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藤村隆史論文ヒッチコック・ホークス主義
エイゼンシュテイン
■「ストライキ」(1924)80分 7/10
煙突は煙を吐き出すために(一見機能的だが工場は煙を吐き出すために存在するのではない)。顔のシミは影を投射させるため。ファンは回転するために(これも煙突と同じでたたひたすらの円運動として撮られている)。擦りガラスはシルエットを投射させるため。水面が鏡に、また波紋を生じさせるため。汽車は煙を撒き散らすため。鉄骨は人が座るため。クレーンは揺れるため。肥満はブルジョアを指示させるため。タバコは煙を吐き出すため(徹底している)。机は叩くため。地面は影を投射させるため。写真は動くため。机は人が座るため。人間が猿、ブルドッグ、キツネ、フクロウに。木々は影を落とすため(徹底している)。輪っかは揺れるため。ズボンははけないため。氷は割るため。桶は頭に乗せるため。木々は風に揺られるため。車輪が山に、またそれを乗り越えるため、また人が寄りかかるため。水面は水しぶきをあげるため。錨は人が座るため。海は飛び込んで水しぶきをあげるため。綱はすり抜けるため。トイレが会議室に、また人が隠れるため。アコーディオンは伸びたり縮んだりするため。車輪は人にぶつけるため。輪転機は回転するため。屋根は人が座るため。機械はビラを貼り付けるため。ビラは舞い落ちるため。網は影を投射させるため。棚の中の物は掻きだすため。マイクロメーターが盗まれるのは労働者を犯人に仕立て上げて自殺させて労働者を蜂起させるため。帽子は脱ぐため(徹底している)あらゆる凹凸は陰影を投射させるため。帽子は投げ棄てるため。脚立は人が座るため、また倒すため。また死体を寝かせるため。ベルトは首を吊るため。工作機械はよじ登るため。工具は投げ置くため。木箱は人を殴るため。汽笛は煙を吐き出すため。ドアは人を下敷きにしてシーソーになるため。地面は煙を撒き散らすため。水はひとにぶっかけるため。石は投げて窓を割るため。窓は壊し入るため。帽子は振るため。鉄骨は影を投射させるため。汽車、荷車は人が乗るため。斜面は人を転げ落とすため。川はそこに人が転落するため。ブーツは中から水を掻き出すため。木々は影を落とすため(徹底している)。グラスの酒は振り棄てるため。注文書は叩き置くため。椅子は蹴飛ばすため。煙突が鳥の止まり木に。タイプライターはストライキするため。帽子は蹴飛ばすため。地面は人が座るため。帽子は紙を入れるため、また舞い上げるため。柵は馬が飛び越えるため。机が鏡に、また酒の貯蔵庫に。レモンは絞って「搾取」に、また落として召使いに拾わせるため。要求書が雑巾に。靴は猫に投げつけるため。引き出しの中はぶちまけるため。服、鏡は投げ置くため。テーブルクロスは引き抜くため。壁は人がすがりつくため。煙草入れは投げ置くため、またしゃぶるため。子供は蹴り飛ばすため。ガラスが鏡に。塀は人が座るため。格子は影を投射させるため。石、水がめは人が座るため。時計がカメラに。マンホールは人が入るため、また人が座るため。、また人が飛び越えるため。帽子は叩きつけるため。排水管は水を吐き出すため。雨は降り注ぐため。水溜りは歩いて水しぶきをあげるため。車は人がしがみつくため。テーブルはその上で踊るため。シャンパンは泡を吹き出すため。墓石は人が座るため。棺桶は人が隠れるため。猫は吊るされて揺れるため。本は吊るされた猫に投げつけるため。車のシートがベッドに。帽子は水に濡らして振り回すため。水は吐き捨てるため。帽子は顔を隠すため。樽はそこから人を出現させるため、またその中に人が隠れるため、またその中に人を落として水しぶきをあげさせるため。口笛は人を呼ぶため。帽子は取られるため。揺り籠は揺れるため。服はその中にモノを隠すため。壁は人が隠れるため、また影を投射させるため。新聞は顔を隠すため。汽車は飛び乗るため。爆発、火事は煙、炎を吐き出すため。