。
1910 WHEN A MAN LOVES
男が愛する時 11年1.7
撮影場所 ニュージャージー州ウェストフィールド
ちらちら。 9  403  94  14 田舎暮らしの娘テッシー(メアリー・ピックフォード)には心を寄せ合う文学青年のジョン(チャールズ・ウェスト)がいたが、ある日やって来た父親(ジョージ・ニコルズ)の友人バッハ(デル・ヘンダーソン)に気に入られ、父親にもジョンとの交際を禁止される。思い立ったジョンはテッシ―と駆落ちの約束をし決行しようとするその時、梯子で駆け上がった2階のテッシーの部屋には車の故障と偽って宿泊を許されたバッハが泊まっていた。事情を察したバッハはテッシーを諦めて2人の駆落ちを手助けし、追って来る父親より先に2人を簡易教会へ連れて行って式を挙げさせる。2人を馬車で旅立たせた後、バッハと風変わりな青年は馬車を走らせ去ってゆく。
■字幕あり。7箇所。
■1ショット9秒 一気に⑬箇所で44というショットの切り返しが撮られ、1ショット9秒となり、「MUGGSY’S FIRST SWEETHERT(マグシーの最初の恋人)」(2010.7.2)で突入した10秒の壁を破っている。スムーズな平行モンタージュと切り返しがリズムを生みショットのスピードを早めている
●切り返し
①序盤、井戸の前のテッシーから、車でやって来たバッハへと1ショット切り返されている。場所的に明確である。
②その後、井戸の前の2人(テッシーとジョン)から父親と2人で歩いていて振り向いたバッハへと1ショット切り返されている。振り向いて見ていることから明確ではある。
③さらにその後、井戸の前の2(テッシーと父親)から車に乗って帰ってゆくバッハへとカットされているが、これはバッハの移動行為であって切り返しではない。その直後、家の中へ入ってゆくテッシーへと1ショット内側から切り返されている。
④2階の部屋の中のテッシーと窓の外から上を見上げているジョンとのあいだは、6ショット内側から切り返されそのまま終わっている。窓空間。切り返しの始点はピックフォードが服を脱ぎ始めた時。ここで窓の下からチャールズ・ウェストがピックフォードへ呼びかけその声がピックフォードに聞こえている。これが切り返しの1ショット目。この時点で2人の視線は通じていないが窓が開いているので2人のあいだはコミュニケーション空間であり切り返しが成立する(ここまの2ショットは原初的音声空間の切り返しとすることも可能)。角度的には部屋を正面から撮っているので側面の窓は見えないが、中のピックフォードの投げキッスを外のチャールズ・ウェストがキャッチしたり、アイコンタクトをしているので2人は映画的には見つめ合っているように撮られていて切り返しとしての完成度は高い。見つめ合う視線の切り返し。ピックフォードは「見ること」と「見たこと」をしているので原初的主観ショットでもあるが見つめ合う視線の切り返しを優先させて記録する。
⑤テッシーの父親に井戸の前に連れてこられたジョンから家の前の3人(テッシーとバッハと風変わりな青年)へと1ショット切り返されている。
⑥その直後、井戸の前のジョンへと1ショット切り返されている。
⑦2階のテッシーの部屋に宿泊して揺り椅子に座っているバッハと窓の下からテッシーに呼びかけるジョンとのあいだは、6ショット内側から切り返されそのまま終わっている。窓空間。
原初的音声空間の切り返し
⑧その直後、2階の窓から顔を出したバッハと窓の下を偶然通りかかった酔っぱらっている風変わりな青年とのあいだは、4ショット内側から切り返されそのまま終わっている。窓空間。4ショット目にバッハは
成瀬目線を使っている。成瀬目線の「起源」が撮られている。初めて窓から顔を出した人物と窓の外の人物との切り返しが撮られている。これも「起源」見つめ合う視線の切り返しでもある(またどちらも「見ること」と「見たこと」をしているので原初的主観ショットでもあるが見つめ合う視線の切り返しが優先する)。
⑨その直後、戻ってきて下から石を投げるジョンと2階のバッハとのあいだで、4ショット内側から切り返されている。視線は通じてはいないが、音声、気配を超えて、投げられた石を通じたコミュニケーションがなされており、ここではこれを切り返しとして検討する。窓空間。バッハはこのあと窓を閉めたのでコミュニケーション空間は一旦閉ざされるのでその後のジョンへのカットは切り返しではなく
原初的音声空間の切り返しとなる。
⑩その後、梯子を持ってきたジョンと2階のバッハとのあいだは、1ショット内側から切り返されている。窓空間。原初的音声空間の切り返し
⑪その直後、叫び、隣の部屋を鍵穴から覗いているテッシーと隣の部屋の2人とのあいだは、10ショット目に
『正常な同一画面』に収められるまで9ショット切り返されている。鍵のかけられた空間同士だがピックフォードの叫び声に紳士が聞き耳を立て、その後、鍵穴を通じて視線を交わしているので、最初の4ショットは原初的音声空間の切り返し、その後は鍵穴による切り返しとなる。
⑫その直後、家を出て行く3人とその音を聞きつけた父親とのあいだは、5ショットほど切り返されている。原初的音声空間の切り返し
⑬車の後部座席から手を振っている2人(テッシーとジョン)とそれを馬車から見ている2人(バッハと風変わりな青年)とのあいだが、3ショット切り返されそのまま終わっている。見つめ合う視線の切り返し
▲平行モンタージュ 主に近距離同士の空間でスムーズに挿入されている。
▲追っかけ平行モンタージュ 終盤では『追っかけ平行モンタージュ』。
■成瀬目線の「起源」 →切り返し⑧参照。
■母親の不在 母親について言及されていない。母親代わりの父親が娘の意にそぐわない結婚を押し付ける「或る夜の出来事(IT HAPPENED ONE NIGHT)」(1934)、「グロムダールの花嫁(Glomdalsbruden)」(1925)と同様の、母親不在の父と娘の物語が撮られている。
■ラストシーンで2人を逃がす男たちはまるで「駅馬車」(1939)のラストシーンのよう。
■服を脱ぐ ピックフォードが肩のあたりまで服を脱いで下着が見えている。
■揺り椅子 ピックフォードの部屋の揺り椅子に紳士が座ったり立ったりして揺れている。
■煙 疾走する車で地面から
■風 木の葉が風に揺れている。
■人間運動と改心 テッシーに思いを寄せているバッハは改心してテッシーとジョンの駆け落ちの手助けをしている。ここでバッハはジョンから事情を聞かされるという1クッションを置いて「そうだったのか、、」とおでこに手を当ててふらつき倒れそうになって椅子につかまっている。このような細かい演出によってグリフィスは彼の改心が衝動によることを指し示している。それ以前の彼についても悪人としては撮られてはおらず、その後の彼はよどみのない運動によって恋人たちの駆け落ちを手助けしており、改心の前と後とで人格の齟齬は生じていない。2-B
■キャメラの横を通り過ぎる 15ショット。

44(原19)-0-0-あり。
平行モンタージュ 
『追っかけ平行モンタージュ』
1ショット9秒
声による切り返し
『見つめ合う視線の切り返し』
『正常な同一画面』
平行モンタージュと切り返しによるスピード
『窓空間』
成瀬目線の「起源」
母親の不在
「駅馬車」(1939)
服を脱ぐ
揺り椅子
1910 THE LESSON
教訓 12.24

撮影場所 ニュージャージー州フォートリー
ちらちら 12  295  64  13 息子(ジョセフ・グレイビル)にあとを継がせようとしている老齢の牧師(W・クリスティー・ミラー)は息子に自分の祭服を着せてご満悦だが息子は祭服を脱ぎ捨て背広に着替え妹(ステファニー・ロングフェロー)を残して酒を飲みに行く。そうして飲み歩いているところへ父親が危篤になり、妹は兄を探しに酒場へ行くが「ここは女の来るとこじゃない」と妹を追い出そうとするバーテンを兄が殴り倒して死に至らせてしまう。兄はそのまま帰宅し父親の臨終に立ち会った後、待っていた警官たち(ジョージ・ニコルズとデル・ヘンダーソン)に逮捕される。
■字幕あり。7箇所。
▲平行モンタージュ 酒場の息子と家の父娘が10回ほど平行モンタージュされている。
●切り返し 
①兄が父親の臨終に立ち会っている時、ドアを挟んだ警官たちとのあいだは、3ショット目に同一画面に収められるまで2ショット内側から切り返されている。原初的音声空間の切り返し
②その直後、外で待っている警官たちとのあいだで合わせて3ショット内側から切り返されている。ドアが開いているので原初的二間続きの切り返し
■たばこの煙 酒場の客がことさら吐いている。
■鍵を開ける 泥酔して帰ってきた息子が自宅のドアの鍵を開けて入って来る。映画では珍しい出来事。
■椅子の上で死ぬ 父親は椅子で死ぬ。
■分離 オープニングで息子に着せた祭服はその後家の壁に掛けられ、父親臨終の際には妹がそれを兄に授け、兄が父親に渡そうとすると『お前が持っていなさい』と断られる。兄が逮捕され、祭服を医者から渡された妹はじっとそれをみつめながら映画は終わっている。父親の息子への思いがあの祭服に込められている。
■母親の不在 言及されていない。部屋にもそれらしき額、写真などは置かれていない。
■煙 たばこ
■人間運動と改心 息子は最後に改心している。最初は妹に言われて渋々作り笑いをしながら危篤の父親に接していた息子が祭服を父親に渡そうとしたところ「これはお前が着るのだ」と父親に祭服を押し返されたされた瞬間、息子の態度が変化し跪いている。これは分離物による1クッションだが1クッションとはそのクッションに驚くこと、みずからの意志に依るのではなくその「クッション」の衝動によって不可抗力で改心すること、その結果、1クッションは因果の知的な流れから逸脱し改心した当人の人格に大きな齟齬を生じることもない。それが1クッションの作用ということだろう。2-A
■キャメラの横を通り過ぎる 10ショット。
5(原5)-0-0-多用
平行モンタージュ
切り返し
椅子の上で死ぬ
分離
母親の不在
1910 WINNING BACK HIS LOVE
彼の愛を取り戻す 12.31

撮影場所 ニュージャージー州ウェストフィールド
ちらちら
ウィルフレッド・ルーカス(Wilfred Lucas)。カナダ生まれ。グリフィス「THE GREASER’S GAUNTLET(メキシコ人の手袋)」(1908.8.15) で映画デビュー。「清き心(ENOCH ARDEN)」(1911.6.17)、「最初の魅惑(THE PRIMAL CALL)」(1911.6.24)、「THE ROSE OF KENTUCKY(ケンタッキーのバラ)」(1911.8.26)、「SWORDS AND HEARTS(剣と心」(1911.9.2)、「THR TRANCEFORMATION OF MIKE(マイクの改心)」(1911/1912.1.27)などで主役を務める。脚本も書き12年以降20年間で44本を監督する。トーキーになってからもローレル&ハーディの脇役など多くの作品に出演。1940年12月13日死去。69歳。
12  295  64  13 室内劇 夫(ウィルフレッド・ルーカス)は、デートに誘ったショーガール(ヴィヴィアン・プレスコット)に誘惑され妻(ステファニー・ロングフェロー)の目を盗んで浮気をしていたが、ある日、夫の落としたショーガールからの手紙を読んだ妻は夫の浮気に気づき、友人(エドウィン・オーガスト)と2人で夫を尾行し、夫がショーガールと2人で入ったレストランのテーブルの隣の部屋で友人と酒を飲み大きな声を出して夫に聞かせそれに気づいた夫はショーガールを追い返してから妻を問い詰めていると手袋を忘れたショーガールが戻って来て彼に妻がいることを知って怒って出て行き妻たちも出て行ったあと残された夫は妻のグラスが乾いていることを知ってすべてが演技だったと悟る。
■妻のグラスに酒が注がれた形跡がないという実に細かな視覚的細部が決め手となるが、ロングショットの1シーン1ショットで撮られている初期映画の観客たちはいかに「見ること」に長けていたかの裏返しでもある。
■字幕あり。5箇所。
▲平行モンタージュ 外で浮気をしている夫と家の妻とが何度も平行モンタージュされている。
■カッティング・イン・アクション・寄る カーテンに仕切られたレストランに入って2組のカップルを同一画面に収めた後、キャメラが右側の夫のカップルへカッティング・イン・アクション気味に寄っている。その後、以下の切り返し(原初的)が始まるが、その前提としての「寄り」が撮られている。カーテンさへなければこれは近代的切り返しに接近した近代的寄りになるのだが(横長の空間なので厳密には近代的切り返しとはならない)カーテンがあるために横長の空間は仕切られて二間続きの部屋となり原初的となってしまう。
●切り返し 
①レストランでカーテンを挟んで隣同士のテーブルに座った2人(妻とその友人)と隣室の2人(夫と浮気相手)とのあいだは、正常な同一画面に挟まれ12ショット内側から切り返されている。カーテンで挟まれた空間で、妻はその友人と計って浮気をしている夫に聞こえるようにわざと大きな声を出してはしゃいでいる。その音声に反応する原初的音声空間の切り返しが9ショット、また途中で夫と妻はカーテンをずらして隣室を直接見たりもしている。これは原初的二間続きの切り返しでありそれが3ショット。
②その後、テーブルに帰って来たショーガールと3人(夫婦とその友人)とのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。ここでは視線が通じているので原初的二間続きの切り返し
■煙 たばこ
■キャメラの横を通り過ぎる 5ショット。
■人間運動と改心。夫は妻の乾いたグラスを見て策略に気づき怒って帰宅し妻と和解している。乾いたグラスという1クッションは因果的に夫の改心をもたらす出来事ではなく、また夫の人格にもさして齟齬が生じているようにも見えない。2-A
■この1910年の暮れに至って『D・W・グリフィス』の原型は切り返し以外はほぼ整いつつある
13(原13)-0-2(手紙)-多用
平行モンタージュ
カッティング・イン・アクションと寄り
切り返し 音声によるコミュニケーション
原初的二間続きの切り返し
  1910年まとめ   1910年に始まったこと
1ショット10秒
「MUGGSY’S FIRST SWEETHERT(マグシーの最初の恋人)」(2010.7.2)
1ショット9
「WHEN A MAN LOVES(男が愛する時)」(1910/1911.1.7)

カーテンと切り返し 
「WINNING BACK HIS LOVE(彼の愛を取り戻す)」(1910.12.31)
成瀬目線 
WHEN A MAN LOVES(男が愛する時)(1910/1911.1.7)
1シーン数ショット 
THE HOUSE WITH CLOSED SHUTTERS(シャッターの閉ざされた家)(1910.8.13)
視点転換
RAMONA(ラモナ)(1910.5.28)
THE CALL TO ARMS(軍隊への招集)(1910.7.30)落下を
膝上 キャメラが膝上まで接近 
「THE MODERN PRODIGAL(現代の放蕩息子)」(1910.9.3)
報われないクロス・カッティング
「FAITHFUL(誠実)」(1910.3.26)
「iN THE BORDWE STATES(境界州で」(1910.6.18)
「THE CALL TO ARMS(軍隊への招集)」(1910.7.30)
「WILFUL PEGGY(わがままペギー)」(1910.10.23)
バックライト
「THE FUGITIVE(逃亡者)」(1910.11.5)ルーシー・コットンに
アメリカの夜
「iN THE BORDWE STATES(境界州で」(1910.6.18)
俯瞰
RAMONA(ラモナ)(1910.5.28)
パンフォーカス
「RAMONA(ラモナ)」(1910.5.28)
ロケーションの縦の構図で丘から街を 
FAITHFUL(誠実)(1910.3.26)

大作志向 
「iN THE BORDWE STATES(境界州で)(1910.6.18)
「THE CALL TO ARMS(軍隊への招集)」(1910.7.30)

なめる
「THE MODERN PRODIGAL(現代の放蕩息子)」(1910.9.3) 木を
欲望の窃視 
「IN LIFE‘S CICLE(人生の輪の中で)」(1910.9.17)
フェイドイン
「AN ALCADIAN MAID(アルカディアのメイド)」(1910.8.6)ラストショットで

落下
 「THE CALL TO ARMS(軍隊への招集)(1910.7.30)

旗を持ち継ぐ 
THE HOUSE WITH CLOSED SHUTTERS(シャッターの閉ざされた家)(1910.8.13)

馬上から酒瓶を投げ捨てる 
THE HOUSE WITH CLOSED SHUTTERS(シャッターの閉ざされた家)(1910.8.13)

桶が揺れる
「A Child Of The Ghetto(ゲットーの子供)」(1910.6.6)
「AN ALCADIAN MAID(アルカディアのメイド)」(1910.8.6)
不可抗力 
THE USURER(高利貸し)(1910.8.20)

お尻を叩く 
THE MODERN PRODIGAL(現代の放蕩者)(1910.9.3)

石を投げる
 「WHEN A MAN LOVES(男が愛する時)」(1910/1911.1.7)
19010年に重ねて起きたこと
クロス・カッティング
「HER YERRIBLE ORDEAL(彼女の恐ろしい体験)」(1910.1.15)
「Rose O'Salem Town(ローズ・オ・セーラム・タウン)」(1910.10.1)
追っかけ
「THE TWO BROTHERS(2人の兄弟)」(1910.5.14)
「THE HOUSE WITH CLOSED SHUTTERS(シャッターの閉ざされた家)」(1910.8.13)
延々と1ショットで撮られるのでなくリズムよく撮られている。
追っかけ平行モンタージュ
「WHAT THE DAISY SAID(雛菊はなんといった?)」(1910.7.16)
「THE OATH AND THE MAN(誓いと男)」(1910.9.24)
「THE FUGITIVE(逃亡者)」(1910.11.5)
「WHEN A MAN LOVES(男が愛する時)」(1910/1911.1.7)

ロングショット
「FAITHFUL(誠実)」(1910.3.26)丘からの縦の構図で
「RAMONA(ラモナ)」(1910.5.28)
「THE SORROWS OF UNFAITHFUL(不誠実の悲しみ)」(1910.8.27)ラストシーンで海へ入ってゆくウォルソール

寄る・カッティング・イン・アクション
「WINNING BACK HIS LOVE(彼の愛を取り戻す)」(1910.12.31)
室内だが近代的寄りではない
見つめ合う視線の切り返し(数字は切り返しの番号)
「iN THE BORDWE STATES(境界州で」(1910.6.18)①ロケーション
「THE CALL TO ARMS(軍隊への招集)」(1910.7.30)②③窓空間での
「起源」
「WHEN A MAN LOVES(男が愛する時)」(1910/1911.1.7)④⑧窓空間、ロケーション
主観ショット
「THE SORROWS OF UNFAITHFUL(不誠実の悲しみ)」(1910.8.27)②窓空間
原初的主観ショット
「THE SORROWS OF UNFAITHFUL(不誠実の悲しみ)」(1910.8.27)①ロケーションで主観ショットが撮られた
「起源」
「THAT CHINK AT GOLDEN GULCH(黄金渓谷のあのチンク)」(1910.10.15)②ロケーション。
「THE GOLDEN SUPPER(黄金の晩餐)」(2010.12.17)②ロケーション
原初的二間続きの切り返し
「HER YERRIBLE ORDEAL(彼女の恐ろしい体験)」(1910.1.15)

「iN THE BORDWE STATES(境界州で)」(1910.6.18)
「A FLASH OF LIGHT(閃光)」(1910.7.23)
「THE USURER(高利貸し)」(1910.8.20)
「THE OATH AND THE MAN(誓いと男)」(1910.9.24)
「THE BANKER’S DAUGHTERS(銀行家の娘たち)」(1910.10.22)
「WINNING BACK HIS LOVE(彼の愛を取り戻す)」(1910.12.31)
THE END
「HER YERRIBLE ORDEAL(彼女の恐ろしい体験)」(1910.1.15)
「THE MODERN PRODIGAL(現代の放蕩息子)」(1910.9.3)
「THE OATH AND THE MAN(誓いと男)」(1910.9.24)
フェイドアウト すべてラストシーン
「FAITHFUL(誠実)」(1910.3.26)
「AN ALCADIAN MAID(アルカディアのメイド)」(1910.8.6)
「THE SORROWS OF UNFAITHFUL(不誠実の悲しみ)」(1910.8.27)
照明
「THE ROCKEY ROAD(いばらの道)」(1910.1.8)体に木の実木の影が投射
「LOVE AMONG THE ROSES(バラに囲まれた愛)」(1910.5.14)体に草木の影
「A FLASH OF LIGHT(閃光)」(1910.7.23)外から強い光が差し込む
「THE HOUSE WITH CLOSED SHUTTERS(シャッターの閉ざされた家)」(1910.8.13)
 外から光が差し込む
「THE USURER(高利貸し)」(1910.8.20)暗いオフィス、カットが変わり暗くなる
「THE FUGITIVE(逃亡者)」(1910.11.5)体に木の葉の影が投射
「THE GOLDEN SUPPER(黄金の晩餐)」(2010.12.17)暗い霊安室

「FAITHFUL(誠実)」(1910.3.26)カーテンが風に揺れている
「不変の海(The Unchanging sea)」(1910.5.7)エプロンとショールが
「THE TWO BROTHERS(2人の兄弟)」(1910.5.14)花嫁のベール
「LOVE AMONG THE ROSES(バラに囲まれた愛)」(1910.5.14)木の葉
「A Child Of The Ghetto(ゲットーの子供)」(1910.6.6)木の葉
「WHAT THE DAISY SAID(雛菊はなんといった?)」(1910.7.16)ヒナギクと木の葉が
「AN ALCADIAN MAID(アルカディアのメイド)」(1910.8.6)草木
「IN LIFE’S CICLE(人生の輪の中で)」(1910.9.17)故意に草木が揺らされている
「WILFUL PEGGY(わがままペギー)」(1910.10.23)草木
「THE MODERN PRODIGAL(現代の放蕩息子)」(1910.9.3)故意に草木が。木をなめる
「Rose O'Salem Town(ローズ・オ・セーラム・タウン)」(1910.10.1) 海風
「THE GOLDEN SUPPER(黄金の晩餐)」(2010.12.17)強い海風
「WHEN A MAN LOVES(男が愛する時)」(1910/1911.1.7)木の葉
桶が揺れる
「A Child Of The Ghetto(ゲットーの子供)」(1910.6.6)
「AN ALCADIAN MAID(アルカディアのメイド)」(1910.8.6)
分離
「THE ROCKEY ROAD(いばらの道)」(1910.1.8)ショール。写真
「iN THE BORDWE STATES(境界州で)」(1910.6.18)椅子
「WILFUL PEGGY(わがままペギー)」(1910.10.23)
「THE OATH AND THE MAN(誓いと男)」(1910.9.24)
「THE FUGITIVE(逃亡者)」(1910.11.5)軍服
「THE LESSON(教訓)」(1910.12.24)祭服
ラストシーンが歩いてゆく後ろ姿 
「WHAT THE DAISY SAID(雛菊はなんといった?)」(1910.7.16)
「THAT CHINK AT GOLDEN GULCH(黄金渓谷のあのチンク)」(1910.10.15)
帽子を脱ぐ 不意に
「RAMONA(ラモナ)」(1910.5.28)ラストシーンで義兄が
「iN THE BORDWE STATES(境界州で」(1910.6.18)少女にウォルソールが
「THE HOUSE WITH CLOSED SHUTTERS(シャッターの閉ざされた家)」(1910.8.13)
ラストシーンで
「IN LIFE’S CICLE(人生の輪の中で)」(1910.9.17)ラストシーンでウォルソール
「THE FUGITIVE(逃亡者)」(1910.11.5)ジョンが南軍兵の家を出る時
落とすこと 不意に
「不変の海(The Unchanging sea)」(1910.5.7)エプロンを放す
「LOVE AMONG THE ROSES(バラに囲まれた愛)」(1910.5.14)帽子、杖
「Over Silent Paths(静かな道を超えて)」(1910.5.21)金の入った袋
「AN ALCADIAN MAID(アルカディアのメイド)」(1910.8.6)包みを
「THE USURER(高利貸し)」(1910.8.20)自殺するウォルソールが帽子を
「IN LIFE’S CICLE(人生の輪の中で)」(1910.9.17)多用
「THE OATH AND THE MAN(誓いと男)」(1910.9.24)ナイフをウォルソールが
退出の映画史
「THE ROCKEY ROAD(いばらの道)」(1910.1.8)
「THE HOUSE WITH CLOSED SHUTTERS(シャッターの閉ざされた家)」(1910.8.13)

