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藤村隆史論文ヒッチコック・ホークス主義

溝口健二、小津安二郎、山中貞雄、機能・運動連関表 日付は2014年のデータを取った日


溝口健二



■「雨月物語」(1953) 958/26

銃声は鳴り響くため。名主は夫の帰宅を導くため、また妻の死を告げるため。鍋は煙を吐き出すため。服は落とし置くため。ろくろは回転するため。レバーは回転させるため。子供は邪魔をするため。かまどは炎と煙を吐き出すため、またその影を投射させるため。藁は人が隠れるため。人は引きずるため。たき火は煙を撒き散らすため。地面は人が座るため、また這うため。武具は落とすため。壺は叩き割るため、また叩き置くため。襲撃は焼き物を壊さないため。煙は立ち込めるため。水面は光るため、また揺れるため。竿は船を引き寄せるため。船頭は海賊の情報をもたらし妻と夫を別行動させるため。船は水しぶきをあげるため。水面は影を投射させるため。皿は回すため。藁は皿を拭くため。男が焼き物に集中するのは姫を見上げて驚くため。侍は次男を掻きたてはぐれた妻を落ち武者に襲わせるため。人はかき分けるため。鎧は槍で突き倒すため。オール?は人が座るため。砂は掴んで投げつけるため。人は担ぐため。寺は女を襲うため。草履は脱ぎ置かれるため。銭は投げ置くため。柱は人が寄りかかるため。手ぬぐいは落とすため。太鼓は鳴り響くため。暖簾は風に揺られるため。人はシルエットを投射させるため。戸はきしんで開くため。木々は風に揺られるため。壁は影を投射するため(何度も人影が)。木々は影を落とすため。鐘は鳴り響くため(音源は存在しない)。ローソクは風に揺られるため。幕、木はシルエットを投射させるため。眠るのは寝顔を盗み見されるため。櫛は回すため。風呂は煙を吐き出すため。木は手ぬぐいを掛けるため。手ぬぐいは噛むため。鼓は投げ転がすため。木箱は落とすため。槍は倒し置くため。落ち武者は妻を殺すため。木の枝が杖に。笠は投げ棄てるため。縁の下は人が隠れるため。石は斬首を隠すため。生首を奪うのは出世して宿場に行き遊女になった妻と再会するため。タバコは煙を吐き出すため。スダレは影を落とすため。逃げる客は夫と妻を再会させるため。財布は投げ棄てるため。数珠暖簾は揺れるため、また揺れる影を落とすため。格子は影を投射させるため。地面は人がすがりつくため(溝口流)。井戸は身を投げられないため。木は人がすがりつくため(溝口には「寄りかかる」よりも「すがりつく」がフィットしてい)。喧騒は鳴り響くため。柱は人が寄りかかるため。支払いの金が足りないのは店主に屋敷に取に来いと頼んで怖がらせるため。お経は鳴り響くため。服は脱がせるため。体は文字を書くため。ローソクは刀で切り落として消すため。襖は倒すため。声はこだまするため。燭台、障子は倒すため。縁側は人が転げ落ちるため。男が名刀を持っているのは稼ぎを没収されるため。虫は飛び交うため。焼けた柱が着物掛けに。後ずさりするのは帽子?につまずくため。地面は影を投射させるため。家の周囲を回るのはそのあいだに妻と鍋をセットするため。酒は男を眠らせそのあいだに妻を消すため。草履ははたくため。杖は倒し置くため。橋は武具を川に投げ落として水しぶきをあげるため。線香は煙を吐き出すため。食事は墓に備えるため。

