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藤村隆史論文ヒッチコック・ホークス主義


ヒッチコック犯罪者表

 

初犯であっても病的な犯罪者の名はで。罪の意識を有している犯罪者の名はで記す。

 犯罪の内容、

 犯罪行為について罪の意識を有したかあるいは裁判にかけられて罪の問題と向き合わされたりあるいは「改心」したか否かを記し、罪の意識を有している犯罪者をで記す。

③には犯した犯罪についての「起源(現在の彼をあらしめる理由)の有無について記す。

●初犯の犯罪者について

「ゆすり」(1929)

アニー・オンドラ

①殺人。

②あり。罪の意識から自首しようとする。

③あり。正当防衛 レイプされそうになって男をナイフで刺し殺す

「殺人!」(1930)

エスメ・パーシー

①殺人

②あり。精神疾患気味だがちゃんと自白の遺書を残して死んでおり病的ではなく知的であり罪の意識を有している。

③あり。性的不能を隠すためにそれを暴露しようとした女を殺す。

「間諜最後の日」(1936)

ジョン・ギールグッド

    スパイ活動に付随する殺人共犯。

    あり。

    あり。

マデリーン・キャロル

    スパイ活動に付随する殺人共犯

    あり

    あり。

「サボタージュ」(1936)

オスカー・ホモルカ 

   破壊活動。

②あり。最初の破壊活動は失笑を買っただけ(初犯的失敗)。二度目は成功させたが間違って妻シルヴィア・シドニーの弟を死なせてしまい罪の意識から妻に釈明する。

③あり。貧困。

シルヴィア・シドニー

    殺人

    夫を殺し罪の意識から自首しようとする。

     あり。夫に弟を殺されたから。

「バルカン超特急」(1938) 

乗客たち。

    敵兵を銃撃して殺す

    なし。

③正当防衛

「巌窟の野獣」(1939)

マリー・ネイ(モーリン・オハラの叔母)

    監禁・犯人隠匿等

    あり。捜査官のロバート・ニュートンを逃がす。

③ あり。盗賊団のボスである夫への愛。

「レベッカ」(1940)

ローレンス・オリヴィエ

     殺人。前妻を殺す。殺人ではなく暴行致死の可能性も。

     あり。前妻の死に対して罪の意識と向き合わされている。

③ あり。前妻との不和。

「救命艇」(1943)

連合国側

①殺人 アメリカ人がみんなで一人のドイツ人を海へ突き落して殺す。おそらく初犯

   あり 

③あり ドイツ人への不信、嫉妬。

「白い恐怖」(1945)

レオ・G・キャロル。

    殺人

②なし。自殺するが名誉の失墜による絶望という側面が強く罪の意識は希薄。彼の行動は知的ではあるが病的性に欠けている。

③あり。院長の座を奪われたくなかった

グレゴリー・ペック

    過失殺人 幼少時弟を事故死させる。

    あり

③あり。遊んでいる時の不慮の事故。

「パラダイン夫人の恋」(1947)

アリダ・ヴァリ 

    殺人。夫を殺す。

    なし。しかし裁判にかけられ罪の意識と向き合わされる。

③ 愛人の存在。

「ロープ」(1948)

ジョン・ドール。ファーリー・グレンジャー

    殺人。現役学生で初犯。病的ではなく知的

    あり。ファーリー・グレンジャーは罪の意識から馬脚をあらわす

③ あり。優れたものが劣った者を殺す権利がある。

「山羊座のもとに」(1949)

イングリッド・バーグマン

    殺人 昔、ジョセフ・コットンと駆け落ちしようとして妨害した兄を撃ち殺す。

    あり。自分の犯罪の罪の身代わりになった夫に対して罪の意識を有している。

    あり。恋人を殺そうとした兄を撃ち殺す

「私は告白する」(1952)

O・E・ハッセ

    強盗殺人

    あり。ラストシーンで神の許しを請う。

    あり。貧困。

「ダイヤルMを廻せ!」(1954)

レイ・ミランド

    嘱託殺人未遂。

    なし

③ 妻の浮気る。

グレース・ケリー

    正当防衛殺人

    罪の意識あり。殺したことを恐怖している。

    身を守るため。

「裏窓」(1954)

レイモンド・バー

    殺人 おそらく初犯だが「常習犯」的病的さを併せ持つ。

    なし

    あり? 妻との不和?

「ハリーの災難」(1956)

主人公たち

    暴行(シャーリー・マクレーン)。ミルドレッド・ナトウィックの暴行は正当防衛。殺人については不能犯。ハリーは心臓麻痺で死んでいた。

    あり。エドモンド・オブライエンにあり。

③なし

「めまい」(1958)

トム・ヘルモア。

    殺人。おそらく初犯。

    なし

    あり。妻が邪魔になったから。

キム・ノヴァク

    殺人幇助

    あり。スチュワートに対する罪の意識がある。

    あり。金目当て。

「サイコ」(1960)

ジャネット・リー

    横領

    あり。翻意して金を返そうとして殺される。

    あり。金目当て。

「引き裂かれたカーテン」(1966)

ポール・ニューマン

    殺人。国家機密漏えい

    あり。敵スパイをオーブンに入れて殺したあとしかめっ面をする。

③ あり。身を守るため。

「ファミリープロット」(1976) 