木は人がよじ登るため。家具は家の外に放り出すため。火災現場で椅子は逆さにされている。酒瓶は割るため。家は崩壊するため。放水は水しぶきをあげるため、また人を攻撃するため、また食器を吹き飛ばすため。袋小路に逃げ込むのは水をぶっかけられるため。タービンは回転するため。放水器は煙を吐き出すため。労働者が打ち合わせをするのはその隙に子供を騎兵の馬の下に行かせて助けに行った母親を兵士に鞭打ちさせて労働者を蜂起させるため。ドラム缶がバリケードに。門は倒し入るため。ドアは人を挟むため。手摺は人が乗り越えるため。アパートが騎馬戦に。吹き抜けは人を落下させるため。洗濯物はしがみつくため。子供は掴み落とすため。机を叩くのはインクをこぼして流すため。椅子はそこから人が転げ落ちるため。買収はされないため。屠殺者のナイフは逆手で握られている。屠殺が人の虐殺に。銃は煙を吐き出すため。塀は倒し渡るため。死体が枕に。
■「戦艦ポチョムキン」(1925)73分 7/3
波は砕け散るため。船は煙を吐き出すため(徹底している)。水面が鏡に、また揺れるため。ハンモックは揺れるため。鎖は人を叩くため。メガネが虫眼鏡に。うじ虫は革命をひき起こすため。格子は影を投射させるため。肉は揺らすため。金属は磨くため。スープは煮たぎり煙を吐き出すため。調理台は揺れるため。万力は肉をひきちぎるため。地面は影を投射させるため。ローブは風に揺られるため。網は影を投射させるため。缶詰を買うのはスープが飲めないことを指示するため。皿を洗うのは皿に書かれたメッセージを読んで叩き割るため。旗は風に揺られるため。マストは人を吊るすため。水兵が砲塔に集まるのは残された水兵に艦長昇降口を使わせて艦長を怒らせ処刑させるため。帆は人にかぶせるため、また風に揺らすため、また踏まれるため。煙突は煙を吐き出すため。十字架は手を叩くため。サーベルは撫でるため。処刑はされないため。柵は人が飛び越えるため。ライフルは人を殴るため、また奪い合うため。十字架は地面に突き刺すため。階段は人が転げ落ちるため。ピアノの鍵盤は踏み潰すため。ピアノはその上に人が乗るため。ローソクは踏み潰すため。銃は煙を吐き出すため。椅子は人を殴るため。海は人が落下して水しぶきをあげるため。大砲は人がしがみつくため、また人が乗るため、またそこから海へ落下するため。地面のロープは人がしがみつくため。メガネは揺れるため。帽子は振るため(徹底して振られている)。錨は人を吊るすため。水兵が殺されるのは上陸させて埋葬し集まった群衆を階段で兵隊に撃ち殺させるため。ボートは水しぶきをあげるため。水面は光り輝くため(徹底している)。ローソクは風に揺られるため。霧は立ち込めるため。帽子は脱ぐため。テント、木々は風に揺られるため。樽は頬杖をつくため。帽子は金を入れるため。タバコは煙を吐き出すため。髪は風に揺られるため。帽子は握りしめるため、また顔を隠すため。帽子のツバは下げるため。ユダヤ人を殺せと叫ぶ男は群衆にリンチされるため。服、手は握りしめられるため。スカーフは振るため。シャツは引きちぎるため。マスト、階段は人が座るため。帽子は投げ落とすため。帆は風に揺られるため。戦艦は人がしがみつくため。物資は投げ渡すため。ハンカチは振るため。日傘は回転させるため、またキャメラに向かって突進させるため。メガネは振るため。階段が死体置き場に、また人が隠れるため。子供は踏んづけるため。子供が撃たれるのは母親に兵士を説得させて殺させるため。髪はかきむしるため。人は踏み越えるため。母親が撃たれるのは倒れる拍子に乳母車を押して階段で疾走させるため。乳母車は影を投射させるため。バックルは握りしめるため。メガネは割れるため。大砲は煙を吐き出すため。獅子の像は立ち上がるため。政府本部は破壊されるため。セーラー服は風に揺られるため。水面は輝き散るため。スチームは人が寄りかかるため。機関室、ソファーがベッドに。タバコは吸わないため。水兵たちが眠るのは飛び起きるため。人はぶつかるため。壁は影を投射するため。タービンは回転するため。戦艦は波紋を広げるため。黒煙は立ち込めるため(煙が徹底している)。砲口が円に。戦闘は開始しないため。水面は影を投射させるため。船体がフェイドアウトに。