小津安二郎

■「晩春」(1949) 10610/1

木々は風に揺られるため(途方もなく揺れている)。女はひと電車遅れて来るため。花は風に揺られるため。木、自転車、瓶等は画面の手前にナメルため。ウグイスは鳴き響くため。呼び鈴は鳴り響くため(何度も何度も)。電気屋は踏み台を貸すため、またゲーリー・クーパーに似ているため。木々は影を落とすため。麻雀はできないで怒らせるため。草は風に揺られるため。電車は揺れるため、また鳴り響くため(ガタンゴトン)、また父一人だけ座るため、また娘は父と代わって座らないため、またその後父の隣に座るため。道路は走って横切り父の知人(おじさま)と出会うため。街に出るのはおじさまに会うため。ガラスが鏡に。お酒は飲まないため。客は会話を中断させるため。まな板は鳴り響くため。タバコは煙を吐き出すため。料理屋はおじさまに不潔と言うため、また父の忘れた手袋を持ち帰るため。手袋は振って落とし置くため。病院は娘の戦争中の苦労を指示させるため。熱燗はぬるいため。方角は間違えるため。叔母の来訪は助手との縁談を父に話すため。波は水しぶきをあげるため。髪は風に揺られるため。地面は人が座るため。助手と海に行くのは関係を父に誤解させるため。洗濯物は歌って取り込むため、また投げ置くため、また畳むため。?、紙、服は落とし置くため。顔を洗うのはタオルを娘に持って来させるため。着物は帯を持って来させるため。上着は娘がハンガーに掛けるため。味噌汁は煙を吐き出すため。助手は娘と結婚しないため。コンサートは行かないため。壁は人が寄りかかるため。木は人をキャメラから遮るため。正座は足をしびれさせるため。紅茶は父に持って来させるため。時報は鳴り響くため。席を移るのは背中を向けられるため。子供が背中を向けているのは振り向いて泣き顔を見せるため。立つのは座るため。縁談は断るため。紐はいじって指に巻くため。手ぬぐいは物干しに投げ掛けるため。新聞は切った爪を貯めるため。話はしないため。洗濯物は風に揺られるため。髪は針に油をつけるため。来訪は家の者が不在のため。顔が鏡に(能鑑賞で原節子は笠知衆の顔を見てか三宅邦子の存在に気付いている)。能は父と女を能に集中させて娘に盗み見させるため(原節子は2人の顔を読んでいるので物語的窃視)。木はシルエットを投射させるため。料理屋は行かないため。肘掛けは人が座るため。バッグの持ち手はいじるため。ケーキは食べないため。家には泊らないため。雑誌は椅子からずり落ちるため。バッグは落とし置くため。瓶はいじるため(原節子はよく何かをいじる)。足音は鳴り響くため(原節子が二階へ駆け上がる時)。箪笥は人がすがりつくため。手ぬぐいは畳むため。ハトは飛び立つため(いきなり飛び立っているのでスタッフが脅かしたのかも)。神社はガマ口を拾ってご利益を得るため。巡査はガマ口を懐中に入れた女を追い立てるため。階段は影を投射させるため。椅子は逆さに座って背もたれに寄りかかるため。肘掛けが洋服掛けに。服はホコリ取りでホコリを取るため。?は拾ってテーブルの上に置くため。袖は直すため。雲は流れるため。籠は頭に乗せるため(機能的か)。帽子は落とし置くため。手ぬぐいは投げ上げるため。接近するのはぶたれるため。手水舎は流れ落ちるため。神社はおじさまの妻を娘に見せるため。襖は木のシルエットを投射させるため。父が眠るのは娘に盗み見されるため(顔を読んでいないので「裸の窃視」に接近している)。いびきはかき響くため。壺はそこにあるため。ハンカチは父から娘に渡されるため。壁はボールをぶつけてキャッチするため。車は揺らすため。クラクションは鳴り響くため。叔母は部屋を一回りするため。バンパーは人がその上に立つため。父の言葉は娘の親友にキスさせるため。再婚はしないため。ライトは消えるため。タバコは落とし棄てるため。人はシルエットを投射させるため。服のホコリは払うため。上着は自分でハンガーに掛けるため。リンゴは自分で皮を剥くため。また皮を剥いて鳴り響かせるため。皮は落ちるため。波は鳴り響くため。