帰郷
AS IT IS LIFE(人生であるように)(1910 4.9) 
「不変の海(The Unchanging sea)(1910.5.7)
IN LIFES CICLE(人生の輪の中で)(1910.9.17)
THE MODERN PRODIGAL(現代の放蕩息子)(1910.9.3)
THE FUGITIVE(逃亡者)(1910.11.5)

孤児
「RAMONA(ラモナ)」(1910.5.28)
「A Child Of The Ghetto(ゲットーの子供)」(1910.6.6)父親の不在から母も死んで
母の不在 
As It Is In Life (人生であるように)(2010 4.9)言及在り、
IN LIFES CICLE(人生の輪の中で)(1910.9.17)
WHEN A MAN LOVES(男が愛する時)(1910/1911.1.7)父が伊にそぐわない結婚を娘に押し付ける
THE LESSON(教訓)(1910.12.24)

父親の不在 
「不変の海(The Unchanging sea)(1910.5.7)
「Over Silent Paths(静かな道を超えて)」(1910.5.21)
WILFUL PEGGY(わがままペギー)(1910.10.23)
Rose O'Salem Town(ローズ・オ・セーラム・タウン)(1910.10.1)
THE FUGITIVE(逃亡者)(1910.11.5)
飛び入り
 「A Child Of The Ghetto(ゲットーの子供)(1910.6.6)

前と奥とで別々の演技
「RAMONA(ラモナ)」(1910.5.28)山の上から俯瞰のパンフォーカスで村が
「iN THE BORDWE STATES(境界州で」(1910.6.18)
「AN ALCADIAN MAID(アルカディアのメイド)」(1910.8.6)
「WILFUL PEGGY(わがままペギー)」(1910.10.23)
縦の構図
「FAITHFUL(誠実)」(1910.3.26)
「THE TWO BROTHERS(2人の兄弟)」(1910.5.14) 弟が兄に撃たれる時

「RAMONA(ラモナ)」(1910.5.28)
「iN THE BORDWE STATES(境界州で)」(1910.6.18)
大作志向
「iN THE BORDWE STATES(境界州で」(1910.6.18)
「THE CALL TO ARMS(軍隊への招集)」(1910.7.30)
「WILFUL PEGGY(わがままペギー)」(1910.10.23)
砂漠のロケーション 
「Over Silent Paths(静かな道を超えて)」(1910.5.21)
山と谷 
「THAT CHINK AT GOLDEN GULCH(黄金渓谷のあのチンク)」(1910.10.15)
男装
「THE HOUSE WITH CLOSED SHUTTERS(シャッターの閉ざされた家)」(1910.8.13)
「WILFUL PEGGY(わがままペギー)」(1910.10.23)
椅子
「MUGGSY‘S FIRST SWEETHERT(マグシーの最初の恋人)」(1910.7.2)
「WILFUL PEGGY(わがままペギー)」(1910.10.23)椅子を盾にする
揺り椅子
「iN THE BORDWE STATES(境界州で」(1910.6.18)
「WHEN A MAN LOVES(男が愛する時)」(1910/1911.1.7)
椅子の上で生きる
「IN LIFE’S CICLE(人生の輪の中で)」(1910.9.17)
椅子の上で死ぬ
「THE HOUSE WITH CLOSED SHUTTERS(シャッターの閉ざされた家)」(1910.8.13)
「THE LESSON(教訓)」(1910.12.24)
目を開けて死ぬ
「THE GOLDEN SUPPER(黄金の晩餐)」(2010.12.17)
落下
「THE CALL TO ARMS(軍隊への招集)」(1910.7.30)
盲人
「A FLASH OF LIGHT(閃光)」(1910.7.23)
1910年に根付いたこと
字幕 既に1909年の後半から根付いている。
同じ場所は同じ構図で撮られている 中抜きを超えて思い出としての同じ構図もほぼ根付いている。
「AS IT IS LIFE(人生であるように)」(1910 4.9) 
「不変の海(The Unchanging sea)」(1910.5.7)
「WHAT THE DAISY SAID(雛菊はなんといった?)」(1910.7.16)
「AN ALCADIAN MAID(アルカディアのメイド)」(1910.8.6)
「THE MODERN PRODIGAL(現代の放蕩息子)」(1910.9.3)
「THAT CHINK AT GOLDEN GULCH(黄金渓谷のあのチンク)」(1910.10.15)
「THE GOLDEN SUPPER(黄金の晩餐)」(2010.12.17)
1910年に進化したこと
平行モンタージュ 
1909年にほぼ根付いている平行モンタージュは10年になるとこれなくして映画が撮れないくらいすべての作品で使われるようになりグリフィス映画の基本的方法として物語を決定づけている。
キャメラの横を通り過ぎる 
「WHAT THE DAISY SAID(雛菊はなんといった?)」(1910.7.16)では29ショット撮られているように横切る回数が増えよりキャメラに接近し始める。
1910年に根付かなかったこと
クローズアップと切り返し
 
  1911年の出来事   イタリアから二巻を超える作品、長編映画が輸入される
2月から7月頃までカリフォルニアへ移動している。
グリフィスは
最初の二巻ものの映画を撮るが長編を撮らないバイオグラフ
社は「His Trust(彼の信頼)」(19111.2)と「HIS TRUST FULFILLED(彼の信頼は満たされた)」(1911.1.21)の2本に分けて封切る。
★ハリー・ケリー、ヘンリー・B・ウォルソールの紹介でグリフィス作品に出演するようになる(「ジョン・フォードの旗の下に」78頁)。
 
1911 His Trust
彼の信頼 1.2

撮影場所 ニュージャージー州フォートリー
ちらちら 14  249  58  14 南軍のある家族と黒人召使の物語。彼の信頼、の彼とは出征した夫の黒人召使に対する信頼のこと。出征する夫(デル・ヘンダーソン)から残された妻(クレア・マクドウエル)と子供(アデル・デカルト)の面倒を見るように頼まれた黒人召使ジョージ(ウィルフレッド・ルーカス)は、夫のサーベルと共に戦死の報が届いた後、北軍兵士に略奪され放火された家の中から子供と夫の遺品のサーベルを救い出し、家を失った家族を自分の家に住まわせてから、家の前に毛布を敷いてひとりで眠る。
■字幕7箇所。
▲平行モンタージュ 戦地の夫と家の妻が4回ほど平行モンタージュされている。
■1シーン数ショット 戦場のシーンで銃を撃つ南軍兵士たちの列が角度を変えて撮られている。
●切り返し
①戦地で夫の指揮する南軍の陣地から銃を構えた北軍の陣地へと切り返され、再び南軍の陣地へと切り返される。両軍はお互いを見て向かい合っているので切り返しである。
●外側からの切り返し その直後、南軍が突撃する瞬間、夫の後方から外側からの切り返しに近いような形でカットされている。「起源」。ただ、外側からの切り返しを撮ったというよりも、マルチ・キャメラによるひとつのショットの可能性が高い。
②サーベルを壁に掛けた後、家を出て石段を越えてゆく妻と黒人召使たちと、北軍に襲われる家の前とのあいだは、3ショット目で黒人召使と北軍兵士たちが同一画面に収められるまで2ショット内側から切り返されている。家の前と石段が同じ構図で撮られ、かつ黒人召使の視線が家の前へと通じているので切り返しとなる
③その直後、家の中で掠奪をする北軍兵士たちとポーチの黒人召使とのあいだは、2ショット内側から切り返されている。場所的関係が明らかでなく原初的。
④その直後、家から出てきた北軍兵たちから、石段に倒れ込んでいる黒人召使へと切り返され、さらに家の前で放火している北軍兵たちへと切り返される。黒人召使は視線を家の方には向けてはいないが、②の黒人召使の視線によって家の前と石段の場所とは視線の通じるコミュニケーション空間であることがわかっているので、それと同じ構図で撮られた④もまた切り返しであると判断できる
⑤その後、A家の中からサーベルを取って来た黒人召使が石段の所にいる妻に渡すシーンから、B燃え盛る家へと切り返され(これは妻の主観ショットとして撮られている)、Cさらに石段の妻たちへと切り返されている。②③④⑤は家の前と石段のある空間とがそれぞれ同じ構図で切り返されている。また⑤で妻から燃えている家へと切り返されたショットは主観ショットであり、同じ構図で撮られていることと妻の視線が通じていること、妻の「見ること」が撮られ、見終わった後のCで妻が目を背けてうなだれるショットが撮られていること、それによって妻がB(燃え盛る家)を「見ていたこと」がはっきりと裏付けられていることから角度的にも視線的にも完成度の高い主観ショットとして成立している
⑥その直後、A燃え盛る家とそれを呆然と立ち尽くして見ている妻たちから、B石段の黒人召使が振り向いて家とその前に立っている妻たちの方を見るショットへと切り返され、Cさらに崩れ落ちる家を見ている妻たちへ切り返され、D再び石段の黒人へと切り返されてから、家の前で同一画面に収められている。Bにおいて黒人召使は妻と家の方向を「見ること」をしており、切り返されたCにおいて家が崩壊し、さらに切り返されたDにおいて黒人召使がそれを見たリアクションを起こしているので(「見たこと」)黒人召使がCを見ていることが裏付けられCは黒人召使によるに完成度の高い主観ショットであると判断できる
■父親代わり 黒人召使は亡き主人の代わりになっている
■分離 妻は椅子に座り夫の遺品のサーベルを抱きしめて泣く。そのサーベルを家の壁に飾り、さらに北軍兵に放火された家の中から黒人召使が命がけでそのサーベルを取りに行く。
■煙 戦地の銃。爆弾
■フェイドアウト ラストシーンが。
■大作志向 戦闘シーンの兵士の数、大砲など。
★縦の構図と前と奥で別々の演技すること 縦の構図、 前と奥で別々の演技をすることは大作志向とつながっている。
①戦場で手前に息を引き取る夫、奥に兵士や看護師たちが具体的な演技をしている。縦の構図と別々の演技は大作志向と融合している。
②ラストシーンの小屋の前でも奥で人々が具体的な演技をしている。煙も見える。
■人間運動 黒人の召使としての職業意識だけでなく、黒人召使の人間としての「約束を守ること」が撮られている。そのために火事という咄嗟の出来事をマクガフィンとして設定し、躊躇することなく娘を助け出しサーベルを取り出してくる彼の人間としての「常習性」が撮られている。こうした点においてD・W・グリフィスは職業意識をより強く意識したハワード・ホークス的「常習犯」よりもより人間的な「常習犯」を撮り続けたジョン・フォードに接近している。
■ヒーロー伝説 「彼の信頼」とは亡くなった主人と黒人召使とのプライベートな約束を守ることであり2人だけに分かり合えることとして黒人召使の孤独を際立たせている。約束とは孤独な出来事でありそれを愚鈍に守り続ける者たちはヒーローである。
■キャメラの横を通り過ぎる 10ショット。
13-1-0-あり
外側からの切り返しの「起源」
場所的不明確性
主観ショット・完成度高い
切り返しと視線のコミュニケーション
主観ショット
「常習犯」
1シーン数ショット
分離
フェイドアウト・ラストシーン
父親代わり
1911 HIS TRUST FULFILLED
彼の信頼は満たされた
1.21

撮影場所 ニュージャージー州フォートリー
ちらちら 21  175  35  12 「彼の信頼」の続編。4年後、妻は亡くなる時、亡き夫のサーベルを黒人召使ジョージに託す。彼は弁護士(ヴァーナー・クラージュ)に相談し自分の財産を孤児となった主人の娘の相続財産だと偽って提供することで娘を白人の家の養女に出す。娘は成長し(ドロシー・ウエスト)学校へ行きたがるとその学費も彼の最後の貯蓄であることを内緒にして提供する。新学期が終わって娘が帰って来ると、イギリスの従弟(ハリー・ハイド)から手紙が来る。お金を使い果たしていたジョージは彼からお金を盗もうとして咎められる(このあたりの物語がよくわからない。何故黒人召使がいとこの財布を奪おうとしたのか。おそらくお金を使い果たしていたので娘の結婚資金が必要だったのかも知れない。しかしそれを娘の結婚相手から盗むというのもわからない)。2人の結婚式のあと彼の信頼は満たされ、帰宅したジョージは壁に掛けてあるサーベルを取って握りしめると、やってきた弁護士が彼と握手する。
■字幕あり。8箇所ほど。
■長編への道
この「後編」は前編に比べると相当にレヴェルが落ちている。既に前編で語り尽くされていることを長編にするためもう一度重ねて語り直していることから物語が単調な善悪対比になり、金に汚かった弁護士が最後にいきなり善人になって黒人召使いの共感者になったり(3-B)、ヒーローであるはずの黒人召使が突然盗みを働いいたりという「初犯」の映画になり「常習犯」のみに醸し出すことのできるヒーローのエモーションが失われている。
■孤児 両親を亡くして孤児となった娘を黒人召使は見守り続ける。
▲平行モンタージュ あり
●切り返し 
①始まってすぐ、小屋の外で戦争が終わったと喜んでいる人々と小屋の中の2人(妻と娘)とのあいだは、5ショット内側から切り返されそのまま終わっている。妻は外の音声に反応しているようにも見えるので原初的音声空間の切り返し
②やって来て門の中へ入って来る2人(いとこと弁護士)とそれを玄関のドアを開けて見ている娘とのあいだが、2ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。「見たこと」は撮られているがその前の「見ること」がしっかり撮られていないので主観ショットではないとする。室内と室外の切り返し。
■フェイドアウト ラストシーン
■分離 妻は死に際に夫の遺品のサーベルを黒人召使に託す。ラストシーンで黒人召使はそのサーベルを握りしめる。
■椅子 妻は椅子の上で死んでいる。
■気づかないことにする 黒人召使が弁護士の事務所で従弟の財布を盗もうとしたとき。
■わざと気づかないことにする 従兄弟たちが家にやって来た時、娘は本を読んでいるふりをして気づかないことを装っている→「THE ROSE OF KENTUCKY(ケンタッキーのバラ)」(1911.8.26)。
■人間運動と改心 弁護
士が。
■キャメラの横を通り過ぎる 3ショット。
6(原5)-0-2(手紙)-あり。
平行モンタージュ
切り返し
ヒーロー
長編
分離
椅子
気づかないことを装う
フェイドアウト ラストシーン
1911 THE ITALIAN BARBER
イタリアの理髪師 1.14

撮影場所 ニュージャージー州フォートリー
ちらちら
マリオン・サンシャイン(Marion Sunshine)。
ケンタッキー生まれ。歌手。「SUNSHAINE SUE(サンシャイン・スー)」(1910.11.26)、「THE ROSE OF KENTUCKY(ケンタッキーのバラ)」(1911.8.26)などで大きな役を演じている。1916年まて映画に出演、その後はジーグフェルド・フォリーズなどで活躍。1963年1月25日死去。69歳。
15  233  42  10.50秒 理髪師の男(ジョセフ・グレイビル)は街角の売店の新聞売りの娘(メアリー・ピックフォード)に一目惚れして婚約するが娘のヴォードヴィルダンサーの妹(マリオン・サンシャイン)がパートナー(マック・セネット)を連れて帰って来ると理髪師は今度は妹に一目惚れしてしまい、思い余った娘は小説のヒロインを真似して拳銃自殺を図るが弾が逸れてちょうどやって来たマック・セネットのこめかみをかすめて殺しそうになり「大丈夫?」とセネットを介抱する手がセネットの手と触れ合った2人は意気投合してダンスパーティへ向かい、「手をみんなで回して!、パートナーを代えましょう!」というダンスのリズムに合わせて恋の相手を代えた4人は握手をし抱き合いダンスを始める。母親ケート・ブルース。
■字幕あり。8ショット。
■物語 最初に『パートナーを変えましょう』というダンスのルールがあり、そこに人間の実生活を無理やり従わせ、最後はみんなで踊ってハッピーエンド、というその後のハリウッドのミュージカル映画を先取りしたような逆転型のコメディが撮られている。
▲平行モンタージュ 多用。10回ちょっと。
●切り返し 
①始まってすぐ、理髪店の中の理髪師と街頭で新聞を撃っているピックフォードとのあいだは、6ショット内側から切り返されそのまま終わっている。場所的に離れているが理髪師は「見ること」をしているのでおそらくガラス越しに見ているという設定なのだろうが主観ショットとしては「見たこと」がはっきりと撮られてはいない。室内と室外の切り返し。あるいは窓空間。
②妹がマック・セネットを連れて家に帰ってきた時、隣の部屋との切り返しがあるようにも見えるが良く見るとドアが閉まっているのでこれは切り返しではなく隣室の音声、気配を感じているようでもないので同士の原初的二間続きの平行モンタージュ。どちらにしても原初的。
■評 依然として室内空間は一つの空間ごとに区切られているのでロケーションに比べて空間の分断ができずに息苦しくなる。
★メアリー・ピックフォード ピックフォードが自殺しようとして撃った弾がセネットをかすめたとき、彼女は笑っているようにしか見えない。
■人間運動 嫉妬と和解。最後はみんなが和解しているが『パートナーを変えましょう」というコメディでパートナーが変わっているので改心する映画ではない。
■キャメラの横を通り過ぎる 6ショット。
6-0-0-多用。
切り返しと「見ること」
平行モンタージュ
ミュージカルコメディ
1911 THE TWO PATHS
二つの道
1.7
  1分版しか見られない。ドロシー・バーナード。  
1911 FATE’S TURNING
運命の転換 1.28
ちらちら
ドロシー・バーナード(Dorothy Bernard)。現在の南アフリカに生まれる。1908年からグリフィス作品に出演しているとのことだが大きな役で見ることのできるのは直前の「二つの道」あたりから。以降、大きな役で出演するようになる。1955年12月15日死去。65歳。
ドナルド・クリスプ(Donald Crisp)。ロンドン生まれ。舞台監督出身。約70本で監督も手がける。グリフィス作品では「SUNSHAINE SUE(サンシャイン・スー)」(1910.11.26)の2つ目のシーンの左の男がクリスプかと思われるがこの作品あたりから脇役で見られるようになりその後も長きに亘って映画に出演する)1974年5月25日死去。92歳。
23  155  44  17  金持ちの青年(チャールズ・ウェスト)は神経衰弱の療養のためフィアンセ(ステファニー・ロングフェロー)を残して訪れたリゾート地でウェイトレス(ドロシー・バーナード)に一目惚れして恋に落ち指輪を授けて婚約するが、父親危篤の報を受けて帰宅した彼は亡き父親の事業を継いでフィアンセと結婚することになる。別れの手紙をもらったウェイトレスは青年に会いに行くがそこで婚約者がいることを知り居合わせた青年に追い出される。数か月後、結婚式の当日、式場へ赤ん坊を抱いたウェイトレスがやって来て式は大混乱に陥るが改心した青年はウェイトレスに許しを乞い牧師によって2人は結婚式を挙げるとウェイトレスは神に召される。青年の召使ドナルド・クリスプ(強面の召使)。
■字幕あり。11箇所。
▲平行モンタージュ あり。8回ほど。
●切り返し
①ウェイトレスが最初に青年の屋敷にやって来た時、客のいる応接間と屋敷に入って来たウェイトレスとのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで1ショット内側から切り返されている。
原初的二間続きの切り返し。ウェイトレスは屋敷に入って来たとき隣の部屋の空間を見ていることから視線が通じているので切り返しとなる。
②その後、帰ってゆくウェイトレスと応接間の2人(青年と婚約者)とのあいだは、1ショット内側から切り返されそのまま終わっている。
原初的二間続きの切り返し
③青年の結婚式の式場(空間A)と赤ん坊を抱いて入って来るウェイトレス(空間B)とのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで1ショット内側から切り返されている。①と同じように空間Bの参列者たちはA空間を見ていることから空間ABは通じている。
 原初的二間続きの切り返し
■椅子
①生まれた子供を椅子の上で抱いている→「東への道(WAY DOWN EAST)」(1920.9.3)
②ウェイトレスは椅子の上で息絶えている。
■退出の映画史 ラストシーンでウェイトレスが息を引き取ると、客たちはみな背中を向ける。
■人間運動と改心 男は椅子の上の女と赤ん坊を15秒超まじまじと見つめたあと改心している。善悪で知的に判断したのではなく『まじまじと見つめること』という過剰による衝動がここに撮られている。2-B
■キャメラの横を通り過ぎる 3ショット。
3(原3)-0-2(手紙)-あり。
平行モンタージュ
切り返し
椅子の上で死ぬ
1911 われわれはわれらの老人と何をすべきか
WHST SHALL WE DO WITH OUR OLD? 2.18

撮影場所 ニュージャージー州フォートリー
ちらちら 26  137  32  14 『ニューヨークで現在起こっている出来事について』と字幕が入る。病気の妻(クレア・マクドウエル)を抱えた老大工(W・クリスティー・ミラー)の職場では高齢の者たちが次々と若い者たちに取って代わられて解雇され老大工もまた解雇されて新しい仕事もなく貯金も尽きて食べ物を盗みに入ったところを逮捕されて留置され判事(ジョージ・ニコルズ)の計らいで瀕死の妻の元へ駆けつけるが既に妻は死んいでいた。廷吏ドナルド・クリスプ。
■字幕9箇所。
★膝上 人物の膝上までキャメラが接近している。
★平行モンタージュ あり。5回ほど。
●切り返し なし。
■社会問題を扱うと細部が乏しくなる。これは偶然か必然か。
■人間運動
■キャメラの横を通り過ぎる 6ショット。
0-0-0-あり
平行モンタージュ
膝上
1911 THE LILY OF TENEMENTS
長屋のユリ 3.4
  1分半のみ 貧しい長屋でミシン仕事をしながら父(W・クリスティー・ミラー)と母(クララ・T・ブレイシー)を養っている娘(ドロシー・ウエスト)は、大家(ジョージ・ニコルズ)から自分と付き合えば家賃のことは忘れてやると言われる。
■切り返し 原初的音声空間の切り返し』があるようにも見える。
■煙 たばこ
 
1911 Heart Beats of Long Ago
昔の心の鼓動 2.11
ちらちら 11  321  75  14 コスチューム・プレイ。
恋人(ウィルフレッド・ルーカス)の家と敵対する家の娘(ドロシー・ウエスト)は密かに父親(ジョージ・ニコルズ)の紋章付きの印章リング(その家の者と証明する指輪・通行証のようなもの)を抜き取りそれをバルコニーから恋人に投げて恋人を屋敷の中に招き入れて逢引きをするが父親の連れてきた貴族(フランシス・J・グランドン)と無理矢理婚約させられる。恋人は危うく見つかりそうになり咄嗟に彼を密閉された個室に隠したところ、彼の落とした帽子でそれに気づいた娘の婚約者は娘の父親が外出しているのをいいことに娘から密室の鍵を奪い娘の恋人を窒息させようとするがそこへ父親が帰って来て密室の扉を開ける。
■字幕あり。9箇所。
▲平行モンタージュ 密室と隣室とが交互に編集されている。そこにいると窒息するような密室なので音も聞こえず気配も感じられないことから原初的二間続きの平行モンタージュとなる。ただし娘と貴族の男は知っていて気配を感じているとするなら原初的音声空間の切り返し。どちらにしても原初的。
●切り返し 
①この作品は二間続きの部屋と密室の3つの空間のみによって撮られている。その3部屋は正面から撮られ、二間続きの部屋は仕切りが良く見えず、カーテンによって仕切られているようだがその隙間から人物たちは隣室が見えているのか、それとも見えてはいないが気配を感じているのか、それとも声が聞こえるのか、どちらにしても隣室とのコミュニケーションの態様が不明確なこの切り返し原初的であり、ここでは音声、気配における原初的切り返しが23ショットとして検討する(原初的音声空間の切り返し原初的二間続きの切り返し。そもそも何故これをドアではなくカーテンにしたのか。「WINNING BACK HIS LOVE(彼の愛を取り戻す)」(1910.12.31)でも検討したがドアに比べてカーテンの方が見る、聞く、ことにおいて柔軟性があるからかも知れない。だが二間続きの部屋と視線の関係の困惑において変わることはない。
■気づかないことにする つけている指輪を抜き取られても気づかない。『気づかないことにする』は未だ大きな威力を保っている。
■分離  恋人の落とした帽子が証拠となる。
■演技 コスチューム・プレイになるといつものように演技はより大袈裟になる。
■室内劇 3つの部屋だけで撮られている。
■母親の不在 ここでも母親代わりの父親が娘に結婚を押し付けている。→「WHEN A MAN LOVES(男が愛する時)」(1910/1911.1.7)、
■人間運動
■キャメラの横を通り過ぎる 1ショット。
23(原23)-0-0-あり(原)。
3つの部屋のみ
原初的二間続きの平行モンタージュ
原初的切り返し
室内劇
1911 Fisher Folks
漁師たち 2.18