カレン・ブラック

①誘拐 「初めての時は皆そうなる」とウィリアム・ディヴェインに言われていることからおそらく初犯。

    あり 殺人を犯すことに反対する。

③あり 宝石の魅力に取り憑かれる

 

常習犯の犯罪者について

「快楽の園」(1925)

マイルズ・マンダー

    殺人、殺人未遂。熱病にうなされている。

    なし

    女が邪魔になる。亡霊に命令される。

「暗殺者の家」(1934)

ピーター・ローレ

    誘拐・殺人未遂

    なし

    なし

「三十九夜」(1935)

ゴッドフリー・ティアール(小指のない男)

    国家機密持ち出し。殺人。

    なし

    なし

ウィリー・ワトスン(ミスター・メモリー)

    国家機密持ち出し。

    なし

    なし

「間諜最後の日」(1936)

ロバート・ヤング(敵スパイ)

    スパイ活動(敵国にとってのみ犯罪)

    なし

    なし

ピーター・ローレ(味方のスパイ)

    スパイ活動に付随する殺人。

    なし

     なし。

「第3逃亡者」(1937)

ジョージ・カーズン(まばたき男)

    殺人 浮気した妻を殺害。

    なし。

    あり。妻の浮気。「起源」を想起した瞬間失神する。

「バルカン超特急」(1938)

ハイヒールの尼僧グーギー・ウィザース

     スパイ活動に伴う誘拐。

     あり。イギリス人を殺すことはできないと寝返る。

    なし

その他の敵国スパイたち

    誘拐

    なし

③なし

「巌窟の野獣」(1939)

レスリー・バンクス

    殺人・強盗

    あり

    なし

チャールズ・ロートン

    殺人・強盗の共犯

    なし 自殺するが罪の意識なし。

    なし

「レベッカ」(1940)

ジュディス・アンダーソン

    現住建造物放火。

     なし

③ なし。

「海外特派員」(1940)

ハーバート・マーシャル

    スパイ活動(敵側)に伴う殺人、誘拐。

    罪の意識から娘に釈明した後、海に飛び込み自殺。

    あり。ドイツ人であるから。

「逃走迷路」(1942)

オットー・クルーガー(敵スパイ)

    スパイ活動に伴う殺人

    なし。

    なし

ノーマン・ロイド

    スパイ活動(敵側)

    なし。自由の女神に宙吊りになり助けを乞う。命が助かるために乞うたので罪の意識を有していたかは微妙。

    なし

「疑惑の影」(1943)

ジョセフ・コットン

    連続殺人

    なし

③ あり。読書好きの静かな子供が自転車の事故で市電に轢かれて頭がい骨骨折、長期の入院後、手が付けられない腕白坊主になり読書もしなくなる。

ヴァルター・シュレザーク

    救命艇からウィリアム・ベンディックスを海へ突き落して溺死させる。

    なし

③ なし。

「舞台恐怖症」(1950)

リチャード・トッド

    殺人。2度目の殺人。

    あり。舞台裏の馬車の中で犯罪についてジェーン・ワイマンに釈明する。

    あり。頭にくると止まらない男。

「汚名」(1946)

クロード・レインズ マザコンであり病的ともいえる。

    スパイ活動(敵国)に伴う殺人など。

    なし

    なし

「見知らぬ乗客」(1951)

ロバート・ウォーカー

    殺人。

    なし

    あり。父親への憎悪。しかし狂っている。

「ダイヤルMを廻せ!」(1954)

アンソニー・ドーソン。

    嘱託殺人未遂。過去に犯罪経験豊富。

    なし

    なし

「泥棒成金」(1955)

ブリジット・オベール

    窃盗

    なし。自白させられるが命を危険に晒されてのことで罪の意識からではない。

③なし。

「知りすぎていた男」(1956)

ブレンダ・デ・バンジー

    誘拐・殺人未遂共犯

    子供に情が移り助ける。

    なし

「間違えられた男」(1957)

リチャード・ロビンズ(犯人)

    強盗

    なし

    なし

「北北西に進路を取れ」(1959)

ジェイムズ・メイスン(敵スパイ)

    スパイ活動(敵側)に伴う殺人など。

    なし

    なし。病的とすることも可能。

「サイコ」(1960)

アンソニー・パーキンス

    殺人 4人殺し、行方不明の2名を合わせると6人殺している。

    なし

③ あり。父親が死んだあたりからおかしくなる。

「鳥」(1963)

鳥たち

    殺人・傷害。似たような事件が過去にもある。

    なし。改心しない。

    なし なぜ襲うのかまったく不明。

「マーニー」(1964)

ティッピ・ヘドレン

    窃盗

    あり。精神分析されて罪の意識に苛まれる。

     あり。娼婦の母親の客を殺す。

 

「引き裂かれたカーテン」(1966)

 

ヴォルフガング・キーリング 

 殺し屋

 なし

 なし

 

「トパーズ」(1969)

ジョン・ヴァーノンほかキューバの幹部。

    殺人、監禁。

    なし

    なし。

「フレンジー」(1972)

バリー・フォスター

    連続殺人

    なし

    なし。

「ファミリープロット」(1976)

ウィリアム・ディヴェイン

    誘拐して身代金の代わりに宝石を奪う。

    なし

③ 宝石の魅力に取り憑かれる。