■「麦秋」(1951) 1229/20

波は打ち寄せて水しぶきをあげて鳴り響くため。犬は横切るため。鳥は鳴き響くため。木、靴下はシルエットを投射させるため。顔は洗っていないため。ガラスが鏡に。エプロンは投げ置くため。コーヒーカップは台所へ持って行くため。原稿は忘れるため。帽子は脱ぐため。電車は鳴り響くため(ガタンゴトン)。柵は人が寄りかかるため。爪を切るのはお菓子をもらうため。タイプライターは打ち鳴らされるため。紙はふわりと投げ渡すため。酒は勧めてから勧めないため。洗濯物、木々は風に揺られるため(木は非常によく揺れている)。呼び鈴は鳴り響くため。お札は投げ置くため。洗い物はエプロンで手を拭くため。おつりはもらうため。代金はもらわないため。襖は人が寄りかかるため。指は鳴らすため。耳が遠いのは子供にバカにされるため。階段、石段は人が座るため。ローソクは煙を撒き散らすため。セリフは反復されるため。大仏に行くのは未来の義母に会うため。ソファーに座るのは畳の上に座り直すため。相槌はうつため。机は叩くため。手袋は顔の前に倒すため。家出するのは帰るため。布巾は叩きつけるため。写真は置き忘れて持ち帰るため。ビール瓶はシルエットを投射させるため。箪笥は人が寄りかかるため。タバコは煙を吐き出すため。時報は鳴り響くため。電球は消されるため。木々は影を落とすため。風見鶏は回転するため。心臓が悪いのは兄に妹の縁談を伝えるため。椅子が洋服掛けに。服は投げ置くため。子供はあっちへ行かないため。席は移動するため。紐は結んで投げ上げ投げ置くため。話は盗み聞きされるため。襖は人が隠れるため。鯉のぼり、風車は風に揺られるため、また2人で見つめるため。箱がトンネルに。壁は人が寄りかかるため。既婚者は来ないため。栓抜きは栓を叩くため。水面は揺れるため。風船は舞い上がるため、また2人で見つめるため。ケーキは高額なため。男が来るのはケーキを一緒に食べるため。ケーキをもらうのはもらえないため。子供がトイレに起きるのはケーキを隠すため・レールがパンに。パンは投げ置くため、また投げ棄てるため。タオルは投げ置くため。うがいは鳴り響くため。パンは蹴飛ばして二つに割るため。鉄道模型をするのは叱られて家出し妹と死んだ兄の親友の2人に探しに行かせるため。椅子はその上に人が乗るため。質問は答えないため。堤防は触るため。砂は蹴飛ばすため。石は投げるため。腕は撫でるため。格子戸は人のシルエットを投射させるため。手摺、帽子は影を落とすため。ポケットの中身、ハンカチ、書類はは投げ置くため。エンピツはいじって振るため。尖塔は2人で見つめるため。亡き兄の手紙は妹に返されるため。メガネはエプロンで拭くため。裁縫箱?はどけるため。エプロンがタオルに。アンパンは食べないため。通りを横断するのは車に轢かれそうになるため。ブラインドは影を投射させるため。2つのドアがあるのは出口を間違えるため。布団は2人で直すため。針は糸を通せないため。見送りは行かないため(三宅邦子を制して東山千栄子が菅井一郎を玄関で見送る)。格子戸は開閉させて光と影を投射させるため。踏切が閉まるのは座らせて鰯雲を見せるため。テーブルは周囲を人が回るため。探し物は探すため。床は人が滑るため。帽子は拾って掛けるため。遅い帰宅はお茶漬けを食べ響かせるため。草は風に揺られるため。稜線は人を出現させるため、また人を消すため。スカートは風に揺られるため。草はちぎっていじるため。波打ち際を歩くのはハイヒールと下駄を脱ぐため。机は人が寄りかかるため。腰は叩くため。帽子はかぶってから脱いでまたかぶるため。襟は直すため。畑は風に揺られるため。