撮影場所 カリフォルニア州サンタモニカ
  1分のみ。
ウィルフレッド・ルーカス(猟師)、リンダ・アーヴィドソン(足の不自由な花売り娘)、ヴィヴィアン・プレスコット(売春婦)。売春婦に花をプレゼントしてからかわれた猟師は花売り娘をエスコートして売春婦に焼きもちを焼かせる。
■落とすこと 花売り娘は猟師に誘われ驚いて花の入った籠を落とす。
■ロケーション 砂浜
■キャメラの横を通り過ぎる 1ショット。
落とすこと
1911  HIS DAUGHTER
彼の娘 2.25

撮影場所 カリフォルニア州シエラマドレ 
ちらちら 13  287  67  14 14分途中でフィルムが切れている。
青年ウィリアム(エドウィン・オーガスト)は父親(W・クリスティー・ミラー)と恋人メアリー(フローレンス・バーカー)に別れを告げて学業のために旅立つ。一方、メアリーは飲んだくれで暴れ者の父親(ジョージ・ニコルズ)に困りながらも気の合うウィリアムの父親に息子からの手紙と写真を届けるが、ウィリアムの父親は自慢の息子から送られてきた写真を見せようと村人を追いかけ転んで怪我をしたところをメアリーに助けられ彼女の家で介抱される。メアリーはウィリアムの父親の頼みで彼の家から息子の将来のために貯めておいた金貨を持ってくるように頼まれるがその帰り道、金貨の袋を見たメアリーの父親は怪しんで娘を尾行しそれが金貨だとわかると変装して自分の家に侵入し金貨を盗もうとする。しかし娘に発見され、銃を突きつけられて警察へ連行される途中、帰って来たウィリアムに覆面をはがされて正体が明かされると父親は逃がされる。ショックから家を出たメアリーをウィリアムは追いかける。
■グリフィスはカリフォルニアへ来ている。
■字幕あり。12箇所。
■バックライト 恋人の手紙をその父親に持って行った時、フローレンス・バーカーのふわふわの髪に自然光だがバックライトが当たっている。
▲平行モンタージュ 多用。14回程度。
●切り返し 
①手紙を持って来た娘と家の中の青年の父親とのあいだは、3ショット目で同一画面に収められるまで2ショット内側から切り返されている。娘をドアの閉まった家の外から呼びかけており青年の父親はその声に呼応してドアを開けていることから原初的音声空間の切り返し
②青年の父親が息子の写真を通りがかりの村人に見せようとする時、家の外を歩いている村人とそれを開け放たれている窓から見ている父親とのあいだが、3ショット内側から切り返されている。窓空間の切り返し。レースのカーテンが風に揺れているので窓が開いている。体裁としては父親の「見ること」が撮られているので主観ショット(切り返し)だが「見たこと」が撮られていないのでここでは切り返しとしておく。
③怪我をして家の前に置いてある椅子に倒れ込んだ青年の父親とそれを家の中から見ている娘とのあいだは、2ショット目で同一画面に収められるまで1ショット内側から切り返されている。室内と室外の切り返し。娘は「見ること」をしているが「見たこと」をしていないので(或いは「見たこと」しかしていないので)ここでは主観ショットではなく切り返しとしておく。
④家に持ってきた金貨を青年の父親に渡そうとしている娘とそれを窓の外から見ている娘の父親とのあいだが1ショット切り返されている。窓空間の「切り返し」。どこから見ているのか場所的に不明確だが主観ショットの体裁で撮られている。だが「見たこと」しか撮られていないので主観ショットとはしない。
⑤その後、隣の部屋のベッドの下に金貨を隠している娘とそれを窓の外から見ている娘の父親とのあいだが字幕を挟んで3ショット切り返されている。窓空間の切り返し。父親の「見ること」と「見たこと」が撮られているので原初的主観ショットである。
⑥その後、変装して窓をこじ開けようとしている父親と、その物音に気づいて拳銃を手にしてドアを開ける娘とのあいだは、12ショット目に同一画面に収められるまで11ショット内側から切り返されている。窓の外の父親とその窓のある部屋のさらに隣にいる娘との、また二間続きの部屋のあいだでの「音声」ないし「気配」による原初的音声空間の切り返し
⑦父親に銃を突き付けている娘とやって来た青年とのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで1ショット内側から切り返されている。
⑧大声で娘を呼ぶ青年と、走って逃げる娘とのあいだは、3ショット目に同一画面に収められるまで2ショット内側から切り返されている。原初的音声空間の切り返し
■評 原初的な音声による切り返しに混じって②③④⑤⑦において撮られた「見ること」による「切り返し」も増えてきている。
■膝上
■窓空間の切り返しが7ショット。
■照明 地面に娘の影がはっきり映る。体に木の葉の影が投射される。
■風に揺れるカーテンによって視界が開け放たれていることを示している。
■なめる 風に揺れる木の葉を
■マクガフィン 娘の家に隠された金貨を娘の父親が盗もうとして娘に見つかる、という物語を撮るための、息子から送られてきた写真→見せようと村人を追いかけ転ぶ→娘の家で介抱される、、というマクガフィンが設定されている。
■変装すること 娘の父親が
■母親の不在 青年とその恋人のどちらにも母親がいない。
■人間運動
■キャメラの横を通り過ぎる 13ショット。接近しているショットもあり。
24(原22)-0-1(手紙)-多用
バックライト
平行モンタージュ 多用
原初的主観ショット
窓空間7ショット
「見ること」による切り返し
カーテンが風に揺れている
変装する
膝上
なめる
地面に娘の影
1911 女の叫び
LONEDELE OPERATOR 3.25
撮影場所 カリフォルニア州イングルウッド
ちらちら
脚本マック・セネット。
9  389  107  16.30秒 原題は「ロンデール駅の通信技師」。脚本マック・セネット。
急病の父親(ジョージ・ニコルズ)に代わってその娘(ブランチ・スウィート)がロンテール駅の通信技師の任務を引き継ぎ、汽車で運ばれてきた鉱山会社の給料を金庫に保管したところそれを狙った強盗2人組(デル・ヘンダーソンとジョセフ・グレイビル)に襲われ、通信室に立て籠もって電信で近くの駅に助けを求めるが、とうとうドアを破られると娘は電気を消してスパナを拳銃に見せて2人組を脅かし、その隙に恋人の機関士(フランシス・J・グランドン)が汽車を飛ばして救出に駆けつける。
■字幕あり。6箇所。
近代的寄り「起源」
強盗に気づいたブランチ・スウィートが椅子に座り電信で助けを呼ぶ瞬間、キャメラが彼女のウエスト・ショットまで寄っている。動作が少し重複しているのでカッティング・イン・アクション気味に撮られている。『近代的切り返し』とは室内の一角にキャメラが入り込みそれによって余った空間へとキャメラを切り返すことであるが『近代的寄り』とは近代的切り返しをおこなう前提としての室内空間における「寄り」でありそれによって同じ一室に切り返すことのできる空間を作っていることが条件となる。このブランチ・スウィートへの寄りはほぼ1室の左半分へと大きく寄っておりそのまま右の余った空間へと切り返すことが可能であることから近代的寄りとなる。このウエスト・ショットの近代的寄りは全部で9ショット撮られている。↓
■ウエスト・ショット 通信室で仕事をし、その後、救援を呼び、そのまま椅子の上で失神するブランチ・スウィートのウエスト・ショットが合わせて9ショット撮られている。被写体へのキャメラの距離が接近し始めている
●切り返し
①駅の通信室のブランチ・スウィートが出発する汽車の運転をしている恋人フランシス・J・グランドンと窓越しに手を振り合うシーンにおける2人のあいだは、4ショット内側から切り返されそのまま終わっている。女が投げキッスをし運転士もそれに呼応するように手を振っていることから2人はお互いを見ているという設定になっている。窓空間。見つめ合う視線の切り返し。側面の窓が画面の中に撮られておらず、汽車は出発していくのに女の視線は一定でイマジナリーラインは合っていない
②汽車から降りて柱の影に隠れる2人組から、汽車から荷物を受け取っている娘へと1ショット切り返されそのまま終わっている。男たちは視線を娘へ向けている。
③窓の外で通信室の中の様子をうかがう強盗2人組と彼らを見つけて驚くスウィートとのあいだは、4ショット内側から切り返されそのまま終わっている。窓空間。
見つめ合う視線の切り返し今度は二人組の側から窓が映っているものの中からは窓はさきほどと同じように映ってはおらず、外で身をかがめている2人組と中から上の方を見ている女とはイマジナリーラインは合っていない
イマジナリーライン問題 イマジナリーラインは視線と視線が交差して始めて問題となるのであり、ここでイマジナリーラインがずれている、ということは、ずれていることがわかるくらい視線がはっきりしているということを差している。切り返し①と③ははっきりと見つめ合った視線ではないことから未だイマジナリーラインの原初的段階であるものの、グリフィスの映画が変化していることを示唆している
④その後、ドアの鍵を閉める娘と外からドアを開けようとする2人組とのあいだが、3ショット内側から切り返されそのまま終わっている。
 ドアは遮断され音声による切り返しゆえに原初的音声空間の切り返し
⑤汽車で出発した恋人とそれを見送る電信技士とのあいだは、1ショット内側から切り返されそのまま終わっている。
⑥その後、通信室に立て籠もったブランチ・スウィートとドアを破ろうとする2人組とのあいだが、合わせて5ショット内側から切り返されている。これも音声と気配、そして鍵穴からの視線によるコミュニケーション空間であり、鍵穴から見ている最初の切り返しは原初的二間続きの切り返し(「見ること」しか撮られていないので主観ショットではない)、それ以外の4ショットは原初的音声空間の切り返しとなる。さらにこのケースでは二つの空間における切り返しのあいだに救出へと向かう恋人の汽車のショットがクロス・カッティングで挿入されていることから、切り返しの数をどうやって計算するか問題となる。空間ABと救出のショットを●とし、仮にABA●BAB●と編集されている場合、●を無視すれば切り返しの数はAを起点に5となり、●で一旦切り返しが途切れるとした場合には切り返しの数はAを起点に4となる。現時点では●で切り返しが途切れるとして計算しているので⑥の切り返しは5となる
●1シーン数ショット→これについては「ドリーの冒険(The Adventures of Dollie)」(1908.7.18)で検討している。
①汽車で恋人が救援に向かう時、疾走する汽車の外景と機関室で恋人が運転しているシーンとが撮られている。走っている汽車の同一空間がアングルを変えて撮られている。
▲平行モンタージュ 30回程度。
▲クロス・カッティング 平行モンタージュがそのまま救出のクロス・カッティングへ変化している。
▲電信と平行モンタージュ 電話の通話と同じく時系列なので平行モンタージュではない。
■9秒 1ショット10秒の壁を破ったのは「WHEN A MAN LOVES(男が愛する時)」(1910/1911.1.7)が最初であり、そこでは『スムーズな平行モンタージュと切り返しがリズムを生みショットのスピードを早めてている。』と書いたが、この作品ではそれに加えて1シーンを分断して複数のショットで撮ることでさらにリズムを加速させそれを強盗、娘、救出組、という3者を高速でクロス・カッティングさせることによりサスペンスを高揚させている。リリアン・ギッシュはその自伝で、クロス・カッティングのショット毎に長さを短くしたこと、前のショットよりも寄った短く意味のある一連のショットを畳みかけたこと、機関車の煙突、汽笛、車輪などを連続させたことで機関車が少女を助けるためにひた走る生き物のように見えたこと、などを指摘しているが(『リリアン・ギッシュ自伝』80頁)、終盤の早いリズムが近景(機関室のショットも近い)、1シーン数ショット、高速のクロス・カッティング等によるものであることを見事に分析している。
■膝上
■2人ウエスト・ショット 序盤、ブランチ・スウィートと恋人の2人が
■原初的寄る・引く  スパナの生々しいクローズアップが撮られている。ただ、正面からポーズを取って別の場所で撮られているように見えるのてせ原初的寄る・引くとする。
■俯瞰 汽車の機関室を俯瞰気味に撮っている。
■照明 カットを割ってから電気をつけたり消したりしている。
■線路 線路が遥か彼方の水平線(消失点)まで伸びている
■立て籠もること ブランチ・スウィートは通信室に立て籠もり助けを呼ぶ
■握手する 恋人同士が
■なめる 序盤、風に揺れる木々を手前にナメている
■煙 汽車の蒸気が上から横から出ている。たばこの煙。
■わざと気づかないことにする ブランチ・スウィートが恋人と初めて会うショットで冊子を読んでいるふりをしている→「THE ROSE OF KENTUCKY(ケンタッキーのバラ)」(1911.8.26)
■母親の不在 ブランチ・スウィートには母親がいない。
■人間運動
■キャメラの横を通り過ぎる 13ショット。人は静止はしていないがクローズアップに近い近景まで接近してきている。汽車も何度も。
■評 一気に進化の壁を破っている。だがこういうことがそのまま続くことはなく、後退してはまた進み、を繰り返すことになる。
18(原8)-0-3(手紙2、スパナ1)-多用。
近代的寄りの「起源」
切り返し
イマジナリーラインのずれ
平行モンタージュからクロス・カッティングへ
1シーン数ショット
ウエスト・ショット
2人ウエスト・ショット
引く・寄る→カッティング・イン・アクション
原初的寄る・引く
照明 電気を消す、つける
俯瞰
母親の不在
クロス・カッティング
1911 清き心
ENOCH ARDEN 6.17
(あるいは6月12日と16日に前後編を分けて封切)
撮影場所 カリフォルニア州サンタモニカ
ちらちら
リンダ・アーヴィドソンは「LINES OF WHITE ON A SULLEN SEA(暗い海の白い線)」(1909.10.30)、「不変の海(The Unchanging sea)」」(1910.5.7)、そしてこの作品と、浜辺で夫を待つ3部作にすべて妻役で出演している。待つ女の「起源」ともいうべき女性。
17  215  118  33 前後編に分けて封切られている。港の猟師イーノック・アーデン(ウィルフレッド・ルーカス)は恋のライバルのフィリップ(フランシス・J・グランドン)から娘アニー(リンダ・アーヴィドソン)を勝ち取り結婚して3人の子供を儲けるが貧しい彼は財産を得るため船で旅に出ることにする。アニーは生まれたばかりの子供の髪の毛をロケットに入れて夫に託し妻たちに見送られて夫は出航する。アニーはその後も子供を連れて浜で夫の帰りを待ち続けるが同じ頃、船は嵐で難破し夫は波に飲み込まれてそのまま無人島に流れつき船員たちも餓死で死んでゆく。時は流れ、子供たちは大きくなり(息子ロバート・ハーロン娘フローレンス・ラ・バディ)、かつての恋のライバルは、未だイーノックへの思いを断ち切れないアニーと子供たちに尽くし続けアニーは彼と再婚し子供が生まれる。その頃、仲間の船に救出されて帰って来たイーノックは自宅へ急ぐが誰もおらず入った宿屋の女将(グレース・ヘンダーソン)の噂話を聞いて彼らの新居を窓から覗くと、どうか彼女に知らせないように私に力をお与えくださいと神に祈り、宿屋のベッドで息を引き取る
■字幕あり。24箇所。
2人クローズアップ 船旅に出る夫の首に妻が産まれたばかりの子供の巻き毛を入れたペンダントを掛けるときに2人並んでバスト・ショットに近いクローズアップに字幕を挟んで寄っている。1人ではなく2人を同時にクローズアップで撮る、これを今後『2人クローズアップ』として検討する。
★寄る・引く 『2人クローズアップ』と連動して
古典的デクパージュ的人物配置
序盤、イーノックとアニーが結婚して新居にやって来て椅子に座っているイーノックと彼に向かって立っているアニーの構図は『古典的デクパージュ的人物配置』の原型であり、ここから外側から切り返されるということはないにしても、 人と人とがひとつの部屋で縦の構図で向かい合うという立体的なショットが撮られている。これまでも人と人とが縦の構図で重なり合うショットは撮られているが2人の人物に特化されて縦に広げられたショットはこれが初めてとなる起源」。
■膝上 膝よりももう少し寄り気味のショットもあり。
●切り返し
①浜辺で夫を見送っている妻たちとそれを見ているフィリップとのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで1ショット内側から切り返されている。
②小舟で無人島にやって来た者たちとそれを木陰で見ている夫とのあいだは、4ショット目に同一画面に収められるまで3ショット内側から切り返されている。「見ること」と「見たこと」が撮られているので主観ショット
③新しい家で赤ん坊をあやしている家族たちとそれを窓の外から見ている夫とのあいだは、11ショット内側から切り返されそのまま終わっている。窓空間。「見ること」と「見たこと」が撮られている角度がずれているので原初的主観ショット
■評 ①~③はすべて一方通行ながら視線によるコミュニケーションが撮られている。
■引く
①2人クローズアップのあとキャメラが引かれている。
②小舟で大きな船に乗り込み手を振る夫から、望遠鏡でそれを見ている妻と子供たちの後ろ姿を手前に取り込んだ縦の構図へ大きく引いている。
■寄る 窓から妻たちを見ているイーノックへ字幕を挟んで寄っている。
■引く→カッティング・イン・アクション
終盤、窓の外から新しい家族を見ていた夫が立ち上がる時、動作が重複していないのでカッティング・イン・アクションではないが、立つ→引く、という典型的カッティング・イン・アクションの原初的段階が撮られている
■省略 夫が旅立つ前、妻は産まれたばかりの赤ん坊の巻き毛をペンダントに入れて夫に託している。だが大きくなった子供たちの中に成長した赤ん坊はいない。おそらく亡くなったのだろうがそれについては省略されている。
■エプロン 
①オープニングでリンダ・アーヴィドソンのエプロンが海風に揺れている。
②夫を見送る時、妻は涙で曇った望遠鏡をエプロンで拭いてからまた見ている。涙を直接撮るのではなエプロンでく望遠鏡のレンズを拭くことでそれを見せている。
■見ること 見えなくなるまで見続けること
『消えゆく帆の最後のかけらが見えなくなるまで』という字幕が入るように、船で出発する夫の船が見えなくなるまで妻は見続けている。その後も2つのシーンにおいて妻は遠く彼方の海を望遠鏡で見続けている。→ジョン・フォード「アパッチ砦(FORT APACHE)」(1948)で出征する夫たちをシャーリー・テンプル、アンナ・リー、アイリーン・リッチの三人の女たちが見えなくなるまでずっと見続けている。
■後ろ姿 夫を見送る砂浜のシーンではエプロンをした妻の後姿、背中からのみ撮られている。望遠鏡で海の彼方を見ている妻は3回撮られているがいずれも背中からのみ撮られている。技術よりも厚い壁、それが倫理なのかも知れない。
■影 夫を見送った後、路地の屋根の影が妻の背中に映っている。
■風に揺れるカーテン ①↑の後、家の窓のカーテンが風に揺れている。
②終盤、ベッドに横たえた夫の横にある窓のカーテンが大きく風に揺れている。
■照明 ラストシーンの宿屋のベッドのイーノックに窓の外から光が差し込んでいる。
■煙 砕ける波 メロドラマ的細部。
■フェイドアウト 波打ち際で子供を抱いた妻のショット(おそらく前編のラストシーン)とラストシーン。
▲平行モンタージュ 妻と無人島の夫、その他で36回平行モンタージュされている。
■同じ場所は同じ構図で撮られている  特に最初の家。
■目を開けて死ぬ
■人間運動と身を引くこと
「THE VIOLIN MAKER OF CREMONA(クレモナのバイオリン製作者)」(1909.6.5)、「THE WAY OF MAN(人の道)」(1909.6.26)、などによって『身を引くこと』が撮られている。ここでもイノック・アーデンは身を引いているが、それは彼が窓から再婚した妻の家庭を盗み見したことによっている。そのシーンは11ショット内側から切り返されること=『まじまじと見つめること』=という過剰な細部によって撮られることで彼の改心は知的で因果的な出来事ではなく衝動によるものとして現れている。
■キャメラの横を通り過ぎる 13ショット。
15(原11)-0-1(2人クローズアップ)-多用
古典的デクパージュ的人物配置
2人クローズアップ
寄る・引く
切り返し
引く
原初的カッティング・イン・アクション
エプロン
見ること→「アパッチ砦」
後ろ姿
フェイドアウト
照明 窓の外から光
1911 最初の魅惑
THE PRIMAL CALL
 6/24
撮影場所 カリフォルニア州レドンドビーチ
ちらちら 13  282  61  13 債権者(デル・ヘンダーソン)への借金に追われた良家の女(グレース・ヘンダーソン)は友人(ジョン・T・ディロン)の連れてきた富豪(ジョセフ・グレイビル)を自分の娘(クレア・マクドウエル)と結婚させようとして婚約させる。夏になり、みんなで海の避暑地を訪れた娘は傲慢な猟師(ウィルフレッド・ルーカス)に出会い温室育ちの娘はこの野生の男に魅入られ恋に落ちる。遅れて海へやって来た婚約者と歩いている娘を見た猟師は婚約者を殴り倒して娘をさらい、さらに娘の作った弁当を盗み食いしている牧師(W・クリスティー・ミラー)を舟にさらって結婚式を挙げる。
■字幕あり。9箇所。
●切り返し
①序盤、ガーデンパーティで娘と2人で話している母親と、2人(富豪と友人)とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。
視線が通じている。
②その後、富豪と2人で庭のベンチに座った娘と、それを見ている母親とのあいだは、同一画面に挟まれた2ショット内側から切り返されている。視線が通じている。
③避暑地で娘が猟師と初めて出会った直後、木陰へ移動した猟師と娘たちとのあいだは、最初に同一画面に収められた後、3ショット内側から切り返されそのまま終わっている。最初の2ショットの切り返しで2人は見つめ合っているので見つめ合う視線の切り返しとなる。
④浜辺で猟師に靴を履かせさせたあと、去って行く娘と彼女を追いかけて来る猟師とのあいだは、同一画面に挟まれた1ショット内側から切り返されている。
⑤富豪にエスコートされて海辺の回廊を歩いている娘と船を出しながらそれを見ている猟師とのあいだは、1ショット内側から切り返されそのまま終わっている。場所的関係が不確かではある。
⑥婚約者を殴って娘をさらったあと、走り出してから振り向いた猟師と娘とのあいだは、同一画面に挟まれた3ショット内側から切り返されている。やや斜めから撮られた猟師のバスト・ショットと娘のウエスト・ショットとのあいだの極めてスピーディな切り返しは見つめ合いによって高揚するエモーションがモーションピクチャーに刻まれた決定的瞬間である(見つめ合う視線の切り返し)
⑦その後、船で逃げてゆく漁師たちと、それを見ている母親たちとのあいだは、1ショット内側から切り返されそのまま終わっている。
★膝上
■ウエスト・ショットあり
■バスト・ショット 切り返し⑥の猟師がバスト・ショットで撮られている。
■追っかけ 走ってはいないが猟師が2人(娘と富豪)を尾行していくシーンが1ショットで2回撮られている。だが最早これは「追っかけ」ではない。
▲平行モンタージュ 6回程度。
■鏡 縦の構図で手前の母娘が奥の鏡に映っている。