■「十月」(1928)101分 7/11
銅像はよじ登るため、また解体し引きずり倒すため、ライフル、鎌は掲げるため。ランプは揺れるため、また煙を吐き出すため。銃剣は地面に突き刺すため。崖は人を助け上げるため。草は通り抜けて揺らすため。パンは手で叩くため。帽子は叩きつけるため、また脱がせてかぶせるため。爆弾は土煙を撒き散らすため。地面は人が座るため、また寝そべるため。壁は人が寄りかかるため。雪は降り注ぐため。光が帯に。スポットライトは光を投射するため。旗は風に揺られるため(徹底している)。タイヤが踏み台に。ジープが演説台に。帽子は振るため、また舞い上げるため。手摺は影を投射させるため。マシンガンは煙を吐き出すため。群衆は蹴散らされるため。塀は人が乗り越えるため。旗は噛みちぎるため。傘は旗や人を突き刺すため。服はひきちぎるため。水面は地上に揺れる光を投射するため。髪は橋に引きずり込まれるため。馬は宙づりにされて川に落下し水しぶきをあげるため。橋を上げるのは馬や女を橋から落下させるため。階段が死体置き場に。機関紙は投げ舞わせて川に沈めるため。旗は投げ棄て川に流すため。蹄は打ち鳴らされるため。足取りは重いため。木々は影を落とすため。建物は壊されているため。事物は散乱しているため。階段は上るため。手袋は握りしめるため。彫像は動き出すため、また光って回転するため。ボートは水面に波紋を生じさせるため。たき火は煙を吹き出すため(もの凄い煙)。宝石は揺れるため。人間が彫像に。ボトルの列が兵士の列に。ボトルは組み立てられるため。机が鏡に。汽笛は煙を吐き出すため。人形の手は揺れるため。銅像は復元されるため。ソファーがベッドに。彫像は割れるため。汽車は煙を撒き散らすため。キャタピラは回転するため。地面は埃を撒き散らすため。ライフルはドアを破るため、また人に手渡されるため。銃が列に。線路は叩きはずすため。ランプは煙を吐き出すため。剣は噛むため。汽車は人が乗るため。機関紙は積み上げられるため、また担いで運ばれるため。帽子はビラを入れるため。剣をさやから抜くのはさやに収めるため。水たまりで踊るのは水しぶきを上げるため。ライフルは組み立てられるため。足は踏み鳴らされるため(徹底している)。人は回転させるため。腕は振られるため。息は白を吐き出すため。ライフルは帽子を回すため。鉄骨は人がしがみつくため。手は掲げられるため。タバコは煙を吐き出すため(もの凄く煙っている)。トロツキーは無視されるため。ベンチがベッドに。ドアノブは回されるため。銃剣は投票用紙を突き刺すため。車は煙を吐き出すため。足踏みをするのは人を揺らすため。木々は風に揺られるため。霧は立ち込めるため。船は煙を吐き出すため。地面は影を投射させるため。手摺は人が乗り越えるため。水面は揺れるため。堤防は人が座るため。電話のコードは揺らすため。藁は人が座るため。足は揃えられるため。受話器は叩きつけられるため。手は握られるため。女が軍服を脱ぐのは下着姿を見せるため。ヒリヤード台は人が座るため、また寝そべるため。キューが帽子掛けに。ライフルはブラジャー掛けに、またコップ掛けに。タオルが靴下に。背中が枕に。丸太は投げ置くため、またバリケードに。長椅子は運ばれるため。水面は光るため。空の椅子は人の不在を指示させるため。ペンは振り回すため。階段は人が座るため。投票用紙は掲げられるため、また振られるため。ドアは開閉するため。電話のフックスイッチは叩き押されるため、また手回しクランクは回されるため。汽車は煙を撒き散らすため。彫像は人が座るため。銃剣はハンカチを突き刺すため、また振るため。しずくはしたたり落ちるため。股間は人が潜り込むため。丸太は人が座るため。コップは倒れているため。ガラスがギターに。銃は煙を吐き出すため。