■「東京物語」(1953) 1348/24

蒸気船は鳴り響くため(何度も)。酒瓶はキャメラの手前にナメるため。煙突は煙を吐き出すため(凄まじい煙が何度も)。汽車は汽笛を鳴り響かせるため(頻繁に)、汽車は線路と車輪を鳴り響かせるため(ガタンゴトン)。時計は鳴り響くため(チクタク)。窓は隣人が顔を出すため。空気枕はあるため。煙突はシルエットを投射させるため。木々、洗濯物は風に揺られるため。本、手ぬぐいは片付けるため。手摺が物干しに。模型は投げ飛ばすため。ハンカチ、包帯は畳むため。帽子、バッグは投げ置くため。机を外へ出すのは子供を怒らせるため。多くの事物はキャメラの手前にナメるため。クラクションは人を呼ぶため。呼び鈴は鳴り響くため(何度も)。子供は逃げ出すため。ハンカチは落とし置くため。浴衣を勧めるのはいらないため。土産物は後回しにするため。お刺身は出さないため。手伝いは断られるため。診察室が勉強部屋に。お皿は拭くため。蚊取り線香は煙を吐き出すため。座布団が枕に。お祭りは鳴り響くため。うちわは振られるため(ただひたすら振られるためにある)。雲は立ち込めるため。列車、車は通過するため。鏡は磨くため。豆は食べ過ぎるため。口笛は鳴り響くため(「駅馬車」(1939)のテーマ曲)。急患は長男に両親を案内させないため、また子供を怒らせるため。足は振るため。人はどくため。枕は投げつけるため。椅子は回転させるため。草は摘むため。うちわは蚊を打ち払うため。帽子は落とし置くため。お菓子は高価過ぎるため。手帳は投げ置くため。雑誌は片付けるため。風呂に行くのは汚い下駄を履かせるため。うちわは回転させるため(回転させて高峰秀子の写真を見せている)。身内は両親を案内しないため。バスは揺られるため。旗は風に揺られるため。お酒は借りるのはその間に老夫婦に夫の写真を見せるため(マクガフィンの逆流が弱いのでハリウッド映画ほどはっきりしないがやはりマクガフィンとしてある)。とっくり、オチョコを借り直しに行くのはその間に老夫婦を座らせるため(これも逆連関は弱いがわざわざ借り直している。蓮實重彦は「小津は、できごとの始まりや終わりの瞬間を描くのをことあるごとに避けているように見える。実際「東京物語」の終幕の葬儀や「彼岸花」の冒頭の披露宴も、人びとが目にするときにはすでに始まっている(「監督小津安二郎」209)と書いているが、小津は老夫婦が戦死した息子の写真に気づいて見始めるシーンと写真を見終わる2つのシーンをカットするために原節子に二度隣の部屋に行かせたように見える)。机は拭くため。足は掻くため。堤防は人が座るため。波は鳴り響くため。水面は地上に揺れる光を投射するため(何度も)。ガラスが鏡に。麻雀牌は鳴り響くため。温泉は眠れないため。喧騒は鳴り響くため。ネオンは点滅するため。スリッパは並べて置かれるため。窓枠が物干しに。水面は光るため。ハタキははたくため(何度も振られている)。茶殻はホウキで掃くため。堤防はその上を人が歩くため。地面は影を投射させるため。崖はシルエットを投射させるため。寄合は父母を追い出して旧友と義姉の家に行かせるため。木々は影を落とすため。石段は人が座るため。傘は置き忘れるため(二度)。竹?は打ち鳴らすため(オフから聞こえて来る。宗教の儀式か)。列車は通過して光と影を鉄橋に投射させるため。机は叩くため。ラッパは鳴り響くため。三輪車、硝子戸はシルエットを投射させるため。床屋の椅子がベッドに。腕は掻くため。帽子はもぎ取ってから叩きかぶせるため。草履は蹴り脱ぐため。枕は投げ渡すため。コップは洗うため。?は箪笥の上に置き忘れるため。電柱、電線はシルエットを投射させるため。母親の年齢は思い出せないため。水はしたたり落ちるため。汽車の中で気分が悪くなるのは途中下車して次男に会うため。ハタキ、電報は落とし置くため。電話は電報を追い抜くため。口笛は鳴り響くため(動物を呼んでいる不気味なショット)。タイプライター、蝉、寝息は鳴り響くため。蛾は電球を揺らすため。喪服は忘れるため。地面は光るため。次男は孝行できないため、また死に目に会えないため、格子戸、木魚は鳴り響くため。酒は飲まないため。父親が席を外すのは長女に餞別の予約をさせるため。格子戸は影を投射させるため。子供は挨拶するため。服は投げ置くため。本は片付けるため。服は畳んで膝の上でいじるため。感謝は否定されるため。バケツは運ばれるため。落し物は拾うため(教室で)。授業がテスト中なのは窓から義姉を見送るため。通過物は影を投射させるため。汽笛は鳴り響くため。