■THE END と入る
■人間運動 衝動によって野性的な男に惹かれてゆく女が撮られている。
■キャメラの横を通り過ぎる 18ショット。
13-0-0-あり。
見つめ合う視線の切り返し
鏡と縦の構図
ウエスト・ショット
バスト・ショット
THE END
追っかけ
1911 THE INDIAN BROTHERS
インディアンの兄弟
7.13

撮影場所 カリフォルニア州シエラマドレ、テネシー州ルックアウトマウンテン
ちらちら
15  240  56  14  酋長の兄弟(ウィルフレッド・ルーカス)が狩りに出ている留守に部族に入れてくれとやって来たよそ者のインディアン(ガイ・ヘドランド)は酋長(フランク・オッパーマン)に「女装しろ」と侮辱されて酋長を刺し殺し、逃げる途中で別のインディアン部族の馬を盗んで捕らえられるが、追ってきた酋長の兄弟はその部族の者と決闘してよそ者を解放させ、喜んだよそ者を酋長の葬儀の場に連れて行き刺し殺す。執拗なまでの復讐の物語が撮られている。
■字幕あり。4箇所。
▲平行モンタージュ 15回ほど。
追っかけ平行モンタージュ多用。
①最初、草むらの中を逃げるよそ者と負う酋長の兄弟とのあいだは「追っかけ」のように走ってはいないが1ショットではなくカットを割って平行モンタージュとして撮られている(追っかけ平行モンタージュ)。
②その後、馬で逃げるよそ者とそれを馬で追うインディアンと酋長の兄弟とのあいだは最初は追っかけ平行モンタージュで撮られ距離が縮まって来ると次第に「追っかけ」へと移行していく。その「追っかけ」も「BALKED AT THE ALTER(祭壇で思い止まる)」(1908.8.29)のような延々と1ショットで撮られるのではなくスピーディに撮られている。
▲「追っかけ」から追っかけ平行モンタージュへ
モーションピクチャーにおける追走劇は初期映画の「追っかけ」から次第に追っかけ平行モンタージュへと移行してゆく。その進化の過程がこの時期に見られている
●切り返し
①焚火の煙でのろしを上げる部族の者たちとそれを遠くの山から見ている酋長の兄弟とのあいだは、8ショット目に同一画面に収められるまで7ショット内側から切り返されている。人と人とが視認できる距離ではないが煙によって視認の範囲を広げそれを「見ること」によってコミュニケーションしている。
②追って来る酋長の兄弟と地面に耳を当ててその気配を感じ取っているよそ者とのあいだは、1ショット内側から切り返されそのまま終わっている。原初的音声空間の切り返し
③逃げ疲れて地面に横たえたよそ者と追ってきた酋長の兄弟とのあいだは、2ショット目で同一画面に収められるまで1ショット内側から切り返されている(酋長の兄弟は視線で確認している)。また、その同一画面は酋長の兄弟が画面の中に入って来た時よそ者は既に画面の外へ消えていることから持続による同一存在の錯覚である。ここだけ見れば「追っかけ」の過程の1ショットに過ぎないことから持続による同一存在の錯覚の起源「追っかけ」かも知れない、という仮説を今後の検討課題とする。
④馬を盗まれた部族の者たちと斜面を登って追ってきた酋長の兄弟とのあいだは、4ショット目に同一画面に収められるまで3ショット内側から切り返されている。
■順手 みんなナイフを順手に握っている。
■這うこと よそ者が酋長を殺す時、這って接近している。這うことの「起源」
■風 草木が
■煙 焚火ののろし
■ロケーション 山岳地帯
■人間運動 復讐。
■キャメラの横を通り過ぎる 21ショット
12(原1)-0-0-多用
追っかけ平行モンタージュの多用
煙に依るコミュニケーション範囲の拡大
持続による同一存在の錯覚の「起源」と「追っかけ」
這うことの「起源」
1911 FIGHTING BLOOD
戦う血 7.1

撮影場所 カリフォルニア州シエラマドレ、テネシー州ルックアウトマウンテン
ロバート・ハーロン(Robert Harron)。アイルランド系のカトリック教徒の9人兄弟の長男としてニューヨークに生まれる。1908年頃バイオグラフ社に清掃員として入りエキストラでの出演の後、D・W・グリフィスに見初められ「A CALAMITOUS ELOPEMENT(悲惨な駆け落ち)」(1908)の法廷の廷吏役で映画デビュー。しばらく小さい役が続いていたが「清き心(ENOCH ARDEN)」(1911.6.17)の後編では成長した息子役に抜擢されこの作品では主役を演じている。この頃から大きな役をもらうようになりその後は長編「世界の心(HEARTS OF THE WORLD)」(1918)で主役を勤めるなどグリフィス組の中心として活躍。1920年、事故とも自殺とも言われる拳銃による傷がもとで一度は回復の兆しを見せるものの4日後の9月5日に死去。27歳。この「戦う血」ではロバート・ハーロンの見事な手綱さばきをスピーディな切り返しによって見ることができる。 6.7  540  99  11 9人の子供を持つ南軍の退役軍人(ジョージ・ニコルズ)は家族に厳しい軍事訓練を日々課し、恋人(フローレンス・ラ・バディ)に会いに行こうとする息子(ロバート・ハーロン)を殴りつけて勘当したところ、家族の住む一軒家がインディアンに襲われ、危機一髪のところを勘当した息子が呼んだ救援部隊に助けられる。
■字幕あり。13ショット。
■1ショット6.7秒 「WHEN A MAN LOVES(男が愛する時)」(1910/1911.1.7)「女の叫び(LONEDELE OPERATOR)」(1911.3.15)で1ショット10秒の壁を破ったがここでは6.7秒と短縮されている。平行モンタージュ、クロス・カッティングによるスピードに加えて26回にも及ぶ切り返し、寄る、引くのカッティングが映画にスピードをもたらしている。
■ヒーロー伝説 →ロバート・ハーロンは父親に勘当された「すねに傷を持つ」男であり彼が家族を助けることでヒーローとなるヒーロー伝説
が撮られている→「THE TWO BROTHERS(2人の兄弟)」(1910.5.14)
■寄る・引く・カッティング・イン・アクション 
①序盤、小さな子供が旗を掲げる時、寄る、引くがカッティング・イン・アクション気味になされている。
●切り返し
①戦いの狼煙を上げるインディアンとそれを馬の上から見ている青年とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。青年の「見ること」と「見たこと」が撮られているので原初的主観ショット
②青年が恋人を自分の家に匿う時、家の外と中とのあいだは、4ショット内側から切り返されそのまま終わっている。最初の切り返しはドアをノックした音に反応した原初的音声空間の切り返しだがその後は開け放たれたドアによる切り返し。速い切り返し。
③その直後、丘の上から襲ってくるインディアンとそれを見て家の中へと隠れる父親たちとのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。「見ること」あり。
④その後、一軒家に立て籠もった家族たちと襲ってくるインディアンとのあいだは、合わせて6ショットほど内側から切り返されそのまま終わっている。窓が開いているので窓空間。
⑤馬で追って来るインディアンとそれを馬上から振り向きざまに撃ち落とす青年とのあいだは、4ショット内側から切り返されそのまま終わっている。ロバート・ハーロンの馬を回転させながらの見事な手綱さばきをリズムある切り返しでカッティングしている。フィルムの状態からインディアンの視線が見えないがおそらく見つめ合う視線の切り返しだろう。
⑥さらにその後、一軒家の中と外とのあいだが、他のショットを挟み、合わせて5ショット内側から切り返されている。窓空間。
近代的寄り
①7分頃、立て籠もっている狭い一軒家の中のフルショットのあと、ベッドの下に隠れる子供たちへとキャメラが寄り、その後引かれている。ここでは画面の中に見えていないものの子供たちが隠れたベッドはその一軒家の同一空間に存在するはずであり、よってこれは切り返しではなく同じ空間への寄りであり、その後キャメラが引かれたことになり、切り返しではない。近代的寄りはすでに「女の叫び(LONEDELE OPERATOR)」(1911.3.15)によって撮られているがそこでの寄りは横への平行な寄りであるのに対してここでの寄りはあの不自由な1室の角(隅っこ)へと切れ込んでの寄りであり、それ自体、近代的切り返しを準備する近代的寄りと評価するに相応しい画期的な出来事としてある。
②事件が解決した後、同じように一軒家の中のフルショットからキャメラはベッドの下から出て来る子供たちに寄り、引かれている。近代的寄り
▲平行モンタージュ 20回超。
▲追っかけ平行モンタージュ ロバート・ハーロンと恋人の乗った馬車がインディアンの追跡から逃げる時、追っかけ平行モンタージュによって撮られている。
▲クロス・カッティング 最後の救出劇。
■一軒家
立て籠もること 
俯瞰 小高い丘からロングショットでインディアンに囲まれ煙に包まれた一軒家が撮られている。
煙 のろし、銃激戦の凄まじい煙、砂埃
大作志向 「エルダーブッシュ峡谷の戦い(THE BATTLE AT ELDERBUSH GULCH)」(1913/1914.3.8)、「国民の創生(THE BIRTH OF A NATHION)」(1915.3.3)等の原型がここに撮られている。
■人間運動と改心 父親は最後、命を賭けて救援隊を連れてきた息子と抱き合っている。これは「許す」という知的な出来事ではなく衝動的な抱擁である。2-B
■キャメラの横を通り過ぎる 19ショット。
23(原1)-0-0-多用。
寄る・引く 室内で。
近代的寄り
カッティング・イン・アクション
1ショット6.7秒
一軒家
立て籠もること
俯瞰・ロングショット
追っかけ平行モンタージュ
クロス・カッティング
ヒーロー伝説
ロバート・ハーロン
1911 THE LAST DROP OF WATER
最後の一滴 7.22

撮影場所 カリフォルニア州シエラマドレ、テネシー州ルックアウトマウンテン
 ちらちら
脚本スタナー・E・V・テイラー
11  332  72  13  ジムとジョン(チャールズ・ウェストとジョセフ・グレイビル)は1人の娘(ブランチ・スウィート)を愛していたが娘は実直なジョンではなく酒癖が悪く気の弱いジムと結婚し、その後3人は西部のフロンティアを目指して幌馬車隊で出発するが、砂漠でインディアンに襲われて孤立した時、水を求めて砂漠を放浪するジムは瀕死のジョンに水筒の最後の一滴を飲ませた後、死に至り、回復したジョンは水場を発見する。
■字幕あり。16箇所。
●切り返し
①序盤の橋の上で話している2人(娘とジョン)と友人と話しているジムとのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで1ショット内側から切り返されている。場所的不明確性により切り返しではないかも知れない。原初的切り返し
②その後、橋の上の2人(娘とジム)とそれを見ているジョンとのあいだは、1ショット内側から切り返されそのまま終わっている。ジョンは見たあと目を逸らすことで「見たこと」を指示しており原初的主観ショットに近いが「見ること」が撮られていないのでひとまず切り返しとしておく。
③幌馬車隊が砂漠を横切る時、登場したインディアンと幌馬車隊とのあいだが、7ショット内側から切り返されている。
★切り返しと追っかけ平行モンタージュとの違い
切り返し③のケースでは幌馬車隊の者たちがインディアンを視認しているので3ショット目までは切り返しと判断できるが4ショット目以降は幌馬車隊がインディアンをひとまず巻いているのなら平行モンタージュ、視認できる範囲にインディアンが未だいるなら切り返しとなるが、7ショット目もインディアンたちが幌馬車隊を指差して視認しているので切り返しとなる。やや場所的に不明確ではある。
■引く 
①夫婦が馬車で出発する時、キャメラが引かれている。重複は少ないので「引く」となる。
②夫婦が馬車で二度目の出発をする時、、キャメラがジョンの手綱を振る動作のカッティング・イン・アクション気味に引かれている。
②ジムがジョンに水を飲ませた後、ふらふらと立ち上がったジョンからキャメラがカッティング・イン・アクション気味に引かれている。
③埋葬の後、キャメラがやや上から引かれている。
■バックライト 序盤の橋の上でブランチ・スウィートの後ろ髪に自然光が当たっている。砂漠ではブランチ・スウィートの後ろ髪が綿菓子みたいに風になびいている。
▲平行モンタージュ あり 15回ほど。
▲クロス・カッティング 救出の
■ヒーロー ジョンは生死を分ける場面でジムに水を飲ませ、また妻は夫の死に打ちひしがれている。しかしこの短編の中には男同士の友情、夫婦の愛情のシーンは撮られておらず、恋の相手を奪われること、酒浸りの夫が妻に暴力をふるうことしか撮られていない。妻への暴力、酒浸りは「THE TWO BROTHERS(2人の兄弟)」(1910.5.14)における勘当、「His Trust(彼の信頼)」(1911.1.2)における黒人召使と同じように夫を孤立させるマクガフィンでありそうして「すねに傷を持つ身」となった彼の、生死を分ける場面における身に染みついた運動を撮ることで孤独なヒーローを浮き立たせている。
■キャメラの接近 
★膝上
■這うこと 砂漠で水を探す時にチャールズ・ウェストが。
■煙 馬の土煙、たき火、水面の波紋
■鏡 水面に木が映っている
■風 草木が
■退出の映画史 橋の上にジムがブランチ・スウィートに会いにやって来た時、もう一人の娘が去ってゆく。その後、ジョンがやって来ると今度はジムが去ってゆく。
■大作志向
■ラストシーン 埋葬が終わり皆が去ってゆく。
■フェイドアウト ラストシーン
■落とすこと ジムが不意に水筒を
■人間運動と改心 ジムはジョンを見殺しにしようとしたあと改心して水をやり助けている。ここではジムは失神してるジョンの顔を自分の方へ向けて見つめた後、テントで待っているブランチ・スウィートを想起し自分の胸を叩きながら天を仰ぎ自嘲気味に笑いながらジョンに水を飲ませている。このジムの動作はおよそ知的な計算によって改心する者にはあり得ない不可解な衝動によってなされておりグリフィスはこうした「常習犯」的細部を撮ることを忘れていない。2-B
■キャメラの横を通り過ぎる 26ショット。

9(原1)-0-0-多用
場所的不明確性
バックライト
切り返しと追っかけ平行モンタージュの違い
クロス・カッティング
カッティング・イン・アクション
3人関係
ヒーロー
退出の映画史
フェイドアウト
1911 臆病者のボビー
Bobby The Coward

7.15
ロバート・ハーロン
「FIGHTING BLOOD(戦う血)」(1911.7.1)に続いてロバート・ハーロンが主役を演じている。
脚本デル・ヘンダーソン
YouTubeでは1分半版のみ。フイルムセンターでは上映されているのでフィルム自体は残っている。街でやくざ者に因縁をつけられ侮辱された青年(ロバート・ハーロン)はそのままやり返さずにいたところを見ていたガールフレンド(フローレンス・ラ・バディ)に臆病者と強くなじられる。
1911 A COUNTRY CUPID
田舎のキューピッド
7.29