街灯は撃ち割られるため。彫像は人が寄りかかるため。ライフルは投げ置くため。オルゴールは回転するため。窓は人が出入りするため。料理は煙を吐き出すため。車は人が寄りかかるため。足は足で掻くため。豆は吐き出すため。背もたれ、椅子は足を乗せるため。大砲の口は塞ぐため。松葉づえは床を叩いて煙を吐き出すため。車輪は回転するため。拍手は打ち鳴らされるため(過剰なまでに手が叩かれている)。爆弾は煙を撒き散らすため。演説が子守歌に。帽子が枕に。水たまりが鏡に。指は机を弾くため。シャンデリアは光るため、また揺れるため。マシンガンは煙を吐き出すため。机は叩くため。大砲は煙を吐き出すため。コートと帽子は脱ぎ置かれているため。市長は追い返されるため。群衆は立ち上がるため。門はよじ登ってまたがるため。酒瓶は撃ち割って酒を吹き出させるため。酒蔵が銃撃戦場に。服は投げ置くため。椅子が便器に。爆音は男女を抱きつかせるため。ベッドは人が乗るため。マットレスは引きちぎるため。爆風は羽毛を撒き散らすため。酒は略奪されるため。帽子はスプーンを隠すため。食器は落とし置くため。ライフルは酒瓶を割るため。ドアは割り倒し入るため。机はその上に人が乗るため。椅子がベッドに。時計は円に。皺、髭、ニキビ、そばかす、骨格その他あらゆる凹凸はモノクロフィルムに陰影を焼き付けるため。
■「全線」(1929)90分 7/12
雲は畑に動く影を投射するため。ハエはまとわりつくため。牛は震えるため。かまどは煙を撒き散らすため。揺り籠は揺れるため。かまどの棒は人をつつくため。水溜りは水しぶきをあげるため。ノコギリはしならせるため。またおが屑を撒き散らすため、また左右に引かれるため。家は解体するため。地面は人が座るため。服は握りしめるため。髪は風に揺られるため。木々は影を落とすため。雲は流れるため。酒はこぼし飲むため。コップは容器の中に投げ入れて水しぶきを上げるため、また水の中に沈ませるため。肥満、睡眠はブルジョアを指示させるため。援助はされないため。地面は煙を撒き散らすため。牛は転んでのたうち回るため。髭は風に揺られるため。賛成はされないため。旗は風になびかせるため(すごく揺れている)。ランタンは煙を吐き出すため。ローソクは溶けてしたたり落ちるため、またひん曲がるため。ヤギは震えるため。地面は人が寝そべるため。服の泥は払われるため。布は投げ置くため。分離機は光るため、また回転するため、また光を反射させるため。雨は降らないため。バターはしたたり落ちるため、また噴水に、また飛び散るため。尻尾は振られるため。机は叩くため。牛乳はこぼすため。人は弾き飛ばすため。樽は叩き置くため。金庫の金を取るのは返却するため。コイン、札は投げ置くため。金庫は撫でるため、また枕に。牛乳は泡を吹き出すため、また流れ落ちるため、また激流に。瓶は牛乳で満たされるため。格子は影を投射させるため。子豚は乳を飲むため。川は渡って水しぶきをあげるため。屠殺は煙を吐き出すため。ブタは回転させられるため、また煙を吐き出すため、また洗われるため。木々は風に揺られるため。水面が鏡に。柵は影を投射させるため。ガラスが鏡に。汽車は煙を撒き散らすため。木材を切るのはおが屑を撒き散らすため。木の束は投げ置くため。脱穀機は部品を回転させるため。丸太は人が座るため。髪、リボンは風に揺られるため。足はつま先立ちさせるため。花飾りは顔に影を投射させるため。牝牛が花嫁に、また雄牛が花婿に。地面は影を投射させるため。乳は震えるため。草は風に波打つため(凄まじく揺れている)。作物は刈り取られるため。鎌は掲げられるため。帽子、腕は振られるため。髪は掴むため。トラクターがバッタに。トラクターは部品を回転させるため。草は撒き散らすため。草を刈るのは機械に負けるため。通知は丸めて投げ棄てるため。鉛筆削りは回転させるため。タイプライターはシフトさせるため、またキーを打ち叩くため。本は分厚い紙の塊に。衣服は突風に揺らされるため。藁は舞うため。雨は降り注ぐため。