山中貞雄

■「丹下左膳餘話 百萬兩の壺」(1935)91分  7/7

木々、ローソクは風に揺られるため。壺は事件を起動させるため。木は画面の手前にナメるため、木の枝はいじるため、またちぎるため、また投げ棄てるため。壺は蹴るため。顔が鏡に。壺は手で触れるため。火鉢はつつくため。壺の返却を迫るのは返却されないため。くず屋は壺を移動させるため。子供が金魚を飼うのは壺をもらうため。布巾は足をはたくため。服は投げ置くため。壺が金魚鉢に。的を射るのは人形を落下させて揺らすため。柱は人が寄りかかるため。招き猫は裏返すため。歌は色男とやくざを矢場に呼び寄せるため。格子は影を投射させるため。矢は投げ棄てるため。茶碗は叩き落とすため。手摺は人が飛び越えるため。鞘はくわえて落とすため。男を送らないのは送るため。ヤクザは男を殺してその子供を孤児にし壺ごと矢場へ呼び寄せるため。男が大きな店の主人を装うのは浪人に家の前まで送らせなくしてヤクザに殺されるため。ドスは逆手で握られている。犬は吠えるため。吊るされた小銭は回転するため。上がり框が枕に。キセルは煙を吐き出すため。桶の水はしたたり落ちるため。水は吐き捨てるため。くず屋に壺を売るのは色男を屋敷の外へ出して浮気させるため、また浪人達とめぐり合わせるため。小判は投げ置き渡すため。木々は影を落とすため。セリフは反復させるため。暖簾は風に揺られるため。的は違えるため、また矢をはずすため。はしごは人が寝そべるため。地面がメモ帳に。子供にご飯を食べさせないのは食べさせるため。障子は人が寄りかかるため。父の死は告げられないため。羽織は投げ置くため。子供を引き取らないのは引き取るため。竹馬を買わないのは買うため。竹馬は壺を倒して金魚を殺し金魚釣りをさせて妻に浮気を目撃させて色男を家の中に閉じ込め道場破りが来るのを待つため。お参りは夫の浮気を目撃するため。手摺は人が座るため。ハトは飛び立つため。灯傘は揺れるため。釣糸は鼻の油をこすりつけるため。鼻の油をつけるのは色男と娘が懇意なのを妻に目撃させるため。家の中の物は外へ放り出されるため。人は突き飛ばすため。物干し竿は頭をぶつけるため。籠の中に服を入れるのは出すため。袴は落とし置くため、またたたまれて箪笥に入れられるため。床の間は人が寄りかかるため。ダルマは転がすため、また蹴飛ばして転がし揺らすため。タンスはいじるため。三味線は投げて招き猫を壊すため。道場は通わせないため。子供を送らないのは送るため。水面が鏡に。貼り紙は風に揺られるため。壺を売るのは子供に小判でメンコをさせて取った大判を盗ませて浪人にばくち、道場破りをさせ、また壺を売らせるため。引き戸は影を投射させるため。木の葉はちぎるため。机は人が座るため。キセルは投げ棄てるため。喧嘩をするのは子供に盗み聞きをさせて家出させるため。筆はくわえるため。餅はふくらむため、また煙を吐き出すため、また焦げて子供の不在を指示させるため。子供を寺小屋に通わせるのは友達を作らせてメンコをさせるため、また習った習字で書き置きを書かせるため。提灯は揺れるため。水面は波紋を生じさせるため、また橋に揺れる影を投射させるため。壺が肘掛けに。賭けは負けて唸り声をあげるため、また帰りの夜道でヤクザを殺すため。決闘がかくれんぼに。ドスは逆手で握られている。賭けで負けた唸り声が瀕死の唸り声に。壁は人が寄りかかるため。屋根は人が登るため、またそこから人が落ちるため。火の用心は屋根の上の色男を見つけるため。道場主に夜逃げをさせるのは門弟に叩きのめさせたあと道場破りを「撃退」させるため。道場破りは壺のありかを浪人に教えるため。小判は蹴り落とすため。肘掛けは人が座るため。壺が山に。旗は風に揺られるため。小判は投げ置くため。屋台は倒すため。壺は色男を浮気させるため(結局100萬両を探すことはしない)。矢は手で投げるため。