ニュージャージー州ウェストフィールド→ニューヨークへ戻って来ている
ちらちら
エドナ・フォスター(Edna Foster)。少年役の彼は実は女優であり少年の物まね師として有名であったとのこと。この後も「THE ADVENTURES OF BILLY(ビリーの冒険)」(1911.10.14)「BILLY’S STRATAGEM(ビリーの策略)」(1911/1912.2.10)などで主役の少年役で出演している。
12  296  69  14 花を愛する村の田舎の女教師(ブランチ・スウィート)はやって来たフィアンセ(エドウィン・オーガスト)に気を取られて生徒からの花のプレゼントに気づかず、生徒はその花を知的障害の農夫(ジョセフ・グレイビル)にあげると、農夫は思いを寄せる女教師にその花をプレゼントしようとして断られる(このあたりの物語の進め方が複雑)。放課後、女教師は学校の帰りを待っていたフィアンセに、彼女の持っていた手紙をほかの男へのものではと疑われて喧嘩したあと教室で仲直りの手紙を書いたものの思い直して捨てたところ彼女を大好きな生徒(エドナ・フォスター・以下少年)がその手紙を拾いフィアンセの家のポストに入れる(これが『キューピッド』ということになる)。その頃、放課後の教室では彼女に思いを寄せる農夫が銃で彼女を脅し、手紙を読んだフィアンセはそうとは知らずにのんびりと学校へ向かったところ襲われている彼女を見て慌てて助け、やって来た少年から訳を聞いた2人は抱き合うが「こいつが彼氏だろ?」とふてくされる少年を女教師は抱き寄せる。
■字幕あり。6箇所。
★アイリスの「起源」 オープニングからうっすらとアイリスがかかっているように見える。確実ではない。
★学校の教室が撮られた「起源」
●切り返し
①女教師に花をプレゼントしようとして気づかれなかった生徒と畑を刈り取っている知的障害の農夫とのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで1ショット内側から切り返されている。
②その直後、恋人たちとそれを見ている農夫とのあいだは、3ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。
③放課後の教室で仕事をしている女教師とそれを窓の外から見ている農夫とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショットだが場所的関係が不明確なので原初的切り返し。窓空間。「見ること」と「見たこと」が強調されているが女教師の正面から切り返されているので原初的主観ショット。教室という室内空間が絡んでくると主観ショットの見た目が原初的になる。
④教室で農夫に銃を突き付けている女教師とそれを窓の外から見ている恋人とのあいだは、2ショット内側から切り返されている。窓空間。これも「見ること」と「見たこと」が撮られているので原初的主観ショット
⑤その直後、駆け付けた者たちと教室とのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。室内と室外。
▲平行モンタージュ 14回程度。原初的なものは計測していない。
▲クロス・カッティング 結果としてフィアンセは女教師を救出したがそれまでフィアンセは危機を知ずに現場へ向かっている。おそらくこの作品限りだと思われるが今後、危機を知らずに駆け付ける態様の平行モンタージュを「のんびりクロス・カッティング」と名づけることにする。
★膝上
■THE END 
■気づかないことにする 
①序盤、ブランチ・スウィートは生徒から花をプレゼントされるが恋人と話し込んでいて目の前に差し出された花に気づかない。これは生徒からのプレゼントなので無視したのではなく気づかなかったという設定であり『気づかないことにする』の力がなければこのような撮り方はできない。
②ブランチ・スウィートが教室で手紙を捨てる時、背後の少年に気づかない。
③教室で仕事をしているブランチ・スウィートは背後の(ピストルを持った)農夫に気づかない。
■風 木々が。
■人間運動
■キャメラの横を通り過ぎる 18ショット。接近もあり。
8(原4)-0-3(手紙)-多用。
アイリスの「起源」
教室の「起源」
原初的主観ショット
のんびりクロス・カッティング
気づかないことにする
THE END
1911 THE ROSE OF KENTUCKY
ケンタッキーのバラ 8.26
撮影場所 ニュージャージー州フォートリー・コイツビル
ちらちら 10  360  99  16.30 母を失い孤児となった娘(マリオン・サンシャイン)を引き取ったタバコ農場の農園主(ウィルフレッド・ルーカス)は彼女に密かに思いを寄せるが彼女とキスをした時、自分は彼女と年が離れすぎていることに気づく。その後、新しくやって来た農園の若いパートナー(チャールズ・ウェスト)と娘が楽しそうに戯れているのを見て農園主は身を引く決心をする。そんな折、農園は加入を断ったことで腹を立てた自警団(アルフレッド・パジェット等)に襲われ、農園主たちは小屋に立て籠もって応戦するが若いパートナーはひとり戦いから逃げ隠れてしまう。
■字幕あり。15箇所。
■自警団(ナイトライダーズ)  KKKのように白覆面をかぶった自警団はタバコ会社の搾取に反対するもので、農園主は彼らの仲間になることを断ったために襲われている。ここでの自警団は多分にチャールズ・ウェスト扮するパートナーの臆病さを露呈させるためのマクガフィン。
■孤児 マリオン・サンシャインが。
■わざと気づかないことにする 初めて若いパートナーが家にやって来た時、それを知って黒人のメイドと思いきりはしゃいでいる娘がパートナーのいる部屋に入ったとたん、机に置いてあった本を手に取って「あったわ、これね」と帰ろうとし、農園主から「紹介しよう」と言われて「なんですの? どなた?」、という感じで無関心を装っている。この行動だけで彼女のキャラクターが一発で描かれている。ここまで細かい演出をするものかと驚くしかない。「若い男よ!」とあれだけはしゃいでいた娘が部屋に入って来て平然と本を手に取りそのまま出て行こうとする行動に一切のよどみがない。あの机の上に置かれた本は歴史的マクガフィンでもある→「HIS TRUST FULFILLED(彼の信頼は満たされた)」(1911.1.21)
■接近 キャメラが被写体に接近し始めている。
■寄る・引く・カッティング・イン・アクション
①農耕機が動き出す時、キャメラが地面に寄ってからまた引く。カッティング・イン・アクション気味。
②ピアノのある部屋で戯れている2人(娘とパートナー)をやって来たウィルフレッド・ルーカスがカーテン越しに見る時、カッティング・イン・アクションで寄る。室内。
近代的寄り ここで↑近代的寄りが撮られている。廊下の狭い空間だがカッティング・イン・アクションで斜めから廊下の一角に寄り、切り返す余地のあるくらいまで接近している。
③パートナーに興味を持つように娘を勇気づけるとき、キャメラが字幕を挟んで2人へ寄り(近代的寄り)、娘がパートナーの部屋に入った後、歩き出した農園主からキャメラを引く。この「引く」はカッティング・イン・アクション気味に撮られている。室内。
★ここでも2ショット近代的寄りが撮られている。
④草むらに隠れて馬に乗っている自警団を見ている3人(娘と家政婦ケート・ブルースと黒人召使)へと寄る。
⑤小屋に立て籠もって応戦している2人(娘と農園主)に寄っている。室内
★膝上
●切り返し
①娘が学校から帰って来たあと、外で待っている農園主と家の中の娘たちとのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。室内と室外。
②農園のパートナーがやって来た時、机の上に座っている娘と廊下を歩いてきた2人(農場主とパートナー)とのあいだが、2ショット内側から切り返されている。最初の切り返しは娘が気配を感じてのコミュニケーションゆえ原初的音声空間の切り返し。次の切り返しは娘がドアを開けているので原初的二間続きの切り返し
③部屋で戯れている2人(娘とパートナー)とやって来てカーテンの陰からそれを見ている農園主とのあいだは、4ショット内側から切り返されそのまま終わっている。農園主は「見ること」をしたあと「見たこと」を示してショックを受けていて体裁としては主観ショットだが見られている2人が正面から撮られているので原初的主観ショット原初的二間続きの切り返しセットの室内の切り返しが主観ショットの場合、キャメラはセットの内部には入ることができず正面から撮られるので必然的に原初的主観ショットとなる
④自警団からの誘いを断った後、部屋の2人とそれをカーテンの陰から見ている農園主とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。ここでも農園主の「見ること」と「見たこと」が撮られているので原初的主観ショットとなり原初的二間続きの切り返し
⑤農園主が娘をパートナーのいる部屋にやったあと、廊下の農園主へと1ショッ内側から切り返されている。農園主の「見たこと」のショットしか撮られていないので主観ショットとはしないでおく。どちらにしても室内の主観ショットはこの時期、原初的にならざるを得ない。原初的二間続きの切り返し
★カーテンと切り返し
切り返し③④⑤はカーテンを挟んでの切り返し。ここで平行の二間続きではなく左は廊下でかつ仕切りとカーテンが斜めに設置されさらにカーテンが開いていることが観客に見えやすいように撮られている。また切り返し③⑤ではキャメラが寄っているのでよりカーテンが開いていることがより見えやすいようになっている。「The Sealed room(封印された部屋)」(1909.9.4)「WINNING BACK HIS LOVE(彼の愛を取り戻す)」(1910.12.31)「Heart Beats of Long Ago(昔の心の鼓動)」(1911.2.11)でもでもカーテンの壁は斜めに設定されているがカーテンが開いていることが良く見えなかったのに対してここでは開いていることが見えるように撮られている。
⑥娘が倉庫に逃げてきた後、襲ってきた自警団と倉庫の中の3人(農園主とパートナーと娘)とのあいだは、合わせて8ショット内側から切り返されそのまま終わっている。室内と室外。この直前、最初に自警団がやって来た時、倉庫の中から外の自警団へと1度切り返されているが、その持続したショットで倉庫の中から農園主が出て来ている。この場合、農園主を除けば文句なしに切り返しとなるが、農園主を主とした場合、倉庫の中の農園主が外へ出ただけの時系列の移動行為となり、ここでは切り返しには含めない
⑦その直後、白旗を掲げてやって来た自警団と倉庫の中とのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで1ショット内側から切り返されている。室内と室外。原ショットは農園主の「手だけ」が同一画面に収められた『奇妙な同一画面』
■立て籠もること
■想い出 畑、野原を走り回り、小さな木の周りを追いかけっこしてキスをしたあと、農園主は2人の年が離れすぎていることに気づく。
■ロケーション グリフィスの故郷であるケンタッキーのプランテーションが舞台となっている。
■椅子 ラストシーンは椅子に座った農園主が娘を膝の上に乗せて抱き合っている。
■THE ENDで終わる
■這うこと 自警団たちは小屋を襲う時、這って接近して来る。
■風 草木
■煙 馬の土煙、銃
■人間運動と身を引くこと 農場で娘とキスをすると農園主は衝動的にもう一度キスすることをやめ、その後娘がパートナーと談笑している姿を見ると『彼は彼女には年を撮りすぎていることを感じた』と字幕が入り農園主は鏡を見て苦笑しながら苦悶するという衝動的運動によって身を引いている。またラストシーンでは娘にキスをされその衝動でふたたび改心して娘と結ばれている。2-B
■キャメラの横を通り過ぎる 14ショット。
19(原9)-0-0-あり
自警団
寄る 引く、
原初的二間続きの切り返し
原初的主観ショット
カーテンと切り返し
カッティング・イン・アクション
わざと気づかないことにする
立て籠もる
孤児 
THE END
 1911 SWORDS AND HEARTS
剣と心 9.2
撮影場所 ニュージャージー州フォートリー・コイツビル
ちらちら、はっきり
ドロシー・ウエストが農園主に花を渡した後、やや遠距離ながらはっきりとキャメラを見ている。これは鮮明なフィルムが残されていることによるところが大きい。
ウィリアム・J・バトラー(William J. Butler)。アイルランド生まれ。1908年、48歳でバイオグラフへ入りグリフィス「TAMING OF THR SHREW(じゃじゃ馬馴らし)」(1908.10.10)に出演、以降常連となる。1927年1月27日死去。67歳。
8.7  415  113  16.20秒 懐かしきヴァージニアの物語。ヴァージニアのタバコ農園主のヒュー(ウィルフレッド・ルーカス)は美しいが計算高い貴族の女(クレア・マクドウエル)と戦争に勝った暁に結婚することを約束する。一方、貧しい父親(フランシス・J・グランドン)と暮らしている物売りの娘ジェニー(ドロシー・ウエスト)は自分の屋敷へ行けばその果物を買ってもらえるからと農園主に親切にしてもらい彼が南軍兵として出征する時に花を贈りお礼のキスをされる。数か月後、南軍が北軍兵に包囲された時、農園主を密かに愛する貧しい娘が彼のコートを着て彼の馬を駆り囮となって北軍兵を引き付け彼を救い自身も肩に傷を負う。ゲリラとなった使用人たち(ドナルド・クリスプ等)に襲撃される危険を察知した農園の黒人召使(ウィリアム・J・バトラー)は密かに屋敷の財宝を森の土の中に埋めるが、屋敷が南軍ゲリラに襲撃されて火に包まれ農園主の父親(ヴァーナー・クロージス)は死ぬ。敗戦後、帰省した農園主は北軍の将校(チャールズ・ウェスト)に乗り換えた貴族の女に拒絶され、焼けただれた屋敷に帰って来ると、あの娘が現れる。
■字幕12箇所。
■ヒーロー 愛する農園主のために彼に成りすまして男装して敵兵を引き付けたドロシー・ウエストは黒人召使に助けられた後、微笑みながら別れ、暗い家の中でコートをめくって血だらけの肩を見ている。この献身についてはラストシーンで黒人召使が身振り手振りで農園主に伝えたに過ぎず彼女自身は農園主に話そうとはしていない。母親不在の孤独なヒーローは身に染みついた行動によってのみ現される。
■瑞々しい 花を手にしたドロシー・ウエストが瑞々しく撮られている。殆ど意味のないショットがこうして近景から撮られ始めた「起源」かも知れない。作家が女優に恋をした、という撮られ方。
■ローアングル キャメラが人物に接近し始めたことに依るのか、人をややローアングル気味に捉えている。
▲平行モンタージュ 35回強
▲追っかけ平行モンタージュ 馬で逃げるドロシー・ウエストと追いかけて来る北軍兵たちとが最初のショットだけ「追っかけ」で撮られあとは追っかけ平行モンタージュで撮られている。その追っかけにしても最早「BALKED AT THE ALTER(祭壇で思い止まる)」(1908.8.29)のような延々と1ショットが続く「追っかけ」ではない。
●切り返し
①馬で追って来る北軍兵と馬を停止させ北軍兵を撃ち落とすドロシー・ウエストとのあいだは、3ショット内側から切り返されそのまま終わっている。ドロシー・ウエストの見事な手綱さばき。
②農園主の父親とその屋敷に襲い掛かる南軍ゲリラたちとのあいだは、7ショット目に同一画面に収められるまで6ショット内側から切り返されている。ドアは閉じられて音と気配で通じているので原初的音声空間の切り返し
③財宝を土の中に隠している黒人召使と馬でやって来たドロシー・ウエストとのあいだは、3ショット目で同一画面に収められるまで2ショット内側から切り返されている。黒人召使の「見ること」と「見たこと」がはっきり撮られているが角度的にはややずれていて原初的主観ショット。さらに 黒人召使が自分の見たショットの中にその後、自分が同じ構図で入ってしまっているので主観ショットとしては原初的である。→「THE SORROWS OF UNFAITHFUL(不誠実の悲しみ)」(1910.8.27)切り返し①
④燃え盛る屋敷の中から主人を連れ出した黒人召使と燃えている屋敷とのあいだは、5ショット目に(屋敷と黒人召使が)同一画面に収められるまで4ショット内側から切り返されている。
⑤戦争が終わり焼け落ちた屋敷に帰って来た農園主と畑を耕しながらそれを見ている娘とのあいだは、3ショット目に同一画面に収められるまで2ショット内側から切り返されている。「見たこと」しか撮られていないので主観ショットではない
⑥その直後、畑の娘とそれを見ている農園主とのあいだは、1ショット内側から切り返されそのまま終わっている。
⑦鍬を持っている黒人召使と抱擁し合う2人(娘と農園主)とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。
■評 場所的関係がはっきりせず切り返しなのか平行モンタージュなのか判断しづらいショットがある。
■照明 
①体に木の葉の影が投射されている(貴族の女の家の階段のところで)
②ドロシー・ウエストがコートを開いて肩の血を見せる時、部屋の照明が暗く落とされている。
★膝上
■男装 ドロシー・ウエストは男装して南軍兵に成りすまし囮となって逃げる
■ラストシーン 抱擁し合う2人を見て笑っている黒人召使。主役でない者のラストシーンの「起源」
■THE END バイオグラフのマークの下に入る。
■落とすこと 戦争から帰って来た農園主を見たドロシー・ウエストが持っていた鍬を落とす(放して倒れるに任せる)。
■風 木々
■煙 馬の土煙、火事、黒煙、銃、
■母親の不在 ウィルフレッド・ルーカスとドロシー・マローンにはどちらも母親がいない
■人間運動と改心 貴族の女にふられた農園主はジェニーを愛することになるがそこには『彼は彼女の忠実さと価値に気づいた』と字幕が入った後、焼けつく太陽の下、畑で働いている彼女を見て改心している。グリフィス映画の字幕は最初にまず字幕が入り次に字幕によって書かれた行動がなされるパターンなので『彼は彼女の忠実さと価値に気づいた』のはその後の彼女の運動を見てのことであり心理的なものが先に来るのではない。彼は彼女の姿を見て改心しているので心理的なシーンも撮られていない。2-B
■キャメラの横を通り過ぎる 34ショット。
20(原4)-0-0-多用
ローアングル
場所的不明確性
追っかけ平行モンタージュ
男装
ヒーロー
無意味で瑞々しいショット
暗い部屋
母親の不在
ヒーロー
THE END
脇役がラストシーンの「起源」
1911 THE ETERNAL MOTHER
永遠の母 1912.1.6
撮影場所 ニュージャージー州フォートリー・コイツビル
ちらちら
メイベル・ノーマンド(Mabel Normand)。おそらく1909年頃バイオグラフに顔を出し始めているが大きな役が付くのはこの頃から。1912年マック・セネットと共にキーストン社へ移籍しスターとなる。監督にも進出しチャップリン映画を監督共演もしている。26年引退、1930年2月23日死去。36歳。
10  355  68  11.30秒 シリアスなメロドラマ。愛し合い結婚した田舎の夫婦マーサとジョン(ブランチ・スウィートとエドウィン・オーガスト)は畑を耕しながらしばらく幸せな生活を続けていたがふとしたことから隣の家の女メアリー(メイベル・ノーマンド)とすれ違った夫はその魅力に一瞬で魅了されて恋に落ち、妻と別れ、隣の女も夫と別れて2人は結婚するが隣の女は子供を産んで病に侵され駆け付けたマーサの前で息を引き取りその子をマーサが引き取る。何年も年が過ぎ、マーサはジョンの娘の母親になりジョンは自分の無価値さに気づいてひたすら働くがマーサには受け容れられず、さらに時が過ぎ、2人が老齢を迎えると、疲れ果てたジョンは『母(マーサ)』の腕に抱かれる。
■字幕あり。14箇所。
●切り返し
①隣の女と初めて出会った後の別れ際、隣の女からジョンへと1ショット切り返されている。
②隣の女の家の前で浮気をしている夫とそれを木陰から見ている妻とのあいだは、4ショット目同一画面に収められるまで内側から切り返されている。「見ること」と「見たこと」の強調。原初的主観ショット
③その直後、抱擁している2人(隣の女と夫)とそれを木陰から見ている妻とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。原初的主観ショット「見ること」と「見たこと」の強調
④隣の女の出産後、やって来た近所の女(ケート・ブルース)と家の中の夫とのあいだは、3ショット目に同一画面に収められるまて2ショット内側から切り返されている。
⑤やって来てドアを叩く妻と家の中の2人(隣の女と夫)とのあいだは、3ショット目に同一画面に収められるまで2ショット内側から切り返されている。仕切られたドアの音に反応しているので原初的音声空間の切り返し。室内と室外。
⑥月日は流れ、家の戸口に立っている妻と畑を耕している前夫とのあいだは、時を経て7ショット内側から切り返されそのまま終わっている。場所的関係が定かではなく原初的切り返し
■バックライト ここでもブランチ・スウィートの後ろ髪がバックライトで綿菓子のように風になびいている。
■フェイドアウト 途中で
■風 草木、髪、スカート
★膝上
■人間運動と改心 前妻は最初、病床の女を拒絶して後ずさりしているがその直後、苦しむ女を見て惹きつけられるように近づき介抱している。ここでも衝動的運動が撮られている。2-B
■キャメラの横を通り過ぎる 12ショット。近景あり。
18(原4)-0-0-あり
原初的主観ショット
場所的不明確性
不倫
バックライト・ブランチ・スウィート
フェイドアウト
1911 THE REVENUE MAN AND HIS GIRL 税務署員と少女 9.23
撮影場所 ニューヨーク州カドバックビル
ちらちら 6.3  572  108  11.20秒 ケンタッキーの山で酒の密造業をしている父親の娘(ドロシー・ウエスト)は鳥を愛する山の娘だが彼らを逮捕しにやって来た税務署員たちに父親を殺され復讐を誓うが山林で密造者たちに追いつめられた税務署員(エドウィン・オーガスト)が鳥を愛でているのを見て復讐を断念し彼を匿い2人で山を降りてゆく。
他の密造者アルフレッド・パジェット、少女グラディス・イーガン。
■字幕あり。8箇所。
■バスト・ショット 鳥を撫でているドロシー・ウエストのバスト・ショットに近い近景から始まっている。その外にもドロシー・ウエストがライフルを持っているショットで。
■1ショット6.3秒 「FIGHTING BLOOD(戦う血)」(1911.7.1)の1ショット6.7秒をさらに更新して1ショット6.3秒の世界へ突入している。それに伴って切り返しの数が「32」と増えていることは無関係ではないだろう。
■寄る 死んでいる税務署員の死体をドロシー・ウエストが叩いている時、カッティング・イン・アクション気味にキャメラが寄っている。
■引く ↑の直後、キャメラを引いている、これはカッティング・イン・アクションではない。
●切り返し
①谷で逮捕されている密造者たちとそれを山の上から見ている2人(密造者アルフレッド・パジェットと少女グラディス・イーガン)のあいだは、4ショット内側から切り返されそのまま終わっている。場所的関係が定かではない。
②大木の陰から銃を撃つ税務署員と彼に撃たれた山の娘の父親、その後やって来て税務署員を撃ち殺す仲間(アルフレッド・パジェット)、さらにやって来た娘とのあいだは、7ショット目に同一画面に収められるまで6ショット内側から切り返されている。見つめ合う視線の切り返しだが最初の父親と税務署員とのあいだではイマジナリーラインがずれている。目まぐるしい切り返しだが原初的ではある。
③山林の木に寄りかかり倒れている税務署員と彼に銃で狙いを定めている山の娘とのあいだは、11ショット目に同一画面に収められるまで10ショット内側から切り返されている。主観ショットのように見えるが彼女は画面の左から入って来て男と同一画面におさまっているので原初的主観ショット「見ること」と「見たこと」の強調。
④その後、密造者たちと彼らから逃げる2人(山の娘と税務署員)とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショットに近い。
⑤その直後、さらに1ショット内側から切り返されている。
⑥山の娘の家に逃げ込んだ2人とドアの外の密造者たちとのあいだは、8ショット目に同一画面に収められるまで7ショット内側から切り返されている。ドアは閉められているので原初的音声空間の切り返し
⑦その直後、家の外の密漁者(アルフレッド・パジェット)と中の者たちとのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで1ショット内側から切り返されている。室内と室外。
⑧その後、家から出て行った密漁者たちと山の娘とのあいだは、3ショット内側から切り返されそのまま終わっている。室内と室外。
⑨その後、家から逃がされた税務署員と家の中の山の娘とのあいだは、3ショット内側から切り返されそのまま終わっている。2人共鍵穴から覗き見ているようなので切り返し。室内と室外。
▲平行モンタージュ 20回超
▲追っかけ平行モンタージュ 密林の中を逃げる税務署員と負う娘とが追っかけ平行モンタージュ(走ってはいない)、密林の中を逃げる2人(娘と税務署員)と彼らを追いかける密漁者たちとのあいだが、視認できる切り返しと(切り返し④⑤)と視認できない追っかけ平行モンタージュとに分けて撮られている。
■関係を築くこと
A 落として拾うこと 
①序盤、ドロシー・ウエストが落とした水差しを税務署員が拾うことによって2人の出会いが撮られている。
②「落とすこと」にはほかにも、ドロシー・ウエストが父親の死体を見てライフルを落とすことも撮られている。
B 盗み見 落ちて来た鳥を介抱し逃がしてやる税務署員を盗み見することで山の娘は彼を撃つことを断念する。
C ライフルを渡し渡し返すこと
税務署員を逃がそうとする時、山の娘は彼に自分のライフルを渡すがすぐ彼はライフルを渡し返している。凶器を敢えて相手に渡すことで信頼関係が築かれている。→ハワード・ホークス「エル・ドラド(EL DORADO)」(1966/1967.6.9)の序盤、ロバート・ミッチャムが敵対するジョン・ウェインにライフルを投げ渡し、再びウェインからミッチャムへ投げ返される。ABCを積み重ねることで山の娘と税務署員とのあいだに関係を築かせている。
■鳥 鳥を愛する山の娘が鳥を逃がした男に恋をする
★膝上
■埋葬 父親の埋葬が撮られている。
■フェイドアウト ラストシーン
■THE END
■山と谷 ここでも「COMATA.THE SIOUX(コマタ、スー族)」(1909.9.11)「THE MOUNTAINEER’S HONOR(山岳民の誇り)」(1909.11.27)以来撮られ続けている山の民の誇りが描かれている。密造者の娘というマクガフィンを敢えてぶつけることで山岳民の誇りを際立たせていながらも、それでもなおかつラストシーンで山を降りてゆくという重畳的な主題が撮られている→「山岳民の誇り」
■ラストシーンが歩いてゆく後ろ姿
■人間運動と改心 少女は父親の仇である税務署員を匿っている。鳥を愛する少女は木陰で鳥を介抱している税務署員を切り返し③の10ショットの内7ショットにわたる内側から切り返しによってまじまじつ見つめた後、射撃を断念している。2-B
■キャメラの横を通り過ぎる 28ショット。接近している。
37(原21)-0-0-多用
1ショット6.3秒
バスト・ショット
寄る・カッティング・イン・アクション
引く
見つめ合う視線の切り返し
イマジナリーラインのずれ
主観ショット
場所的不明確性
追っかけ平行モンタージュ
フェイドアウト
THE END
盗み見
落として拾うこと
ライフルを渡すこと
山と谷
ラストシーンが歩いてゆく後ろ姿
1911 THE SQUAW’S LOVE
インディアンの女性の恋
9.9

撮影場所 ニューヨーク州カドバックビル
脚本スタナー・E・V・テイラー 9  399  82  12.20秒 インディアンの娘ワイルドフラワー(メイベル・ノーマンド)は恋人グレイフォックス(アルフレッド・パジェット)との結婚を酋長の父親(ウィリアム・J・バトラー)に反対されるが恋人の友人インディアン、ホワイトイーグル(ダーククラウド)の手助けで駆落ちする。しかし娘と友人との仲を勘違いした友人の恋人シルバーフォーン(クレア・マクドウエル)の嫉妬で娘は崖から突き落とされるが、誤解も解けて4人は協力しカヌーに乗って追っ手から逃げる。
■字幕あり。1ショット。少ない。
■引く・寄る・俯瞰 女が崖で娘を川に突き落とす時、キャメラは大きくロングショットへ引かれて崖の全貌を映した後、再び寄り、娘が川に落下する時に再び引く。その後、視点を変えて崖の上から沈んだ娘の波しぶきを捉えたショットが俯瞰で撮られている。
→崖の上のシーンが1シーン4ショットで撮られている。
●切り返し
①求愛されて怒ったふりをして川べりから逃げてきた娘と恋人とのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで1ショット内側から切り返されている。
②娘の部族の者たちにリンチされている恋人とそれを見ている娘とのあいだは、4ショット内側から切り返されそのまま終わっている。場所的関係が甚だ不明確。原初的切り返し
③カヌーで逃げた恋人とそれに気づいて追いかけるインディアンたちとのあいだは、1ショット内側から切り返されている。
④娘が川に落下した直後、崖の上の女に1ショット切り返されている。
⑤その後、カヌーで逃げる4人とそれを追う者たちとのあいだで、3ショットほど切り返されている。発砲をするときに空間が通底していることがわかるがその他は場所的不明確性から平行モンタージュとの識別不能。原初的切り返し
⑥カヌーに乗ったまま草の陰に隠れた4人と追って来る者たちとのあいだは、3ショットほと切り返されている。これも場所的関係性がやや不明確で原初的切り返し。
⑦二隻目のカヌーに穴を開けた後、ノーマンドとインディアンたちとのあいだは、4ショット内側から切り返されている。ノーマンドがインディアンに見つかったと反応していることから切り返しとなるが場所的には甚だ不明確。原初的切り返し
⑧その後、カヌーで逃げる4人と追う者たちとのあいだは、4ショット目に同一画面に収められるまで3ショット内側から切り返されている。
⑨その直後、カヌーから水を掻き出し溺れるインディアンたちとそれを見ている4人とのあいだは、3ショット内側から切り返されそのまま終わっている。
■評 全体的に切り返しの場所的関係が不明確で原初的である。
▲追っかけ平行モンタージュ カヌーでの追跡シーンは追っかけ平行モンタージュでも撮られているが場所的不明確性から厳密には特定できない。
■俯瞰 インディアンたちが穴の開いたカヌーの水を掻き出すシーンが近景の俯瞰から撮られている。
■逆手 クレア・マクドウエル、メイベル・ノーマンドはナイフを逆手に握っている。
■煙
 銃
■THE END
■ラストシーンでキャメラの横を通り過ぎる。
■人間運動 恋と嫉妬と改心。クレア・マクドウエルは自分の恋人がメイベル・ノーマンドに奪われたと誤解したあと真実を知り改心して味方になっている。確かに「誤解を解く」という1クッションは入っておりまた心理的なショットも撮られていない(クローズアップの無い時代に心理的なショットは撮られづらい)。しかし「見ること」においても「触ること」においても弱くまた彼女はノーマンドとアルフレッド・パジェットをそれぞれ指差し『彼女と彼が恋人同士なの?』と、人物を特定する知的な仕草を見せており、真実という知的な領域の出来事によって敵の彼女が味方になるという、少々知的な改心のように見える。2-C
■キャメラの横を通り過ぎる 22ショット。