藁、荷車は人が隠れるため。荷車は壊れるため。インクはしたたるめ。舌は切手を舐めるため。振り子は揺れるため。車輪は回転させるため。鉄橋は影を投射させるため。タバコは煙を吐き出すため。スタンプ、サインは官僚主義を指示させるため。口が栓抜きに。毒はこぼし飲ませるため。窓は人が出入りするため。手は揉むため。机は叩いて電話を倒すため。怒りが火炎放射器に。回転扉は回転するため。柱は人が寄りかかるため。髪は巻くため。炎は煙を吐き出すため。カエル、牛の頭がい骨はまじないに。カエルは水面を輝き揺らすため。牛の頭がい骨はシルエットを投射させるため。水面は光り輝くため。木、牛を殺すのはそれでも集団農場は死なないため。風船は舞い上がるため。トラクターは煙を撒き散らすため(もの凄い)、また取っ手を回すため、またタービンを回すため、また人が飛び越えるため。服は脱ぎ捨てるため。マスクは脱ぐため。手ぬぐい、前掛けは投げ棄てるため。前掛けがタオルに。スカートはちぎってタオルにするため、また投げ置くため。トラクターの故障は男と女を協力させるため。荷車は列に。斜面はトラクターの威力を指示させるため。鎌は影を投射させるため。柵は踏み潰すため。火花は舞い散るため(凄まじい)。工場は煙を吐き出すため。トラクターが列に、また畑に円を描くため。皺、髭、ニキビ、そばかす、骨格その他あらゆる凹凸はモノクロフィルムに陰影を焼き付けるため。
■「メキシコ万歳」(1932)79分 7/6
水面は輝くため。顔の凹凸は影を投射させるため。木々は風に揺られるため。またあらゆる物体に影を落とすため。川は娘が髪を洗うため。ハンモックは揺れるため。恋人たちがオウムのつがいに。髪はとかすため。髪をとかすのがペリカンの毛づくろいに。金貨は輝くため。ハンモックが首飾りに、頭は物を乗せるため(現地人には機能的かも)。膝は壺を乗せるため。階段は人が座るため。旗は風に揺られるため。帽子は画面の手前にナメてパンフォーカスを撮るため。草木は手前にナメて撮るため。髪は結うため。金貨は噛むため。鍋は煙を吐き出すため。鐘は鳴り響くため。鈴、衣服は風に揺られるため。祝砲は煙を吐き出すため。飾りは風に揺られるため。サボテンの幹が十字架に。神輿、人々は回転するため。椅子は足を乗せるため。揺り椅子は揺らすため(機能的に見えるがことさら揺れている)。帯を締めるのは人を回転させるため。鳥かごは影を投射させるため。壁は叩くため。帽子は振るため。馬は人を落馬させるため。ナイフは逆手で握られている(それ以前には2度ほど順手で握られている)。帽子は投げ棄てるため。ハンカチは振るため。花束は投げるため。帽子は投げ舞わすため、またお札を入れるため。ボートは波紋を生じさせるため。壁は人が寄りかかるため。サボテンを切る時ナイフは逆手で握られている。サボテンは人が乗るため、また中の油を人に吸わせるため、また画面の手前にナメてパンフォーカスを撮るため(何度も)。ロバは頬ずりされるため。サボテンは折って道を作るため。張りぼての牛が闘牛に。鞭は人の通行を遮るため。帽子は脱ぐため。膝が椅子に。手摺はお盆を乗せるため。帽子は払い落とすため。階段は人が転げ落ちるため。農園主への顔見せは娘を襲わせて復讐した者たちを虐殺させ革命を起こさせるため。酒は口からこぼして豚、ハエに飲ませるため。コップは落とし割るため、また酒で流されるため。地面は影を投射させるため。手摺はその上を人が歩くため。ドアを開けるのは背後の肖像画に光を投射するため。窓枠は影を投射させるため。農場主が酒を飲むのはその隙に農奴たちに蜂起させるため。張りぼての牛が花火に。火事、花火は煙を撒き散らすため。帽子は銃弾で吹き飛ばされるため。銃は煙を吐き出すため。屋根は人が登るため。地面は煙を撒き散らすため。銃声は馬を驚かせるため。サボテンは撃ち落とすため、また撃って汁を流させるため、また人が隠れるため、また弾の保管庫に。サボテン、岩は人が寝そべるため。スカートは風に揺られるため。