■「河内山宗俊」(1937)80 7/8

香は煙を吐き出すため。風車は影を投射させるため。灯篭はキャメラの手前にナメるため。浪人が露天商からショバ代を取るのは甘酒屋から取らないため。セリフは反復されるため。灯篭は人が寄りかかるため。武士が浪人を飲みに誘うのは席を立った隙に小柄を盗まれるため(結局飲みには行かない)。ローソクは風に揺られるため。賭け将棋は弟に口出しさせて坊主とぐるだとヤクザに思わせるため、また坊主に大金を儲けさせて酒を飲ませるため。息は白を吐き出すため。ようじは噛むため。着物はようじを刺すため。障子はいじるため、また人がすがりつくため。キセルは煙を吐き出すため。壁は人が寄りかかるため。手ぬぐいは投げ置くため。弟が賭場に出入りするのは姉を迎えに来させて坊主と弟を懇意にさせて酒を飲みに行かせ弟を幼馴染の芸者に会わせるため。弟が酒飲みなのは大酒を飲ませて吐きに行かせ芸者と会わせるため。小判は投げ置き渡すため。柱は人が寄りかかるため。障子はちぎって投げつけるため。ノリがないのは浪人に買いに行かせて小柄の盗難を浪人に知らせるため。火鉢は磨くため。木は人が隠れるため。茶碗が灰皿に。紙は切り落とすため。小柄をセリに出すのは元の所有者に落札者から買い戻させて小柄を「ニセモノ」にさせて坊主にゆすらせるため。屋台は煙を吐き出すため。吊られた飾りは頭をぶつけて揺らすため。甘酒は煙を吐き出すため。霧は立ち込めるため。石は人が座るため。ようじは投げ棄てるため。娘に喧嘩を止めさせるのは手を切らせて喧嘩を中止させ坊主と浪人を和解させるため。草はいじるため。水面は輝くため、また揺れるため、また人が飛び込んで水しぶきをあげ波紋を生じさせるため。木々は風に揺られるため。あいさつはしないため。障子は人が寄りかかるため。心中は借金を作らせ娘を身売りさせて弟に親分を殺させヤクザに追い詰めさせるため、また坊主に大名をゆすらせるため。障子は人が隠れるため。子供に風船を買いに来させるのは雪を降らせるため。雪は舞い落ちるため。風船は舞い上がるため。ネコはタダ食いを指示させるため、また鳴くため。杖は倒し置くため。花札は落とし置いて散乱させるため。証文は破って握りつぶすため。ようじは折って置くため。木々、障子は影を落とすため。客が入って来るのは娘が二階に匿われていることをチンピラに知らせるため。さやは落とすため。チンピラが甘酒屋の娘の話を女将にするのは女将を嫉妬させて裏切らせるため。チンピラが女将から金を借りるのは娘を売りとばしてから返済するため。女将が裏切るのは坊主に追い詰めさせて外へ出させ戸を閉めさせ助けに出ようとする浪人を制止する坊主の会話を女将に盗み聞きさせるため。木戸は人が寄りかかるため。坊主が戸を開けたまま外へ出て戦うのはその隙にヤクザを家に入れて女将を刺させるため。羽織は投げ置くため。簾は倒すため。机、俵がバリケードに。障子は人が破り入るため。机は人が乗り越えるため。どぶ川が逃走路に。竹筒は投げるため。丸太がバリケードに。ドスは逆手で握られている