23(14)-0-0あり
引く・寄る・引く・落下する・俯瞰
ロングショット
1シーン4ショット。
追っかけ平行モンタージュ
場所的不明確性
俯瞰
1911 THE MAKING OF A MAN
男の誕生 9.30
撮影場所 ニュージャージー州フォートリー
ちらちら
舞台の観客たちははっきりとキャメラを正面から見据えている。
9.6  374  106  17 ボーイフレンド(ガイ・ヘドランド)と旅回り一座の舞台を見に行ったティーンエイジャーの娘(ブランチ・スウィート)は演じていた役者(デル・ヘンダーソン)に一目惚れし、舞踏会で再会した2人は恋に落ち駆落ちしようとして娘の父親(ウィリアム・J・バトラー)に反対され、娘は家出して次の街へと流れていった役者を追いかけて結婚するが追ってきた父親に未成年を理由に連れ戻され、再び娘は家を出る。しばらくして彼女を探しにやって来た役者に父親は娘は死んだと嘘を言って家から追い出したあと発作に倒れて死に偶然やって来た娘は兄(?)に追い出される。役者を探す旅先でひとり出産した娘は、『今日の舞台で幼児を持つ女性募集中』という劇団の新聞広告を見て劇場へ行きそこに偶然出演していた役者と再会する。役者仲間ドナルド・クリスプ。
■字幕あり。9箇所。
●切り返し
①映画が始まってすぐ、劇場の最前列の席に座った2人(ブランチ・スウィートと恋人のガイ・ヘドランド)と舞台で演じているデル・ヘンダーソン等とのあいだは、16ショット側から切り返されそのまま終わっている。室内における切り返し
②ホテルのドアをノックした娘と部屋の中の役者とのあいだは、5ショット目に同一画面に収められるまで4ショット内側から切り返されている。ドアを挟んだ音声空間の
原初的音声空間の切り返し
③その後、ドアをノックする2人(父親とボーイフレンド)と部屋の中の2人(娘と役者)とのあいだは、3ショット内側から切り返されそのまま終わっている。
原初的音声空間の切り返し
④その直後、俳優仲間(ドナルド・クリスプ)とドアの外の2人とのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで1ショット内側から切り返されている。
原初的音声空間の切り返し
⑤警官を引き連れてドアをノックする父親と部屋の中の2人(娘と役者)とのあいだは、5ショット目に同一画面に収められるまで4ショット内側から切り返されている。
原初的音声空間の切り返し
⑥娘の所在を知りにやって来た役者を追い出した後、歩き去る役者と家の中からそれを見ていた父親とのあいだは、1ショット内側から切り返されそのまま終わっている。室内と室外。
⑦終盤、①と同じように観客席と舞台とが4ショット内側から切り返されそのまま終わっている。
室内における切り返し。観客たちがみなキャメラを正面から見据えているこの切り返しは「A DRUNKER’S REFORMATION(酔っぱらいの改心)」(1909.3.27)から続く、舞台と観客席における正面からの切り返しを踏襲している。
▲平行モンタージュ 18回程度。
■椅子の上で死ぬ 父親が。
■風 木の葉
■孤児 父親のいない子供が産まれる。
■母親の不在 ブランチ・スウィートには母親がいない。ここでも母親代わりの父親が娘の結婚に反対している。→「WHEN A MAN LOVES(男が愛する時)」(1910/1911.1.7)、「Heart Beats of Long Ago(昔の心の鼓動)」(1911.2.11)
■キャメラの横を通り過ぎる 8ショット。
33(14)-0-1(新聞)-多用
室内と切り返し
舞台と観客席の切り返し
母親の不在
1911 THE ADVENTURES OF BILLY
ビリーの冒険 10/14
撮影場所 ニュージャージー州フォートリー
ちらちら 8.4  429 106 14.50 当時の報道機関の報道に依る。幸運を目指してある街にやって来た浮浪者の少年(エドナ・フォスター)はそこで出会った2人組の浮浪者たち(ドナルド・クリスプとジョセフ・グレイビル)に利用され、物乞いに訪れた金持ちの夫婦(デル・ヘンダーソンとクレア・マクドウエル)に歓待されて束の間の幸せに浸るものの、2人組は行きずりの老人(W・クリスティー・ミラー)を強殺して金を奪いそれを見ていた少年を小屋に閉じ込め殺そうとする。だが2人組が農民たちから身を隠している隙にやって来た金持ちの家の犬に少年は手紙を託しそれを見た金持ちたちが車で救出に向って少年を助け、養子にする。序盤、少年を追い払うベンチに座っている男はD・W・グリフィス。
■字幕あり。6箇所。
■オープニングで横たわる材木の横で麦わらのベッドで眠っている少年のショットはそれまでとは異質の近さとアングルによって撮られている。
●切り返し
①物乞いをするために民家を訪ねている子供(エドナ・フォスター)とそれを陰で見ている悪党二人組とのあいだは、3ショット目に同一画面に収められるまで2ショット内側から切り返されている。ドナルド・クリスプが「見ること」をしている。
②木陰に隠れている2人組と金持ちの家の庭にいる子供とのあいだは、7ショット目に同一画面に収められるまで6ショット内側から切り返されている。「見ること」をしている。
③柵のところで金を財布の中に入れている老人(W・クリスティー・ミラー)とそれを盗み見ている2人組とのあいだは、4ショット内側から切り返されそのまま終わっている。
「見ること」と「見たこと」が撮られているので原初的主観ショット。角度がずれている。
④老人を襲っている2人組とそれを見ている少年とのあいだは、10ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。少年はことさら
「見ること」「見たこと」をしているので原初的主観ショット
⑤その後、逃げる少年と彼を追いかける2人組とのあいだは、4ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。おそらく視認できているように見える距離なので切り返しとする。
⑥死体を隠す男とそれを木の陰から見ている2人(少年と男)とのあいだは、3ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。ここでも
「見たこと」が意識されている。
⑦小屋の中に閉じ込められた少年と外の2人組とのあいだは、7ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。
原初的音声空間の切り返し
⑧その直後も、さらに2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。
原初的音声空間の切り返し
⑨小屋の中の少年とやって来た犬とのあいだは、7ショット内側から切り返されている。
原初的音声空間の切り返し(一部小屋の板が割れていて犬の顔が見えるが)
⑩小屋の中で少年を刺そうとした瞬間、外に駆け付けた金持ちの主人たちに1ショット切り返される。
原初的音声空間の切り返し
●切り返しが①~⑥までスムーズになされている。特にロケーション空間での切り返しは加速的に進化している。
■寄る・引く 少年を小屋に閉じ込めた後、遠くにやって来た農民たちと2人組とが縦の構図で撮られた後、農民たちに寄り、再び引かれて縦の構図に戻っている。
▲平行モンタージュ 20回強。
▲救出のクロス・カッティングがスムーズに撮られている。

■バックライト 金持ちの夫婦の庭でメイドのケート・ブルースに自然光のバックライトが当てられきらきら光っている。
■フェイドアウト ラストシーン。
■THE END 入っている版とそうでないのがある。
■ドナルド・クリスプ 少々乱暴過ぎてグリフィス組には溶け込んでいない。
■ナイフを逆手に握っている ドナルド・クリスプとジョセフ・グレイビルが。
■煙 たばこ、車の土煙、排気ガス、故障した車のエンジンから噴き出す蒸気、
■孤児が養子にされる
■巻き込まれ運動 1911年唯一の巻き込まれ運動が撮られている。
■キャメラの横を通り過ぎる 20ショット。
42(原16)-0-2(手紙)-多用
切り返しと「見ること」の進化
寄る・引く
クロス・カッティング
バックライト
フェイドアウト ラストシーン
1911  THE LONG LORD 
長い道のり 10.21
撮影場所 ニュージャージー州フォートリー
不明 YouTubeで見られるのは80秒のフィルムのみ
■字幕あり。1箇所。
●切り返し
①公園を歩いている女ブランチ・スウィートが歩いて来る男チャールズ・ウェストを見つけた時、5ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。「見ること」と「見たこと」が撮られているので主観ショット。しかし見ている方向は逆なので
原初的主観ショット
②その直後、ベンチに座っている2人とブランチ・スウィートとのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。
③その直後、ベンチの2人と草むらから2人を見ているブランチ・スウィートとのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。「見ること」と「見たこと」が撮られているので
原初的主観ショット
■評 わずか80秒しか現存しないフィルムにこの切り返しが残っている。

■キャメラの横を通り過ぎる 2ショット。
7-0-0-なし
原初的主観ショット
1911 THE BATTLE
戦い 11.14

撮影場所 ニュージャージー州フォートリー、ニューヨーク五番街チャンピオンスタジオ
ちらちら
ライオネル・バリモア(Lionel Barrymore)。1909年バイオグラフに入社(諸説あり)。この作品では撃たれて死ぬ幌馬車の御者を演じている。「FRIENDS(フレンズ)」(1912.9.21)あたりから大きな役で出るようになる。1954年11月15日死去。76歳。
原作エメット・C・ホール。「勇者の赤いバッヂ(The RED BADGE OF COURAGE)」(1951.10.11)の原作はスティーブン・クレインの同名小説。
11  320  111  20.50(このバージョンは再生スピードが遅いので実際は16分くらいで計算すると1ショット8.6秒くらいになる) 北軍兵士の少年(チャールズ・ウェスト)はダンスパーティの後、恋人(ブランチ・スウィート)に見送られながら戦地へと赴くが最初の紛争でパニックに陥って恋人の家へ逃げ込み彼女に軽蔑されてまた逃げ出すと、彼女の家に負傷した将軍(チャールズ・ヒル・メイルズ)が運び込まれる。少年は脱走したことを気づかれずに再び隊へと合流するが、隊は火薬が不足して窮地に陥り娘の家にまで砲火が撃ち込まれる。少年は火薬の補給隊を護衛し火薬を積んだ馬車が火に包まれるとそこに乗り込み危機一髪、立て籠もって防戦していた娘の家に到着する。
■字幕あり。11箇所。
■寄る
①序盤、少年が出征する時、少年と娘の2人に寄っている。
近代的寄り 終盤、立て籠もっている小屋の中で部屋の隅に座っているブランチ・スウィートに寄る。室内を分割する寄りは、れによって残された空間へと切り返されることの前提となる。
■ウエスト・ショット 伝令を受けて出発する少年を窓から見ている娘がウエスト・ショットに近い近景で撮られている。
●切り返し
①ダンスパーティの庭でベンチに座っている恋人たち(ブランチ・スウィート・チャールズ・ウェスト)と彼らを呼ぶ兵士と女とのあいだは、2ショット内側から切り返されている。

②外にやって来た兵士の一群と家の中でダンスをしている者たちとのあいだは、5ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。家のドアは開いているので切り返しとする。原初的ではある。室内と室外。
③戦火が迫り家の前まで戻って来た恋人と家の中の娘とのあいだは、3ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。窓から見ているので切り返しとする。窓空間
④その直後、家の中に入った娘と外の少年たちとのあいだは、3ショット内側から切り返されそのまま終わっている。最初の2ショットはドアが閉まっているので原初的音声空間の切り返し。3ショット目は窓から見ているので窓空間の切り返し。
⑤撃たれて倒れた兵士と草むらに隠れてそれを見ている少年とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット「見ること」「見たこと』を強調して撮られている。角度的には合っている。ロケーション。
⑥娘の家の窓から逃げた少年と家の中の娘とのあいだは、1ショット内側から切り返されている。室内と室外。
⑦家の中の娘と運び込まれる将軍たちとのあいだは、3ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。ドアは開いているので切り返し。室内と室外。原初的ではある。
⑧外で伝令を受け取る少年とそれを窓から見ている娘とのあいだは、3ショット内側から切り返されそのまま終わっている。窓空間。「見ること」と「見たこと」が撮られているのが角度がずれているので原初的主観ショット
⑨少年を草むらに隠してから発砲する兵士と敵の兵士たちとのあいだは、3ショット内側から切り返されそのまま終わっている。
⑩出発する補給隊とそれを見ている少年とのあいだは、1ショット内側から切り返されている。「見たこと」は撮られている。
⑪火薬を積んだ馬車とそれを見ている少年とのあいだは、2ショット内側から切り返されている。「見ること」と「見たこと」が撮られている。角度もあっているので主観ショット。馬車の御者はライオネル・バリモアらしい。
★評 切り返しは室内が関係すると途端に原初的になる。
■1シーン数ショット 一列になって発砲している兵士たちを横から、後ろから撮っている。戦争シーンになるといつもこのように撮られている。キャメラが複数あるのかもしれない(マルチキャメラ)。
■備考  戦場から逃げかえった兵士が気づかれることなく戦地に戻り手柄をあげている→ジョン・ヒューストン「勇者の赤いバッヂ(The RED BADGE OF COURAGE)」(1951.10.11)
▲平行モンタージュ 20回未満。
■超大作 出征する兵士の隊列が100メートルほどある。大砲、戦士の数、
▲クロス・カッティング
■煙 大砲、銃、たばこ
■立て籠もること 娘の家に
■人間運動と改心 少年は恋人に叱咤されて改心したようにも見えるがしかしその後、少年は隊へ戻った後も戦友の戦死に怯え、また勇敢に立ち向かい、また怯え、また勇敢に、、を繰り返していて決定的な改心の瞬間が撮られていない。また彼を叱咤する娘もまた苦悩し、泣き笑い、叱咤し、を反復させている。どうやらこれは娘の愛と少年の経験による成長物語として撮られているようであり改心ではなく3-Aによる「改心していない」に接近している。
■キャメラの横を通り過ぎる 19ショット。
25(原2)-0-0-多用
1シーン数ショット
近代的寄り
超大作
「勇者の赤いバッヂ」
クロス・カッティング
1911 SAVED FROM HIMSELF
彼自身から救われる 12.9

撮影場所 ニュージャージー州イングルウッド
ちらちら 11  328  71  13  ホテルマンのジョー(ジョセフ・グレイビル)は婚約者(メイベル・ノーマンド)のためにも大金を得ようとして古い友人(ウィルフレッド・ルーカス)に誘われた株式に手を出し数か月後には2000ドルの負債を負い、或る夜、ホテルの顧客(ウィリアム・J・バトラー)の預けた大金の入った金庫から金を盗むが不審に思って駆け付けた婚約者に説得され、そこへ虫の知らせで起きて来た顧客に金を出してくれと言われて金庫の中から金を出したふりをして盗んだ金を彼に渡し、恋人に感謝して部屋に戻ると、母親によってベッドの上に置かれた白い花を手に取り、眠っている母親にキスをしてから、自室に戻ってその花をじっと見つめる。
■字幕あり。4箇所。
●切り返し
①ホテルのロビーで金を数えている男たちと隣の部屋からそれを見ているジョーとのあいだは、5ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。原初的二間続きの切り返し「見ること」と「見たこと」が撮られているので原初的主観ショットに近い。
②さらにその直後、ロビーの男たちと部屋に戻って彼らを見ているジョーとのあいだは、3ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。原初的二間続きの切り返し原初的主観ショットでもある。
③その後、ロビーの社長(チャールズ・ヒル・メイルズ)と隣の部屋の恋人たちとのあいだは、合わせて2ショット内側から切り返されている。原初的二間続きの切り返し
④ホテルの自室の母親と隣の部屋の息子ジョーとのあいだは、3ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。原初的二間続きの切り返し。見つめ合っているようで見つめ合っていないように見える。
⑤夜のホテルの二階の廊下のジョーと部屋の中の恋人とのあいだは、5ショット内側から切り返されている。原初的音声空間の切り返し。ブランチ・スウィートはドアの隙間から見ているようでもあるがどちらにしても原初的。
▲平行モンタージュ 20回程度。
■室内劇
■階段 上る、あり。
★膝上
■フェイドアウトでTHE END
■ラストシーンは恋人との抱擁ではなく母親の置いた花を見つめている。。
■人間運動と改心 盗みを働いたジョーは婚約者に咎められ改心している。彼は最初は説得に応じなかったが神に祈っている母親の平行モンタージュが入った後、よろけるように椅子に倒れ込んで泣いている(モンタージュが入って改心するのは「ベッスリアの女王(JUDITH OF BETHULIA)」(1913/1914.3.8)。この改心は外からの説得ではなく、ふらついて椅子に倒れ込み泣くという衝動的行動によってなされている。2-B
■キャメラの横を通り過ぎる 3ショット。
15(原15)-0-0-多用。
原初的二間続きの切り返し
原初的主観ショット
フェイドアウトでTHE END

階段のぼる。
1911 LOVE IN THE HILLS
丘の愛 10.28

撮影場所 ニューヨーク州サファーン
脚本デル・ヘンダーソン YouTubeで1分強見ることができる。
5.2  690  14  1.13 男らしい男(ウィルフレッド・ルーカス)、街の男(ジョセフ・グレイビル)、怠惰なバイオリン弾き(チャールズ・ウェスト)の三人に求婚された山の娘(ブランチ・スウィート)の物語とのこと。
■字幕あり。1箇所。
●切り返し
①山の娘(ブランチ・スウィート)と男らしい求婚者(ウィルフレッド・ルーカス)とのあいだは、4ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。見つめ合う視線の切り返し
②その直後、2人のあいだは6ショット内側から切り返されそのまま終わっている。逆から切り返されている。逆からの切り返し「起源」見つめ合う視線の切り返し
■バックライト ブランチ・スウィートの髪に自然光で。特に切り返し②の最後にアイリスに囲まれたように黑で縁取られた木陰から顔を出すブランチ・スウィートのバックライトに照らされた風に揺れる髪が喧嘩別れをしたあとふと笑みを浮かべる娘の鼓動となって画面を揺らしている。「最初の魅惑(THE PRIMAL CALL)」(1911.6.24)切り返し⑥をさらに進めたロケーションにおける見つめ合う視線のエモーショナルな瞬間が撮られている。
■風 ブランチ・スウィートの背後の草木、髪
■振り向くこと ブランチ・スウィートは振り向きざまウィルフレッド・ルーカスに罵声を浴びせている。
■キャメラの横を通り過ぎる 2ショット。
★1ショット5.3秒 1分に限るとこれまでの最速記録。
★これまた僅か1分で凄まじい細部の連発。

切り返し9ショット。
逆からの切り返しの「起源」
バックライトの「進化」
見つめ合う視線の切り返し
1911 THROUGH DARKNED VALES
暗い谷を越えて 11.11

撮影場所 ニュージャージー州フォートリー
ちらちら
脚本スタナー・E・V・テイラー
12  296  42  8.30秒 グレース(ブランチ・スウィート)は彼女を愛している勤勉なデイブ(チャールズ・ウェスト)ではなく派手なハワード(ジョセフ・グレイビル)を選ぶが、料理をしている時にガスが爆発して失明しハワードは去ってゆく。一方、デイブもまた会社で(上司に声をかけられているので会社と思われる)夜まで書類仕事を続けて目を悪くして失明し、ちょうど居合わせた掃除婦(? ケート・ブルース)に連れられ病院で医者に見せたところ(なぜ掃除婦が付き添うのか?)治ると言われるがその同じ病院の隣の部屋へグレースが両親(デル・ヘンダーソンとグレース・ヘンダーソン)に付き添われてやって来て彼女も医者(チャールズ・ヒル・メイルズ)から治ると言われたものの治療するお金がないと嘆いている声を隣の部屋で聴いたデイブは自分の金を密かにグレースの父親に託しグレースだけが治療して目が見えるようになる。他に女のできたハワードは復縁を拒み、父親から事情を聞いたグレースはふと窓辺の椅子に座って外を眺める。デイブを診た医者→ウィリアム・J・バトラー。
■字幕あり。1箇所。少ない。
■膝上
●切り返し
①病院でカーテンに仕切られた隣同士の部屋にいるデイブたちとグレースたちとのあいだは、7ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。原初的音声空間の切り返し。デイブを主として計測している。
②ほうきを背負って歩いているデイブと窓辺でそれを見ているグーレスとのあいだは、8ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。原初的主観ショット。「切り返し」という方法を選択することによってエモーションを惹き起こしている。
▲平行モンタージュ 12回ほど。
■掃除婦(ケート・ブルース・母親か? 会社で掃除をしているので掃除婦にしか見えないが病院に付き添い終盤、家にいるので母親か?) 
■ライトを点滅させる デイブは目が見えないのを確かめるためにデスクのライトを点滅させる。
■風 ラストシーンの路地の木々が大きく揺れている。
■ロングショット ほうきを担いで路地を歩いているチャールズ・ウェストを
■フェイドアウト ラストシーン
■ラストシーンが歩いてゆく後ろ姿
■盲人
■人間運動と改心 娘は一度振った男を再び愛している。ここでは娘が窓の外の男をじっと見つめたあと抑えきれずに走り出すという衝動的な視覚的細部が撮られている。2-B
■キャメラの横を通り過ぎる 4ショット。
13(原13)-0-0-多用
カーテンと切り返し
盲目
掃除婦
ライト点滅
フェイドアウト
ラストシーンが歩いてゆく後ろ姿
ロングショット
1911 A WOMAN SCORNED
軽蔑された女(フィルムが欠けているので果たして「軽蔑された」と訳して良いか不明だがひとまずこのように訳しておく) 11.25
撮影場所 ニュージャージー州フォートリー
  YouTubeで1分強見られる。夜、医者(ウィルフレッド・ルーカス)の家に2人組の泥棒(アルフレッド・パジェットとアドルフ・レスティーナ)が入り妻(クレア・マクドウエル)と娘(イネズ・シーベリー)の運命やいかに、という物語とのこと。
●切り返し
①泥棒2人組とその気配を感じている医者の妻とのあいだは、8ショット目で同一画面に収められるまで7ショット内側から切り返されている。3、4ショット目は鍵穴から覗いているので原初的二間続きの切り返しとなる。それ以外は一部屋あいだに挟んでの原初的音声空間の切り返し
近代的寄り・引く ベッドから駆け下りてきた少女(イネズ・シーベリー)からキャメラはカッティング・イン・アクションで引かれ再びベッドに飛び乗る少女へキャメラがカッティング・イン・アクションで寄っている。この寄りはそこから開いている空間へ切り返しに十分な鋭角的寄りであり近代的寄りである。実にスピーディなカッティング・イン・アクションがなされている。
★膝上 クレア・マクドウエルが戸棚から凶器となる置き物を逆手に握るとき、殆どウエスト・ショットに近い近景から撮られている。
■階段 のぼる。駆け上がる。
■キャメラの横を通り過ぎる 3ショット。
★1分でスゴイ細部が撮られている。
切り返し
近代的寄り
カッティング・イン・アクション
ウエスト・ショット
寄る・引く
階段駆け上がる
1911  THE MISER’S HEART
守銭奴の心 11.1
撮影場所 ニュージャージー州フォートリー
ちらちら
イネズ・シーベリー(Ynez Seabury)。
オレゴン州出身。この作品で映画デビュー。その後、舞台と映画で活躍。1973年4月11日死去。65歳。
12  301  81  16.10
小さなアパートに住んでいる小さな少女(イネズ・シーベリー)は母親が病気になり1人で遊んでいる時、同じアパートの二階に住む守銭奴(アドルフ・レスティーナ)の落としたお菓子を拾ったことで彼と仲良くなる。その頃、街から追放された泥棒のジュール(ライオネル・バリモア)は配達人(ロバート・ハーロン)からパンをひったくり逃げ込んだアパートの庭で少女にパンを食べられてしまい少女と仲良くなる。時を同じくして守銭奴の噂を聞きつけた2人組の強盗(ウィルフレッド・ルーカスとチャールズ・ヒル・メイルズ)はアパートの屋上から二階の守銭奴の家に忍び込み、たまたま部屋にいた少女を守銭奴の娘と勘違いして(?)ロープで縛って窓から吊るしそのロープをローソクの火で切るぞと守銭奴を脅して彼から金庫の番号を聞き出そうとするが、それをアパートの下から見いてた泥棒(バリモア)は警察へ駆け込んだもののさきほどのひったくりの件で自分が逮捕されてしまい、執拗に少女の危険を訴える泥棒に半信半疑でついて行った警官たちは吊るされている少女を見て強盗たちを逮捕し、守銭奴は少女を母親の元へ連れ帰すと事情を話して母親にお金を渡し薬も人形も買って差し上げますと言って帰ってゆき、泥棒のジュールはござを蒲団代わりに路上で眠りにつく。
■字幕あり。8箇所。
■原初的寄る・引く ローソクとロープへ2回寄る。別に撮られているように見える。
■引く 少女がアパートの窓の外へ吊るされた時、大きくロングショットへ引かれている。
●切り返し
窓の外に吊るされている少女と中の者たちとのあいだは、4ショット内側から切り返されている。窓空間。
②その直後、吊るされている少女と落ちてきた人形を見て少女を見上げる泥棒とのあいだは、3ショット内側から切り返されそのまま終わっている。
上下の切り返し
③その後、ロープをローソクの火で切るぞと脅かす泥棒たちと窓の外に吊るされている少女とのあいだは、1ショット内側から切り返されている。窓空間
④守銭奴が金庫の番号を自白した後、窓の外に吊るされている少女とのあいだは、2ショット内側から切り返されている。窓空間
⑤その直後、窓から中に戻される少女とそれを下から見ている警官たちとのあいだは、3ショット内側から切り返されそのまま終わっている。
上下の切り返し
▲平行モンタージュ 30箇所弱。
▲クロス・カッティング 救出の。