女は農奴に殺されて領主を怒らせるため。帽子は斜面を回転して転げ落ちるため。岩は人が寄りかかるため、またロープで崩して土埃を撒き散らすため。サボテンの葉が皿に。少年が失神するのは虐殺を目撃させるため。人は埋めるため。馬は椅子に、またその上で人が寝そべるため、また人を踏みつけて殺すため。地面は人がすがりつくため。ショールは風に吹かれるため。ローソクは風に揺られるため。しゃれこうべがグラスに、また割られるため、また砂糖菓子に、また仮面に。墓地がパーティに。観覧車、メリーゴーランドは回転するため、また影を投射させるため。仮面は脱ぐため。
■「アレクサンドル・ネフスキー」(1938)109分 7/2
草、服は風に揺られるため。人が踏み台に。モンゴル人は公の性格を指示させるため。ベルトは振り回すため。川は水しぶきをあげるため。人は蹴飛ばすため。鐘は鳴り響くため。人は蹴飛ばすため。たき火は煙を撒き散らすため。旗は風に揺られるため。子供は投げ落として焼き殺すため。人は吊るすため。網は破るため。梁は人がもたれるため。炎は煙を吐き出すため。地面は人が座るため。帽子は振るため。松明は煙を吐き出すため。服、帽子は投げ置くため。木々は風に揺られるため。斜面は人が転げ落ちるため。馬は氷の上を滑って転ぶため。舟は氷に埋もれるため。進言は聞き入れられないため。地面は煙を撒き散らすため。剣、盾、槍は鳴り響くため。ソリがバリケードに。馬はその下に人が潜るため、また落馬するため、また人を下敷きにするため。丸太は投げ渡すため。水桶は人を殴るため。兜は叩き落とすため、また叩き割るため。槍は投げ置くため。盾は投げるため。人はかき分けるため。テントは崩壊するため。兵士がよそ見をするのは捕虜に殺されるため。ナイフは逆手で握られている。氷の湖は割れて兵士を水没させるため。氷は人がしがみつくため。人が枕に。地面は影を投射させるため。剣が杖に。ローソクは風に揺られるため。帽子は投げ上げるため。髪は風に揺られるため。壁は人が寄りかかるため。樽は転がすため。
■「イワン雷帝・第一部」(1944)99分 7/4
煙は立ち込めるため。光が帯に。コインは人の頭からかけるため。剣が影に。鐘は鳴り響くため。お盆は頭の上に乗せるため。盃は投げ割るため。火事は光を乱射させるため。壁は影を投射するため(非常に多い)。燭台は人を殴るため。帽子は脱ぐため。頭は叩くため。剣は投げ棄てるため。帽子は振るため。コインは落とし置くため。工事は煙を吐き出すため。鍬は投げ置くため。樽は転がすため。のろしは煙を吐き出すため。捕虜は味方に殺されるため。皇帝への反抗が盾に。爆破は土煙を撒き散らすため。大砲は煙を吐き出すため。本は顔にかぶせるため。蚊を掴むのは白痴を指示するため。階段、床は人が座るため。床は人が寝そべるため。ローソクは風に揺られるため。皇帝の瀕死は死なないため。顔の凹凸は影を投射させるため。燭台は投げ棄てるため。髭、地球儀は影を投射させるため。壁が影絵に。地面は影を投射させるため。手紙は投げ棄てるため。水が毒に。壁は人が隠れるため。棺は人がもたれるため。燭台は倒すため。首都を退去するのは帰還するため。松明は煙を吐き出すため。ドアは影を投射させるため。
■「イワン雷帝・第二部」(1946)82分 7/5
顔の凹凸は影を投射させるため。手紙は投げ棄てるため。人は蹴り飛ばすため。煙は立ち込めるため。地面は人が座るため、また寝そべるため。足は地面に届かないため。マントは踏みつけるため。人は突き飛ばすため。格子は影を投射させるため。ローソクは煙を撒き散らすため、また風に揺られるため。光が帯に。膝が枕に。盃は投げ落とすため。階段がベッドに。皿は叩くため。肘掛が枕に。人間は回転するため。机はその上に乗るため。頭は皿を乗せるため。テーブルクロスは引き払うため。地面。壁は影を投射するため。酒宴が暗殺の場に。ナイフは逆手で握られる。ローソクは落とすため。叔母の息子が王になるのは殺されるため。服は引きちぎるため。人は引きずるため。