■「人情紙風船」(1937)86 7/9

雨は降り止むため。水面が鏡に。職人は長屋を出て行けないため、またキャメラを長屋に引き入れるため。暖簾は風に揺られるため。鼻緒が切れるのは立ち話をするため。手ぬぐいが鼻緒に。壁は人が寄りかかるため。服、木々は風に揺られるため。水を撒くのは鼻緒を切るため。ローソクは風に揺られるため。雲は動くため。背中は叩いてさするため。キセルは回すため。柵は人が飛び越えるため。障子はシルエットを投射させるため。質紙はくわえるため。浪人が質屋までついていくのはやくざに叩き出させれた浪人を遊び人に助けさせてやくざに捕まえさせるため。やくざが薬屋に。木々は風に揺られるため。うちわは取られるため。下駄は人を殴るため。キセルは煙を吐き出すため。人は蹴飛ばすため。蕎麦屋はどんぶりを落としてがさ入れを遊び人に知らせるため。がさ入れは遊び人を一文無しにさせて道具箱を質入れに行かせ遊び人を怒らせて質屋の娘をさらわせるため。行燈は消すため。屋根は人が飛び降りるため。手紙は落とすため。数珠暖簾は揺れるため。酒の誘い、おごりの提案は断られるため。楊枝はくわえるため。借金は断られるため。帳簿は落とし置くため。格子は影を投射させるため。質入れはできないため。障子は人が寄りかかるため。洗濯物は風に揺られるため。キセルを盗まれるのはラウ屋で修理させて取り返すため。縁日の飾りは風に揺られるため。手ぬぐいが傘に。雨は雨宿りした女を誘拐させるため。髪飾りは落とすため、また下駄で触れるため。袋は投げ置くため。雨は降り注ぐため、また浪人をびしょ濡れにさせ乾かした着物を妻に畳ませ手紙を発見させるため。士官は断られるため。手ぬぐいは投げ置くため。雨漏りは桶にしたたり落ちて音を出すため。行燈がマッチに。雨粒は光ってしたたり落ちるため。小柄は畳みに落とし刺すため、また小判を払いのけるため。小判は投げ置くため。人質を取り返すのは取り返せないため。子供は道を開けるため。人は払いのけるため。紙風船は風に吹かれて転がるため。誘拐は身代金で浪人に酒を飲ませて酔わせ眠らせるため、また質屋の恋人たちを駆け落ちさせるため、また浪人に女を匿わせて浪人の評判を落とさせるため、またやくざを怒らせ遊び人と決闘させるため。妻が姉に会いに家を空けるのはその隙に浪人に女を匿わせるため。女たちの噂話は妻に盗み聞きさせて心中させるため。袋は投げ渡すため。暖簾はいじるため。雨は借りた傘を返させるため。壁は影を投射するため。手紙は読まれないため。小判は落とし響かせるため。傘は肩に掛けるため。水面は地上に光を投射させるため。霧は立ち込めるため。行燈は消すため。大家が長屋に来ないのは子供を呼びにやらせて岡っ引きに呼び止めさせ紙風船をどぶに落とさせ流すため。水面は風に揺られるため。