■気づかないことにする 部屋に忍び込んできた背後の娘に守銭奴はずっと気づかない。
■THE END バイオグラフのマークの下に。
■落とすこと 守銭奴が階段で落としたお菓子を少女が拾って食べることから2人の関係が始まる。
■人間運動と改心
①守銭奴(アドルフ・レスティーナ) 彼はそれまで少女に対して意地悪していたわけではなく彼が改心しているかは微妙だがどちらにせよ少女を見ること、触れること、パンをもらうこと、などの物語因果とは無関係な衝動によって彼は少女の母親に援助を申し出ている。2-B
②泥棒(ライオネル・バリモア) 彼は少女にパンを食べられる、パンをあげる、そのパンを少女は母親に持って行く、といった関係が撮られたあと、少女が窓の外に吊るされるのを見て衝動的に警察へ駆け込んでいる。そこには改心する暇も与えられておらず彼の人格に齟齬を生じているように見えず、もともと彼はそういう男だったのだろうという「三人の名付親(3 GODFATHERS)」(1948)のジョン・ウェインのような男に撮られている。3-A。
■キャメラの横を通り過ぎる 8ショット。
13-0-2(ロープとローソク)-多用
階段
原初的寄る・引く・ローソク
上下の切り返し
クロス・カッティング
ロングショット
1911 THE FAILURE
失敗 .12.2
撮影場所 ニュージャージー州イングルウッド
ちらちら 12.7  284  56  11.50秒 経理の職を失った(情けない)男(ウィルフレッド・ルーカス)は恋人(リリー・ケイヒル)にも愛想をつかされ自分を高めなければとニューヨークのダンスホールに職を得てそこで昔の経理の上司(アドルフ・レスティーナ?)に襲われている女(ドロシー・バーナード)を助けるが、すぐに酒を飲んでしまい女に叱責され慰められる。数時間後(ここでフェイドイン)、男が眠りから覚めると叔父の農場を相続したという手紙が届くがそこへ行くまでの金のない男は女が身に着けている指輪を売って作った金をプライドが許さないと断り、それではと女はその金を酒場の支配人(J・ウォルサム)が貸したように細工をして男に渡し男はまず昔の恋人の家に行くが既に新しい男がいるのを見て苦笑し酒場の女の元へ帰って2人は農場を耕してゆく。
■字幕あり。13箇所。
■フェイドイン 
■椅子がテーブルの上に逆さに乗せられている「起源」。酒場の休憩時間で叔父からの手紙を見ている時。
■古典的デクパージュ的人物配置 男が昔の上司を撃退した後、椅子に座っている男とテーブルに座っている女とが古典的デクパージュ的人物配置になっている。指摘すべきはこれがインスタントな撮り方云々ではなく縦の配置によって室内空間が拡げられていること
●切り返し
①カーテンと切り返し
酒場で歌っている男とそれを見て聞いている女とのあいだは5ショット内側から切り返されそのまま終わっている。最初の2ショットはカーテンを開けて見ているので原初的二間続きの切り返し、かつ「見ること」と「見たこと」をしているので原初的主観ショット。あとの3ショットは原初的音声空間の切り返し。未だカーテンという障害物をあいだに挟んでしまう環境から抜け出せない。
②酒を飲んでいる男とカーテンを開けてそれを見ている女とのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。原初的二間続きの切り返し「見ること」と「見たこと」が撮られているので原初的主観ショット
③昔の恋人の家の中の2人(恋人と婚約者)とそれを窓から見ている男とのあいだは、3ショット内側から切り返されそのまま終わっている。窓空間。「見ること」と「見たこと」が撮られているので原初的主観ショット
▲平行モンタージュ 数回。
■室内劇
★評 室内になると原初的になる。
■線 恋人にふられたあと、起伏のある道を歩き去るウィルフレッド・ルーカスが線の彼方に消えてゆく。
■遺産相続
■フェイドアウトの手前でTHE END
■ラストシーンが歩き去る後ろ姿で終わる
■人間運動と改心 男は切り返し③で昔の恋人に新しい男がいるのを見てふらつき苦笑いしながら改心し酒場の女のもとへ走っている。ただ『まじまじと見つめること』はしておらず少々軽薄でもある。だが心理的なショットは撮られておらずそれに代えてふらつき苦笑いするショットが撮られており人格的齟齬を生じているようにも見えず終始いい加減な男として一貫している。3-A。どうもこの作品は時間に追われて撮られたように見えてしまう。
■キャメラの横を通り過ぎる 4ショット。
9(原9)-0-0-あり
カーテンと切り返し
フェイドイン
椅子がテーブルの上に逆さに乗せられている「起源」
THE ENDとフェイドアウトの手前
ラストシーンが後ろ姿
遺産相続
1911 AS IN A LOOKING GLASS
鏡の中の如く12.16
  YouTubeで1分強見ることができる。酒を飲んでは暴力をふるう父親(ウィルフレッド・ルーカス)の真似をしている息子(エドナ・フォスター)を見て父親が改心する物語とのこと。ここに見ることができるのはそれとは関係のない子供が祖父にいたずらをするシーン。
■二間続きの部屋が壁を挟んで1ショットで撮られている。やぶれかぶれではないにしても二間続きの部屋におけるコミュニケーションの困難さが見えている。このコメディは壁で仕切られた二間続きの部屋を同時に見せる設定になっており、最早ここには二間続きの部屋に対するあきらめにも似た哀愁すら漂っている。この二間続きの部屋同時撮影は「THE GIRLS AND DADDY(姉妹とパパ)」(1909.1.30)でもなされている。
二間続きの部屋を同時に撮る
1911  FOR HIS SON
彼の息子のために 1911/1912.1.20
撮影場所 ニュージャージー州フォートリー
はっきり1ショット。
9分過ぎ。父親のチャールズ・ヒル・メイルズが立ち上がり、ウエスト・ショットになるまで身をかがめキャメラを正面から見据えながら身振り手振りで力説する。グリフィス初のキャメラを正面から見据えるショットは「MONEY MAD(金の亡者)(1908)に譲るとしてもはっきりと演出としてキャメラを正面から見据えるショットが撮られたのはこれが初めて。
チャールズ・ヒル・メイルズ(Charles Hill MailesCharles Hill Mailes)。1909年頃からグリフィス作品の「FADEDLILLIES(色褪せたゆり)」(1909.6.12)など小さな役で出演しているが大きな役はこの頃から。彼は1906年クレア・マクドウエルと結婚していてTHE HOUSE OF DARKNESS(暗黒の家)」(1913.5.3)では夫婦で歴史的な近代的切り返しのシーンを演じている。1935年まで290本の映画に出演。1937年2月17日死去。66歳。
12.7 284 71 15  贅沢好きな息子(チャールズ・ウェスト)の欲求を満たすために医者の父親(チャールズ・ヒル・メイルズ)はコカイン入りの「ドポコーク」というソフトドリンクを開発して大成功を収め息子もまた十分な金を得るが医者の秘書(ドロシー・バーナード)がドリンク中毒になり息子もまたその成分を知ってコカインを直接接種するようになる。それを知って息子のフィアンセ(ブランチ・スウィート)は彼を遠ざけ息子は同じくコカイン中毒となった秘書の家に逃げ込み共に廃人となり息子は息絶える。ドロシー・バーナードの母親→グレース・ヘンダーソン。当時のコカ・コーラなどのドリンク業界が薬物を混入させていることを扱ったテーマとのこと。
■字幕あり。21箇所。
■ウエスト・ショットあり
●切り返し
①ドラッグストアの売店とそれを見ている父親とのあいだは、3ショット目に同一画面に収められるまで2ショット内側から切り返されている。。字幕を挟んで「見ること」と「見たこと」が撮られているので原初的主観ショット室内における切り返し。これは1部屋の中で撮られているので近代的切り返しとなるか。エスタブリッシング・ショットが撮られていないので全体を把握することはできないがこのドラッグストアは通常の1室とは違った横長の空間であり1室の角にキャメラを食いこませて撮られる近代的切り返しではない。ただ二間続きの部屋でもない。これは二間続きの部屋同士でもそのあいだの仕切りを取り払って1つの横長の空間にすれば室内においても原初的ではない切り返しが撮れることを現わしている(原初的主観ショットは室内特有の出来事ではないのでここでは関係ない)
★原初的寄る・引く
①コカイン入りのビンへ原初的寄る・引く。二回あり。
②コカインのビンに指を入れて粉をつける。クローズアップの中に指を瓶の中に入れて出す動作が撮られている。引くはカッティング・イン・アクション気味。
▲平行モンタージュ 10箇所ほど。
★膝上
■室内劇
■フェイドアウト ラストシーン
■THE ENDがバイオグラフの図柄のマークと共に入る。
■母親の不在 母親代わりの父親が息子を甘やかして死に至らせる。
■煙 たばこ
■人間運動
■キャメラの横を通り過ぎる 4ショット。近景あり。
2-0-3(瓶)-あり
キャメラを正面から見据える
横長の一室と室内の切り返し。
ウエスト・ショット
瓶のクローズアップ。
THE ENDがバイオグラフの図柄とともに入る「起源」
母親の不在
1911 THR TRANCEFORMATION OF MIKE マイクの改心(1911/1912.1.27) ちらちら
クリスティ・カバンヌ(Christy Cabanne)。セントルイス生まれ。1908年舞台で俳優兼監督としてキャリアを始め1911年グリフィスA ROMANY TRAGEDY(1911.6.3)で映画出演、以降、1915年まで映画に出演、同時に監督として1948年まで160本以上の映画を撮る。1950年10月15日死去。62歳。
7.3  494  118  14.20 追跡から逃げて長屋の部屋を借りたギャング(ウィルフレッド・ルーカス)は二階に住む母親のいない家族(父ウィリアム・J・バトラー、弟エドナ・フォスター)の娘(ブランチ・スウィート)とふとしたことから知り合い彼女に付きまとう男(クリスティ・カバンヌ)を追い払う。ダンスパーティで再会した2人だが友達からギャングの悪い噂を聞いた娘は彼とのダンスを断るがギャングは娘とダンスをしている男を追い払い2人はやっと打ち解け握手する。翌日の午後、スラム街から借金を回収して戻って来た娘の父親をギャングは娘の父親とは知らずにつけて行き彼の財布をすり取ろうとするが息子がやって来て失敗し今度は部屋に押し入り財布を強奪しようとするがそこでそこが初めて娘の家だと知り、男は盗んだ財布を娘に返しやって来た警官たちに自首しようとするが娘に止められ逃がされる。2人は階段で見つめ合い男は去ってゆく。
■字幕あり。6箇所。
●切り返し
①ダンスパーティ会場へやって来た娘と隣室から彼女を見ているギャングとのあいだは、3ショット目に同一画面に収められるまで2ショット内側から切り返されている。原初的二間続きの切り返し「見ること」と「見たこと」が撮られているので原初的主観ショットでもある。
②他の男とダンスをしている娘とそれを隣室から見ているギャングとのあいだは、7ショット目で同一画面に収められるまで内側から切り返されている。原初的二間続きの切り返し「見ること」と「見たこと」が撮られているので原初的主観ショット
③その後、帰ってゆく娘たちと隣室のテーブルで泣いている男とのあいだは、1ショット内側から切り返されている。原初的二間続きの切り返し
④翌日の午後、長屋の酒場の父親と廊下のギャングとのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。ドアが少し開いているようなので原初的二間続きの切り返し。さらに外の息子とのあいだも1ショット切り返されている。これは原初的音声空間の切り返し
⑤階段で転んだ父親と下のギャングとのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。階段分割による上下の切り返し「起源」室内
⑥その直後、階段を上って来る息子と階段の上の2人とのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。階段分割による上下の切り返し室内
⑦娘の家に押し入ろうとするギャングと中の娘たちとのあいだは、他のショットを挟んで合わせて13ショット程度内側から切り返されている。原初的音声空間の切り返し
⑧やって来てドアを開けようとする警官たちと家の中の2人(娘とギャング)とのあいだは、合わせて5ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。原初的音声空間の切り返し。これ以外にもあるがどれも原初的。
⑨その後、階段を降りて行った男と上の娘とのあいだは、3ショット内側から切り返されそのまま終わっている。階段の上下の切り返し。見つめ合う視線の切り返し室内
★⑨において室内での見つめ合う視線の切り返し「起源」が撮られている。息苦しかった室内同士の横と横との関係ではなく階段を挟んで上と下とのあいだで階段分割して見つめ合う視線の切り返しを実現させている。これは切り返し⑤と⑥でも実践されているように1空間を正面から撮る室内撮影ではなく、1空間の階段を上下に分割し空間を上にもう一つ拡げることによって上下の切り返しを実現させそれによって室内における見つめ合う視線の切り返し実現させている。これは1部屋のさらにその一角にキャメラが入り込んで為される近代的切り返しではない。上の空間と下の空間の二間続きによる切り返しとして原初的二間続きの切り返しのようでもあるが仕切りがないことにおいて原初的二間続きの切り返しとは異なっている。
■階段を上と下に2つに分割して撮る階段分割の「起源」
切り返し以外でも3回、階段分割がリズムよく撮られている。
近代的寄り ギャングが娘の家のドアを押し開けようとするとき、キャメラが部屋の内部へ入り斜めの近景からギャングを5ショット捉えている。寄りの瞬間は撮られてはいない「寄り✕」だが、が、近代的切り返しの前提となる近代的寄りである。
■室内劇 カリフォルニアからニューヨークへ帰って来たグリフィスはここのところ室内劇が続いているが広大なカリフォルニアではなく窮屈で雨降りのニューヨークだからこそ室内劇における階段分割の切り返しが生まれたのかもしない
★膝上
▲平行モンタージュ 15回ほど。
■ドアを拳で叩き割る
■洗濯用のエレベーターが内部で撮られている。
■フェイドアウト ラストシーン
■母親の不在 言及あり
■落とすこと 2人の出会いはぶつかって買い物かごをを落とすこと
■人間運動と改心 男は押し入った部屋で娘をまじまじと見つめて改心している。そして自首しようとするが娘に説得されるとすぐにまた考えを改め洗濯用のエレベーターに警官をおびき寄せろと娘に指示してドアの陰に隠れて逃亡しているが彼の運動に知的な起伏はなく人格的齟齬を生じていない=改心していない=ギャングはギャングである=3-Aということになる。どちらにせよ知的に考える時間は撮られていない。
■キャメラの横を通り過ぎる 5ショット。
33(29)-0-0-多用
寄り
母親の不在 言及在り
フェイドアウト ラストシーン
階段分割の「起源。
室内の上下の切り返し
室内での見つめ合う視線の切り返しの「起源」
近代的寄り
ニューヨークでの撮影
1911 BILLY’S STRATAGEM
ビリーの策略 1911/1912.2.10
撮影場所 ニュージャージー州コイツビル
ちらちら 7.2  501  110  13.10秒 森のはずれに砦を作って住んでいる入植者たちは火薬2樽を購入したあと父親(ウィルフレッド・ルーカス)は森に伐採に行き母親(クレア・マクドウエル)は彼に弁当を届けに行く。留守を預かった祖父の許しを得て狩りに出た孫のビーリー(エドナ・フォスター)と幼い妹(イネズ・シーベリー)はブランデーを飲んで酔っぱらったインディアンたちに出くわして砦まで追いかけられビリーは立て籠もった部屋に火薬を仕掛けて窓から妹と飛び出しぐるりと回って表からドアに鍵をしてインディアンたちを閉じ込めると火のついた導火線が火薬に引火し小屋は大爆発に包まれインディアンたちは逃げ出しビリーたちは駆け付けた両親と抱擁する。
■字幕あり。7箇所。
●切り返し
①狩りに出かけた兄妹とインディアンたちとのあいだは、少年たちが逃げだすまでの12ショット内側から切り返されそのまま終わっている。見つめ合う視線の切り返し。最後の2ショットは追っかけ平行モンタージュかも知れない。
②砦の外から迫って来るインディアンたちと中から射撃するビリーとのあいだは、4ショット目に大きく俯瞰に引かれて同一画面に収められるまで内側から切り返されている。視線が通じているので切り返し。
③その直後、2ショット内側から切り返されている。
原初的音声空間の切り返し
④その後、小屋まで迫って来て扉を開けようとするインディアンたちと小屋の中のビリーたちとのあいだは、3ショット内側から切り返されている。原初的音声空間の切り返し
⑤さらに小屋の中まで迫って来たインディアンたちと立て籠もって火薬の仕掛けをしているビリーたちとのあいだは、5ショット内側から切り返されている。原初的音声空間の切り返し
⑥その後、外に逃げたビリーたちと火薬を仕掛けた部屋とのあいだは、2ショット内側から切り返されている。原初的音声空間の切り返し
⑦火薬を仕掛けた部屋と隣室のインディアンたちとのあいだは、合わせて2ショット内側から切り返されている。原初的音声空間の切り返し
⑧爆発した小屋とその音を聞いて駆け付ける者たちとのあいだは、4ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。原初的音声空間の切り返し。音が主として切り返されている。
■俯瞰 インディアンに追われて砦へ逃げ込んだとき、大きく俯瞰のロングショットへと引かれ、再び寄っている。引く・寄る。1シーン数ショット。
■部屋から部屋への移動がめまぐるしく撮られている。
■鍋から肉の塊を取り出しテーブルの上に置く。生々しいショットの「起源」
▲平行モンタージュ 15回超。
■フェイドアウト ラストシーン
■立て籠もること 
■煙 暖炉の鍋、たばこ、たき火、火薬爆発
■人間運動か巻き込まれ運動か 子供たちの映画なので巻き込まれ運動のようにも見えるが少年は火薬を仕掛けて小屋の反対側へ回りインディアンたちを出し抜いて戸の鍵を閉めるという極めて知的なことをしているので人間運動となる。
■キャメラの横を通り過ぎる 14ショット。
30(原14)-0-0-多用
俯瞰→引く・寄る
ロングショット
部屋から部屋へのめまぐるしい移動
鍋から肉の塊を取り出しテーブルの上に置く。
フェイドアウト
1911 THE SUNBEAM
日光 1911.12/2.24

撮影場所 ニューヨーク市
ちらちら 10.6  340  85  15 殺伐とした小さな長屋の二階には寝たきりの母親(ケート・ブルース)と小さな娘(イネズ・シーベリーべ)が住み、1階には廊下を挟んで気難しい独身男(デル・ヘンダーソン)とツンとした独身女(クレア・マクドウエル)がそれぞれ住んでいる。誰にも遊んでもらえず退屈な少女は下へ降りて来て独身女に追い払われるが彼女の部屋に入り込みキスをした手で彼女の手に触れて彼女をなごませ、彼女のヘアパフを座布団の下に隠して部屋を出て行くと、そこにやって来た独身男にも追い払われるが勝手に彼の部屋に入り込んで彼を怒らせ、これをくれてやるから出て行けと独身男にもらったコインを床に叩きつけ、こんなものをもらいに来たわけではありません、失礼いたしましたと礼儀正しく部屋を出て行こうとしておろおろしている独身男の手に間接キスをして男をなごませる。そこへパフを探しに独身女がやって来ると子供たちのいたずらによって猩紅熱検疫標識(感染症危険ということか)の貼り紙が独身男の部屋のドアに貼られやって来た警官によって3人は部屋に閉じ込められる(隔離される)が揺り椅子に座り少女を膝に乗せた男と家事をしている女は束の間の密室で心を通わせてゆく。貼り紙がいたずらと分かり解放された3人は少女を二階の部屋に送って行くと母親は既に死んでいる。男と女は孤児となった少女と3人で暮らしていこうと誓いあう。
■字幕あり。9箇所。
●切り返し 
①廊下で花をやり取りする恋人たちとそれを見ている独身男とのあいだは、3ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。原初的二間続きの切り返し
②ドアを引っ張り合う独身男と独身女とのあいだは、4ショット目で同一画面に収められるまで内側から切り返されている。3ショット目で2人は見つめ合っており室内における見つめ合う視線の切り返しとなる。二間続きではなくそこに1空間挟んで三間続きにすると『見つめ合う視線の切り返し』が撮れてしまう。それ以外は原初的音声空間の切り返し
③階段を上って振り返る独身女とそれを下から見上げている独身男とのあいだは、3ショット内側から切り返されそのまま終わっている。上下の切り返しであり室内における見つめ合う視線の切り返し「THR TRANCEFORMATION OF MIKE(マイクの改心)」(1911/1912.1.27)同様階段を上下に分割した空間拡張によって1室内における見つめ合う視線の切り返しが撮られている
④部屋の中の独身女と廊下の少女とのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。原初的音声空間の切り返し
⑤部屋の中の独身男と廊下の少女とのあいだは、4ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。原初的音声空間の切り返し
⑥部屋の中の2人(少女と独身男)とドアをノックする独身女とのあいだは、5ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。原初的音声空間の切り返し
⑦部屋の中の3人(少女と独身女と独身男)と廊下の警官、子供たちとのあいだは、合わせて8ショット程度内側から切り返されている。原初的音声空間の切り返し。微妙なものが多いがどちらにせよ原初的。
■階段分割
★膝上
■室内劇
■落とすこと 独身女は少女に手を触られてほうきを落とす。その後、独身女に抱かれた少女も人形を落とす。
■叩き付けること 独身男からもらったコインを少女は思い切り床に叩き付ける。それによって空気が一変する。
■不可抗力による密室  いたずらによる感染症の貼り紙をマクガフィンとして3人だけの一瞬の不可抗力による空間を作り上げている。→論文成瀬己喜男。
■父親の不在 少女には父親がいない。さらに母親も死んで孤児となる。
■フェイドアウト ラストシーン
▲平行モンタージュ 数回
■揺り椅子 揺れている
■人間運動と改心 少女を邪魔にしていた独身女は手に間接キスをされ少女を抱き上げて改心している。独身男は少女にめぐんでやったコインを地面に叩き付けられ(このシーンはとりわけ衝動的)手に間接キスをされて改心している。どちらも知的なこととは程遠い肉体的衝動によって撮られている。2-B。
キャメラの横を通り過ぎる 1ショット。
24(原20)-0-0-あり
三間続きの部屋と『見つめ合う視線の切り返し』
階段分割による『見つめ合う視線の切り返し』
落とすこと
叩き付けること
父親の不在
フェイドアウト
  1911年を振り返る   1911年に新しく始まったこと
ショット数
1ショット9秒 「女の叫び(LONEDELE OPERATOR)(1911.3.15)
6.7秒 「FIGHTING BLOOD(戦う血)(1911.7.1)
6.3秒 「THE REVENUE MAN AND HIS GIRL(税務署員と少女)(1911.9.23)
近代的寄り
「女の叫び(LONEDELE OPERATOR)」(1911.3.15)9ショット。
FIGHTING BLOOD(戦う血)(1911.7.1)
 2ショット。
「THE ROSE OF KENTUCKY(ケンタッキーのバラ)」(1911.8.26) 3ショット
THE BATTLE(戦い)(1911.11.14)部屋の隅のブランチ・スウィートへ1ショット
「A WOMAN SCORNED(軽蔑された女)」(1911.11.25)1ショット
THR TRANCEFORMATION OF MIKE(マイクの改心)(1911/1912.1.27)5ショット
外側からの切り返し
「His Trust(彼の信頼)」(1911.1.2)
持続による同一存在の錯覚
「THE INDIAN BROTHERS(インディアンの兄弟)」(1911.7.13)
2人クローズアップ
「清き心(ENOCH ARDEN)(1911.6.17)

這うこと
「THE INDIAN BROTHERS(インディアンの兄弟)」(1911.7.13)
「THE LAST DROP OF WATER(最後の一滴)」(1911.7.22)
「THE ROSE OF KENTUCKY(ケンタッキーのバラ)」(1911.8.26)
フェイドイン 
AN ALCADIAN MAID(アルカディアのメイド)(1910.8.6)
THE FAILURE(失敗)(1911.12.2)
アイリス 「A COUNTRY CUPID(田舎のキューピッド)(1911.7.29)
わざと気づかないことにする
「HIS TRUST FULFILLED(彼の信頼は満たされた)」(1911.1.21)
「女の叫び(LONEDELE OPERATOR)」(1911.3.15)
「THE ROSE OF KENTUCKY(ケンタッキーのバラ)」(1911.8.26)
自警団(KKK的覆面)
「THE ROSE OF KENTUCKY(ケンタッキーのバラ)」(1911.8.26)
椅子がテーブルの上に逆さに乗せられている
「THE FAILURE(失敗)」(1911.12.2)
1911年に重ねて撮られていること
クロス・カッティング(すべて成功型)
「女の叫び(LONEDELE OPERATOR)」(1911.3.15)
「FIGHTING BLOOD(戦う血)」(1911.7.1)
「THE LAST DROP OF WATER(最後の一滴)」(1911.7.22)
「A COUNTRY CUPID(田舎のキューピッド)」(1911.7.29)
「THE ADVENTURES OF BILLY(ビリーの冒険)」(1911.10.14)
「THE BATTLE(戦い)」(1911.11.14)
「THE MISER’S HEART(守銭奴の心)」(1911.11.18)
追っかけ平行モンタージュ
THE INDIAN BROTHERS(インディアンの兄弟)(1911.7.13)
FIGHTING BLOOD(戦う血)(1911.7.1)
SWORDS AND HEARTS(剣と心)」(1911.9.2)1ショット撮られている追っかけは最早「追っかけ」ではない。
THE REVENUE MAN AND HIS GIRL(税務署員と少女)(1911.9.23)
THE SQUAWS LOVE(インディアンの女性の恋)(1911.9.9)
階段
SAVED FROM HIMSELF(彼自身から救われる)(1911.12.9)のぼる
A WOMAN SCORNED(軽蔑された女)(1911.11.25) 駆け上がる
THE MISERS HEART(守銭奴の心)(1911.11.18)のぼる
階段分割による上下の切り返し
THR TRANCEFORMATION OF MIKE(マイクの改心)(1911/1912.1.27)
THE SUNBEAM(日光)(1911/1912.2.24)
上下の切り返し(ロケーション)
「THE MISER’S HEART(守銭奴の心)」(1911.11.18) ロケーション
膝上

「われわれはわれらの老人と何をすべきか(WHST SHALL WE DO WITH OUR OLD?)」(1911.2.18)以降、
すべての作品の基本的ショットが膝上ほどになっている
バスト・ショット 
「最初の魅惑(THE PRIMAL CALL)(1911.6.24)ロケーション
THE REVENUE MAN AND HIS GIRL(税務署員と少女)(1911.9.23)
ロケーション
ウエスト・ショット
「女の叫び(LONEDELE OPERATOR)(1911.3.15)9ショット。
「最初の魅惑(THE PRIMAL CALL)(1911)ロケーション
THE REVENUE MAN AND HIS GIRL(税務署員と少女)(1911.9.23ロケーション
THE BATTLE(戦い)(1911.11.14)室内→近代的寄りとなる
A WOMAN SCORNED(軽蔑された女)(1911.11.25)室内→近代的寄りとなる
FOR HIS SON(彼の息子のために)(1911/1912.1.20)室内
2人ウエスト・ショット

「女の叫び(LONEDELE OPERATOR)」(1911.3.15)ロケーション
ロングショット
「FIGHTING BLOOD(戦う血)」(1911.7.1)一軒家を小高い丘から
「THE SQUAW’S LOVE(インディアンの女性の恋)」(1911.9.9)ノーマンドが川へ落下する時
「THROUGH DARKNED VALES(暗い谷を越えて)」(1911.11.11)ほうきを担いだチャールズ・ウェストを
「THE MISER’S HEART(守銭奴の心)」(1911.11.18)窓の外に吊るされた少女を
「BILLY’S STRATAGEM(ビリーの策略)」(1911/1912.2.10)俯瞰で砦を
寄る・引く(近代的寄りは除く)
「女の叫び(LONEDELE OPERATOR)」(1911.3.15) 引く
「清き心(ENOCH ARDEN)(1911.6.17)寄る1、引く3
「FIGHTING BLOOD(戦う血)」(1911.7.1)
1-1
THE LAST DROP OF WATER(最後の一滴)(1911.7.22)、引く2
THE ROSE OF KENTUCKY(ケンタッキーのバラ)(1911.8.26)室内引く、ロケーション
THE REVENUE MAN AND HIS GIRL(税務署員と少女)(1911.9.23)
THE SQUAWS LOVE(インディアンの女性の恋)(1911.9.9)引く・寄る
THE ADVENTURES OF BILLY(ビリーの冒険)(1911.10.14)寄る・引く
THE BATTLE(戦い)(1911.11.14)室内。寄る
A WOMAN SCORNED(軽蔑された女)(1911.11.25)室内。引く
THE MISERS HEART(守銭奴の心)(1911.11.18)吊るされた少女から大きく引く、
「BILLY’S STRATAGEM(ビリーの策略)」(1911/1912.2.10)俯瞰から寄る・引く
カッティング・イン・アクション 
「女の叫び(LONEDELE OPERATOR)(1911.3.15)立つ→引くの原型
FIGHTING BLOOD(戦う血)(1911.7.1)寄る・引く
THE LAST DROP OF WATER(最後の一滴)(1911.7.22)2回引く
THE ROSE OF KENTUCKY(ケンタッキーのバラ)(1911.8.26)寄る・引く
THE REVENUE MAN AND HIS GIRL(税務署員と少女)(1911.9.23)寄る
A WOMAN SCORNED(軽蔑された女)(1911.11.25)
切り返し
(原初的音声空間の切り返し、原初的二間続きの切り返しを含まず原初的主観ショットを含む)

His Trust(彼の信頼)(1911.1.2)①②③④ロケーション⑤⑥主観ショットロケーション
HIS TRUST FULFILLED(彼の信頼は満たされた)(1911.1.21)②室内と室外
THE ITALIAN BARBER(イタリアの理髪師)(1911.1.14)①室内と室外
HIS DAUGHTER(彼の娘)(1911.2.25)③室内と室外⑦ロケーション②④窓空間7ショット⑤『窓空間』『原初的主観ショット』、
「女の叫び(LONEDELE OPERATOR)(1911.3.15)①③窓空間、見つめ合う視線の切り返し、②⑤ロケーション
「清き心(ENOCH ARDEN)(1911.6.17)①ロケーション②主観ショットロケーション③窓空間、原初的主観ショット
「最初の魅惑(THE PRIMAL CALL)(1911)①~⑥ロケーション。③⑥見つめ合う視線の切り返し
「THE INDIAN BROTHERS(インディアンの兄弟)」(1911.7.13)①③④ロケーション
FIGHTING BLOOD(戦う血)(1911.7.1)①原初的主観ショット、ロケーション、③ロケーション、④窓空間見つめ合う視線の切り返し、ロケーション⑥窓空間
THE LAST DROP OF WATER(最後の一滴)(1911.7.22)①②③ロケーション、場所的不明確性
A COUNTRY CUPID(田舎のキューピッド)(1911.7.29)①②ロケーション③④窓空間、原初的主観ショット、⑤室内と室外。場所的不明確性
THE ROSE OF KENTUCKY(ケンタッキーのバラ)(1911.8.26)①室内と室外、
SWORDS AND HEARTS(剣と心)(1911.9.2)①③④⑤⑥⑦ロケーション、③は原初的主観ショット
THE ETERNAL MOTHER(永遠の母)(1911/1912.1.6)①④ロケーション、②③原初的主観ショット、ロケーション。場所的不明確性
THE REVENUE MAN AND HIS GIRL(税務署員と少女)(1911.9.23)①②④⑤ロケーション。②
見つめ合う視線の切り返し。③原初的主観ショット、ロケーション、⑦⑧⑨室内と室外。場所的不明確性
THE SQUAWS LOVE(インディアンの女性の恋)(1911.9.9)①~⑨ロケーション。場所的不明確性で原初的
THE MAKING OF A MAN(男の誕生)(1911.9.30)①⑦室内(舞台と観客席)。⑥室内と室外。
THE ADVENTURES OF BILLY(ビリーの冒険)(1911.10.14)①②⑤⑥ロケーション、②③原初的主観ショット、ロケーション
THE LONG LORD(長い道のり)(1911.10.21)①②③ロケーション、①③原初的主観ショット

THE BATTLE(戦い)(1911.11.14)①ロケーション、②⑦室内と室外、③窓空間、⑤⑪主観ショット、ロケーション、⑧『窓空間』原初的主観ショット、⑨⑩ロケーション
「LOVE IN THE HILLS(丘の愛)」(1911.10.28)①②見つめ合う視線の切り返し
THROUGH DARKNED VALES(暗い谷を越えて)(1911.11.11)②窓空間、原初的主観ショット
THE MISERS HEART(守銭奴の心)(1911.11.18)①③④窓空間、②⑤上下の切り返し、ロケーション
THE FAILURE(失敗)(1911.12.2)③窓空間、原初的主観ショット
THR TRANCEFORMATION OF MIKE(マイクの改心)(1911/1912.1.27)⑤⑥階段分割による上下の切り返し、室内。⑨階段分割による上下の切り返し、見つめ合う視線の切り返し室内
「THE MAKING OF A MAN(男の誕生)」(1911.9.30)①⑦観客席と舞台
「THR TRANCEFORMATION OF MIKE(マイクの改心)」(1911/1912.1.27)⑤⑥⑨階段分割による上下の切り返し
「THE SUNBEAM(日光)」(1911/1912.2.24)②
室内三間続きの部屋、③階段分割による上下の切り返し、見つめ合う視線の切り返し室内
原初的二間続きの切り返し
FATES TURNING(運命の転換)(1911.1.28)切り返し①③
Heart Beats of Long Ago(昔の心の鼓動)(1911.2.11)
「THE ROSE OF KENTUCKY(ケンタッキーのバラ)」(1911.8.26)②③④⑤
SAVED FROM HIMSELF(彼自身から救われる)(1911.12.9)①③④
A WOMAN SCORNED(軽蔑された女)(1911.11.25)
THE FAILURE(失敗)(1911.12.2)切り返し①②
FOR HIS SON(彼の息子のために)(1911/1912.1.20)
THR TRANCEFORMATION OF MIKE(マイクの改心)(1911/1912.1.27)①②③
THE SUNBEAM(日光)(1911/1912.2.24)
カーテンと切り返し
Heart Beats of Long Ago(昔の心の鼓動)(1911.2.11)
THE ROSE OF KENTUCKY(ケンタッキーのバラ)(1911.8.26)切り返し②③、
THROUGH DARKNED VALES(暗い谷を越えて)(1911.11.11)切り返し①
THE FAILURE(失敗)(1911.12.2)の切り返し①
見つめ合う視線の切り返し

「女の叫び(LONEDELE OPERATOR)(1911.3.15)①③窓空間
「最初の魅惑(THE PRIMAL CALL)(1911)③⑥ロケーション
「FIGHTING BLOOD(戦う血)」(1911.7.1)⑤ロケーション
THE REVENUE MAN AND HIS GIRL(税務署員と少女)(1911.9.23)②ロケーション
LOVE IN THE HILLS(丘の愛)(1911.10.28)①②。ロケーション
THR TRANCEFORMATION OF MIKE(マイクの改心)(1911/1912.1.27)⑨室内・階段
BILLYS STRATAGEM(ビリーの策略)(1911/1912.2.10)①ロケーション
THE SUNBEAM(日光)(1911/1912.2.24)②室内三間続きの部屋。③階段分割による上下の切り返し、室内
主観ショット
His Trust(彼の信頼)(1911.1.2)⑤⑥ロケーション。完成度高い

「THE REVENUE MAN AND HIS GIRL(税務署員と少女)」(1911.9.23)④
THE BATTLE(戦い)(1911.11.14)⑤⑪、ロケーション
原初的主観ショット 
HIS DAUGHTER(彼の娘)(1911.2.25)。⑤窓空間。

「女の叫び(LONEDELE OPERATOR)(1911.3.15)。①③窓空間
「清き心(ENOCH ARDEN)(1911.6.17)③窓空間
FIGHTING BLOOD(戦う血)(1911.7.1)①ロケーション
A COUNTRY CUPID(田舎のキューピッド)(1911.7.29)③④窓空間
THE ROSE OF KENTUCKY(ケンタッキーのバラ)(1911.8.26) ③④室内二間続き
SWORDS AND HEARTS(剣と心)(1911.9.2)③、ロケーション。
THE ETERNAL MOTHER(永遠の母)(1911/1912.1.6)②③ロケーション
THE REVENUE MAN AND HIS GIRL(税務署員と少女)(1911.9.23)③、ロケーション
THE ADVENTURES OF BILLY(ビリーの冒険)(1911.10.14)③④、ロケーション
THE LONG LORD(長い道のり)(1911.10.21)①③、ロケーション
THE BATTLE(戦い)(1911.11.14)ロケーション。⑧窓空間。
SAVED FROM HIMSELF(彼自身から救われる)(1911.12.9)①②室内二間続き
THROUGH DARKNED VALES(暗い谷を越えて)(1911.11.11)②窓空間
THE FAILURE(失敗)(1911.12.2)①②、室内二間続き。③窓空間
FOR HIS SON(彼の息子のために)(1911/1912.1.20)切り返し①、横長の室内

THR TRANCEFORMATION OF MIKE(マイクの改心)(1911/1912.1.27)①②、室内
1シーン数ショット 
His Trust(彼の信頼)(1911.1.2)
「女の叫び(LONEDELE OPERATOR)(1911.3.15)
THE BATTLE(戦い)(1911.11.14)
フェイドアウト  
His Trust(彼の信頼)(1911.1.2)のラストシーン。
HIS TRUST FULFILLED(彼の信頼は満たされた)(1911.1.21)ラストシーン
「清き心(ENOCH ARDEN)(1911.6.17)前半のラストシーンとラストシーン
THE LAST DROP OF WATER(最後の一滴)(1911.7.22)ラストシーン
THE ETERNAL MOTHER(永遠の母)(1911/1912.1.6)途中で
THE REVENUE MAN AND HIS GIRL(税務署員と少女)(1911.9.23)ラストシーン
THE ADVENTURES OF BILLY(ビリーの冒険)(1911.10.14)ラストシーン
SAVED FROM HIMSELF(彼自身から救われる)(1911.12.9)ラストシーン
THROUGH DARKNED VALES(暗い谷を越えて)(1911.11.11)ラストシーン
THE FAILURE(失敗)(1911.12.2)ラストシーンで
FOR HIS SON(彼の息子のために)(1911/1912.1.20)ラストシーン
THR TRANCEFORMATION OF MIKE(マイクの改心)(1911/1912.1.27)ラストシーン
THE ADVENTURES OF BILLY(ビリーの冒険)(1911.10.14)ラストシーン
THE SUNBEAM(日光)(1911/1912.2.24)ラストシーン
「ピッグアレイの銃士たち(THE MUSKETEERS OF PIG ALLEY)(1912.10.26)ラストシーン「THE UNWELCOME GUEST(歓迎されない客)(1912/1913.3.8)ラストシーン
フェイドアウトの手前
THE FAILURE(失敗)(1911.12.2)のラストシーン
THE END
 
「最初の魅惑(THE PRIMAL CALL)(1911.6.24)

A COUNTRY CUPID(田舎のキューピッド)(1911.7.29)
THE ROSE OF KENTUCKY(ケンタッキーのバラ)(1911.8.26)
THE REVENUE MAN AND HIS GIRL(税務署員と少女)(1911.9.23)
THE SQUAWS LOVE(インディアンの女性の恋)(1911.9.9)
SAVED FROM HIMSELF(彼自身から救われる)(1911.12.9)
THE MISERS HEART(守銭奴の心)(1911.11.18)バイオグラフのマークの下
THE FAILURE(失敗)(1911.12.2)
FOR HIS SON(彼の息子のために)(1911/1912.1.20)
照明 
HIS DAUGHTER(彼の娘)(1911.2.25)地面に娘の影がはっきり映る
。体に木の葉の影
「女の叫び(LONEDELE OPERATOR)(1911.3.15) 電気を消す・つける カットを割ってから電気をつけたり消したりしている。
「清き心(ENOCH ARDEN)(1911.6.17) 夫を見送った後、路地の屋根の影が妻の背中に映っている。ラストシーンで外から光
SWORDS AND HEARTS(剣と心)(1911.9.2) ドロシー・ウエストがコートを開いて肩の血を見せる時、部屋の照明が暗く落とされている。体に木の葉の影が投射されている(貴族の女の家の階段のところで)
THROUGH DARKNED VALES(暗い谷を越えて)(1911.11.11)目が見えなくなってライトを点滅させる
バックライト 
HIS DAUGHTER(彼の娘)(1911.2.25)フローレンス・バーカー
THE LAST DROP OF WATER(最後の一滴)(1911.7.22)ブランチ・スウィートに
THE ETERNAL MOTHER(永遠の母)(1911/1912.1.6)ブランチ・スウィート
THE ADVENTURES OF BILLY(ビリーの冒険)(1911.10.14)ケート・ブルース
LOVE IN THE HILLS(丘の愛)(1911.10.28)ブランチ・スウィート

HIS DAUGHTER(彼の娘)(1911.2.25)カーテン。
「清き心(ENOCH ARDEN)(1911.6.17)エプロン、カーテン
THE INDIAN BROTHERS(インディアンの兄弟)(1911.7.13)草木
THE LAST DROP OF WATER(最後の一滴)(1911.7.22)草木
A COUNTRY CUPID(田舎のキューピッド)(1911.7.29)木々
THE ROSE OF KENTUCKY(ケンタッキーのバラ)(1911.8.26)草木
THE ETERNAL MOTHER(永遠の母)(1911/1912.1.6)草木
THE MAKING OF A MAN(男の誕生)(1911.9.30)木の葉
THE ADVENTURES OF BILLY(ビリーの冒険)(1911.10.14)草木
THE BATTLE(戦い)(1911.11.14)草木
LOVE IN THE HILLS(丘の愛)(1911.10.28)ブランチ・スウィートの背後の草木、髪
THROUGH DARKNED VALES(暗い谷を越えて)(1911.11.11)ラストシーンの路地の木々か大きく揺れている。
俯瞰 
「女の叫び(LONEDELE OPERATOR)(1911.3.15)機関室を、
FIGHTING BLOOD(戦う血)(1911.7.1)一軒家を小高い丘から、
THE SQUAWS LOVE(インディアンの女性の恋)(1911.9.)川に落ちたノーマンドを
「BILLY’S STRATAGEM(ビリーの策略)」(1911/1912.2.10)ロングショットで

THE LAST DROP OF WATER(最後の一滴)(1911.7.22) オアシスの水面に木が映っている。
なめる
HIS DAUGHTER(彼の娘)(1911.2.25)風に揺れる木の葉を
「女の叫び(LONEDELE OPERATOR)(1911.3.15)序盤、風に揺れる木々を手前にナメている
前と奥とで別々の演技
His Trust(彼の信頼)(1911.1.2)
大作傾向
His Trust(彼の信頼)(1911.1.2)
FIGHTING BLOOD(戦う血)

THE LAST DROP OF WATER(最後の一滴)(1911.7.22)(1911.7.1)
THE BATTLE(戦い)(1911.11.14)

退出の映画史 
Fate’s Turning(運命の転換)(1911.1.28)
THE LAST DROP OF WATER(最後の一滴)(1911.7.22)
帰郷
「HIS DAUGHTER(彼の娘)」(1911.2.25)息子が
「清き心(ENOCH ARDEN)」(1911.6.17)
「FIGHTING BLOOD(戦う血)」(1911.7.1)
「SWORDS AND HEARTS(剣と心)」(1911.9.2)
「THE BATTLE(戦い)」(1911.11.14)
孤児
HIS TRUST FULFILLED(彼の信頼は満たされた)(1911.1.21)
THE ROSE OF KENTUCKY(ケンタッキーのバラ)(1911.8.26)
THE MAKING OF A MAN(男の誕生)(1911.9.30)ブランチ・スウィートの子供
「THE ADVENTURES OF BILLY(ビリーの冒険)」(1911.10.14)
「THE SUNBEAM(日光)」(1911/1912.2.24)
母親の不在 
Heart Beats of Long Ago(昔の心の鼓動)(1911.2.11)、娘に結婚を押し付ける。
HIS DAUGHTER(彼の娘)(1911.2.25)娘の孤独が際立つ
「女の叫び(LONEDELE OPERATOR)(1911.3.15)
SWORDS AND HEARTS(剣と心)(1911.9.2)
THE MAKING OF A MAN(男の誕生)(1911.9.30)父親が娘の結婚を反対する。
FOR HIS SON(彼の息子のために)(1911/1912.1.20)
THR TRANCEFORMATION OF MIKE(マイクの改心)(1911/1912.1.27)言及在り
父親の不在 
THE SUNBEAM(日光)(1911/1912.2.24)
落とすこと 
Fisher Folks(漁師たち)(1911.2.18)
THE LAST DROP OF WATER(最後の一滴)(1911.7.22)水筒
SWORDS AND HEARTS(剣と心)(1911.9.2)ドロシー・ウエストが鍬を
THE REVENUE MAN AND HIS GIRL(税務署員と少女)(1911.9.23)
THE MISERS HEART(守銭奴の心)(1911.11.18)お菓子を
THR TRANCEFORMATION OF MIKE(マイクの改心)(1911/1912.1.27)2人の出会い
THE SUNBEAM(日光)(1911/1912.2.24)ほうき、人形
分離 
His Trust(彼の信頼)(1911.1.2)サーベル
「HIS TRUST FULFILLED(彼の信頼は満たされた)」(1911.1.21)サーベル
Heart Beats of Long Ago(昔の心の鼓動)(1911.2.11)帽子
後ろ姿
「清き心(ENOCH ARDEN)」(1911.6.17)
ラストシーンが後ろ姿 
「THE SORROWS OF UNFAITHFUL(不誠実の悲しみ)」(1910.8.27)海へ入ってゆくウォルソールの後ろ姿を主観ショットでピックフォードが見つめる
THE REVENUE MAN AND HIS GIRL(税務署員と少女)(1911.9.23)山を降りてゆく2人の
THROUGH DARKNED VALES(暗い谷を越えて)(1911.11.11)
THE FAILURE(失敗)(1911.12.2)
ラストシーンでキャメラの横を通り過ぎる
THE SQUAWS LOVE(インディアンの女性の恋)(1911.9.9)
THE FAILURE(失敗)(1911.12.2)
立て籠もること 
「女の叫び(LONEDELE OPERATOR)」(1911.3.15)
FIGHTING BLOOD(戦う血)(1911.7.1)

THE ROSE OF KENTUCKY(ケンタッキーのバラ)(1911.8.26)
「THE BATTLE(戦い)」(1911.11.14)
「BILLY’S STRATAGEM(ビリーの策略)」(1911/1912.2.10)
男装
 「SWORDS AND HEARTS(剣と心」(1911.9.2)のドロシー・ウエスト

変装 
HIS DAUGHTER(彼の娘)(1911.2.25)

遺産相続
 「THE FAILURE(失敗)(1911.12.2)

振り向くこと
「最初の魅惑(THE PRIMAL CALL)」(1911.6.24)
「LOVE IN THE HILLS(丘の愛)」(1911.10.28)ブランチ・スウィートが
山から谷へ 
THE REVENUE MAN AND HIS GIRL(税務署員と少女)(1911.9.23)

椅子の上で死ぬ
「HIS TRUST FULFILLED(彼の信頼は満たされた)」(1911.1.21)
Fate’s Turning(運命の転換)(1911.1.28)

THE MAKING OF A MAN(男の誕生)(1911.9.30)
椅子と赤ん坊 
Fate’s Turning(運命の転換)(1911.1.28)

椅子がテーブルの上に逆さに乗せられている
THE FAILURE(失敗)(1911.12.2)
目を開けて死ぬ
 「清き心(ENOCH ARDEN)(1911.6.17)

盲目
 「THROUGH DARKNED VALES(暗い谷を越えて)(1911.11.11)

わざと気づかないことにする
HIS TRUST FULFILLED(彼の信頼は満たされた)(1911.1.21)
「女の叫び(LONEDELE OPERATOR)(1911.3.15)
順手
 「THE INDIAN BROTHERS(インディアンの兄弟)(1911.7.13)

キャメラの横を通り過ぎる(クローズアップ付近まで接近)
HIS DAUGHTER(彼の娘)(1911.2.25)

「女の叫び(LONEDELE OPERATOR)(1911.3.15)ブランチ・スウィート
A COUNTRY CUPID(田舎のキューピッド)(1911.7.29)
THE ETERNAL MOTHER(永遠の母)(1911/1912.1.6)
THE REVENUE MAN AND HIS GIRL(税務署員と少女)(1911.9.23)
FOR HIS SON(彼の息子のために)(1911/1912.1.20)